p.65 抽出テキスト
潜因性脳梗塞患者に対しPFOの検出を行う場合,経胸壁心エコー図,経頭蓋超音波ドプラ法,経食道心エコー図によるコントラストエコー評価が重要である.心房中隔瘤を伴い安静時からカラードプラ法でシャントが確認されるような大きなPFOの診断は比較的容易である.しかし,多くのPFOによるシャントは安静時に認めることはまれであり,十分なバルサルバ負荷をかけて検査する必要がある.通常左房圧は右房圧よりも数mmHg高いが,バルサルバ負荷中~解除時あるいは咳をすることにより,一時的に右房圧が左房圧よりも高くなり,右左シャントが検出しやすくなる.経食道心エコー図の際に鎮静を用いると,バルサルバ負荷が不十分となり,PFOを検出できない可能性がある.とくに咽頭反射の強い若年者に対して深い鎮静をかけた経食道心エコー図では注意を要する. 一般的に,右左シャントを検出するうえで,経頭蓋超音波ドプラ法がもっとも感度が高いといわれているが,シャント部位の特定はできない.コントラストを用いた経胸壁心エコー図は,外来で簡便に実施可能であり,十分なバルサルバ負荷を行えばスクリーニングに有用である561).経食道心エコー図はPFOの形態診断も可能であるが,鎮静下の検査ではバルサルバ負荷が不十分なことがあり,右左シャントの検出力が低下する恐れがある.そのため,鎮静 3.1.3 PFOの検出と評価 表56 脳梗塞の高リスク塞栓源となる心疾患・左房内血栓・左室内血栓・心房細動・発作性心房細動・洞不全症候群・持続性心房粗動・1ヵ月以内の心筋梗塞・リウマチ性僧帽弁・大動脈弁疾患・機械弁・28%未満の低駆出率を伴う陳旧性心筋梗塞・30%未満の低駆出率を伴う鬱血性心不全・拡張型心筋症・非感染性血栓性心内膜炎・感染性心内膜炎・乳頭状線維弾性腫・左房粘液腫(日本心血管インターベンション治療学会, ほか. 2019556)より) 目的とする経皮的PFO閉鎖術が保険承認された. 脳梗塞再発予防を目的とした経皮的PFO閉鎖術の適応基準を表58 556)に示す.PFOの関与があり得る潜因性脳梗塞の診断基準(表57)に合致することが必須条件である.本閉鎖術は,脳梗塞を発症した症例での再発予防を目的として施行されるもので,一次予防には科学的根拠がないので勧められない. なお,60歳より高齢の症例における経皮的PFO閉鎖術の有効性・安全性は確立していない.60歳より高齢の症例において本治療の施行を検討する場合は,1週間以上の長期間心電図モニターや植込み型心電図記録計による観察を行い,潜在性心房細動が検出されないことを十分に確認し,本治療の有用性があるかを慎重に検討する必要がある. 3.1.2 潜因性脳梗塞患者に対する経皮的PFO閉鎖術の 適応基準 表57 PFO の関与があり得る潜因性脳梗塞の診断基準 1.卵円孔開存を有し,塞栓性機序が考えられる. 2.単一穿通枝領域脳梗塞(ラクナ梗塞など)でないことのMRI(またはCT)での同定. 3.梗塞巣に関連する頚部動脈または脳動脈の閉塞ないし50%以上の狭窄が存在しない. 4.高リスク塞栓源心疾患が存在しない(表56参照). 5.大動脈原性脳塞栓症の確診例ではない. 6.脳梗塞を起こしうる特殊な原因(血管炎,動脈解離,可逆性脳血管攣縮症候群,薬剤不正使用,血栓性素因,悪性腫瘍など)が存在しない. (日本心血管インターベンション治療学会, ほか. 2019556)より)表58 脳梗塞再発予防を目的とした経皮的PFO 閉鎖術の 適応基準1.必須条件:下記の条件をすべて満たす場合に本治療の施行が検討される・卵円孔開存の関与があり得る潜因性脳梗塞の診断基準に合致した患者.・閉鎖術施行後一定期間の抗血栓療法施行が可能と判断される患者.・原則として,60歳未満の患者.・(女性の場合)妊娠していない,かつ1年以内の妊娠を希望しな い患者. 2.推奨基準:上記を満たし,かつ下記のいずれかの条件に当てはまる場合には本治療の施行が推奨される・下記のような機能的,解剖学的に高リスクの卵円孔開存を有する場合. 1シャント量が多い. 2心房中隔瘤(atrial septal aneurysm: ASA)の合併. 3下大静脈弁(Eustachian valve: EV)の合併. 4キアリ網(Chiari network)の合併. 5安静時(非バルサルバ負荷下)右左シャントを有する. 6長いトンネルを有する卵円孔開存.・適切に施行された抗血栓療法中に上記潜因性脳梗塞を発症した 場合. (日本心血管インターベンション治療学会, ほか. 2019556)より)