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p.73 抽出テキスト

胸郭を経由するアプローチである経心尖(trans-apical: TA),経上行大動脈(trans-aortic/direct aortic: TAo/DAo)の2つに加え,大腿動脈以外の末梢血管アプローチとなる経鎖骨下動脈(trans-subclavian: TS),経頚動脈(trans-carotid: TC),経静脈性(trans-caval)などが報告されている591, 592).これらのうち,TA,TAo/DAo,TSは広く代替アプローチとして用いられ,かつわが国でも薬事承認されているアプローチとなるため,本ガイドラインではこれらのアプローチについてのみとり上げることとした. i. TFアプローチ,代替アプローチの適応評価(表64)

大腿動脈は解剖学的にアクセスが比較的安全・容易である.代替アプローチに比較しTFの優位性を示す報告も複数認められることから593-595),アプローチはTFを第一選択とし, TFを安全に施行できないと思われる症例に対し代替アプローチを選択するのが原則となる.

TFの施行可能性および安全性を判断するうえでは,THVによりプロファイルや適合シース,操作性に差異がある.まずは大動脈基部の解剖からみた適性評価を十分に行ったうえでTHVとそれに伴う適合シースを選択することがスタートとなる.次に,1大腿・腸骨動脈の狭小化,270度以上の石灰化,高度蛇行の有無,2弓部・下行・胸腹部・腹部大動脈動脈の高度粥状変化,解離・動脈瘤の有無,高度蛇行,人工物(人工血管,ステントグラフト,ステントなど)の有無を評価することが必要となる.さらにこれら12の要素を同時かつ詳細に評価可能であるイメージング法はthin slice造影CTであり,リスクを評価する際に撮影する心電図同期大動脈基部CTとともに胸腹部thin slice CTを施行することが強く勧められる(図13a~e) 596).また,大動脈・末梢動脈疾患の画像評価ならびに損傷時の治療選択肢を事前に十分考慮し,麻酔法/疼痛管理の選択にも配慮する必要があることから,心臓血管外科・循環器内科・麻酔科・放射線科などにより構成されたハートチームによる総合的な評価が必要となる.・TF アプローチ

TF アプローチには外科的カットダウンと経皮的アプローチがある.外科的カットダウンは合併症が多いとの報告もあるが,経皮的アプローチでは止血デバイスに起因する合併症のリスクがあるため,その操作に習熟することが求められる597).

穿刺点の詳細な評価と正確な位置への穿刺が出発点となる.穿刺点前壁の石灰化,浅大腿動脈と深大腿動脈分岐部の位置,骨盤部に入り込む外腸骨動脈への移行部を確認したうえで穿刺点を決定する.術前CTを用いてこれらの評価を行い,術中は透視とエコーによるガイドを用いて穿刺を行う.肥満のために穿刺点が深い場合,穿刺点前壁に石灰化がある場合,大腿動脈に至適穿刺点がなく外腸骨動脈への穿刺が必要な場合などは,外科的カットダウンが推奨される.止血デバイスの使用時は,エコーガイドに行うことが合併症を減

らすという報告もある598).・代替アプローチを施行する体制(表65)

代替アプローチは,TF アプローチよりかならずしも技術的難易度は高くはないが,TF アプローチが制限される点において動脈硬化性病変が非常に進行している患者が対象となる.そのため治療リスクが高く,ある程度TF-TAVIに習熟してから行うことが推奨される.また,施行頻度が限られることから,チームとして代替アプローチの習熟度は上がりにくく599),術者・助手の立ち位置がTFとは大きく異なるため,透視装置/モニター,その他各種機材の配置,人員配置を事前に十分にシミュレーションすることが推奨される.また,大動脈生体弁SAPIEN3 では,TAもしくはTAo/DAoを行う際には,TFで用いるCommanderシステムとは異なるデリバリーシステムであるCertitudeを用いるため,器具の取り扱いについて十分に習得する必要がある.さらに,TA アプローチでは,TAVI弁のマウント方向がTF/TAoとは逆になるため,手術機材の準備においても注意を要する.このため,施行経験のない代替アプローチを行う際には,TF手技の経験の寡多によらずProctorを招聘し,代替アプローチ特有のピットフォー

表64 TAVI におけるTF アプローチ,代替アプローチの適応

の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

胸腹部 thin slice 造影CTによる上行~腹部大動脈および腸骨・大腿動脈の狭小化・石灰化・粥状硬化・瘤状変化・解離の有無の評価を行う. I C心臓弁膜症・大動脈疾患・末梢血管疾患の診断および治療の経験が豊富な循環器内科,心臓血管外科,画像評価や判断に長けた医師または技師,麻酔リスクを判断する麻酔科医師などによって構成されたHeart teamによるアクセスの評価を行う. I A 270度以上の高度な石灰化・蛇行を有し,各デバイスIFUに規定される最小血管径を下回る腸骨・大腿動脈を有する症例に対し,代替アプローチの選択を考慮する. IIa A高度の粥状変化・大動脈病変を下行・胸腹部・腹部大動脈に有する症例に対し,代替アプローチの選択を考慮する. IIa A TF アプローチが安全に施行可能と考えられる症例に対し,代替アプローチの選択を考慮してもよい. IIb B全身麻酔が困難と考えられる患者に対し,TA アプローチ,DAo アプローチを行うべきではない. III Harm C