p.64 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン フォローアップ・管理を要する546).無治療例,すなわち無症状の小瘻(<3 mm)例での拡大は少ないが,5年ごとのCTが勧められている551).塞栓術後後には,不完全な塞栓・再疎通,または未治療の瘻の増大傾向有無を確認するため,術後6ヵ月およびその後3~5年ごとに造影CTでフォローすることが推奨されている537, 539).動静脈瘻の再開通や増大がみられたときは,再度塞栓術を行う. 一過性の胸膜痛が3~31%ともっとも多い.これに対しては出血リスクを下げる観点からNSAIDsよりアセトアミノフェンのほうが好ましい542).空気塞栓による狭心症,徐脈,神経症状が5%以下でみられる539).ほかの塞栓術と同様に,塞栓子の脱落,迷入には注意を要する. 脳梗塞のうち,卵円孔開存(PFO)等の右左シャントを介して静脈系の血栓が動脈系へ流入して発症したと考えられるものを,奇異性脳塞栓症という.これまで,奇異性脳塞栓症の再発予防については,明確な有効性を示す治療法が確立しておらず,一般的にアスピリンが用いられてきた. 2017年に,3つのランダム化比較試験において,PFOを有する原因不明の脳梗塞の再発予防における経皮的PFO閉鎖術の有効性と安全性が示された553-555).対象症例は,充分な原因検索を行ったうえでも原因が特定できない脳梗塞例であり,PFOがその発症に関与したと考えられる症例である.本治療の再発予防効果はアスピリンをはじめとする抗血小板療法に対して示されたものであり,抗凝固療法との比較では有効性は確立していない.したがって,個々の症例において脳梗塞発症機序を十分に評価し,PFO以外の原因とともに静脈血栓の有無を確認したうえで,慎重に適応を決定しなければならない.表55 556)に脳梗塞の再発予防を目的とした経皮的PFO閉鎖術を検討するうえで必須となる検査を示す. a. 潜因性脳梗塞 潜因性脳梗塞(cryptogenic stroke)とは,脳動脈硬化や 2.7.7 合併症 3 脳梗塞の予防 3.1 卵円孔開存 3.1.1 潜因性脳梗塞とPFO心疾患に起因する塞栓症など既知の機序(表56) 556)では 説明がつかず,さらなる原因検索を進めたあとにも発症機序が明らかではない,あるいは原因が特定できない脳梗塞である. b. PFOと潜因性脳梗塞 PFOは健常者の約25%に認めるが,潜因性脳梗塞の患者では約50%に併存するといわれている.これまでの報告では,PFOを含む右左シャント疾患と静脈血栓をともに認める奇異性脳塞栓症の確診例は,急性期脳梗塞の5%に過ぎず557),PFOを有する潜因性脳梗塞例の多くは奇異性脳塞栓症と確診できていない.その原因として,PFOの診断精度が一定でないことや,静脈血栓の検索が困難なことがあげられる.表57 556)にPFOの関与があり得る潜因性脳梗塞の診断基準を示す. c. 潜因性脳梗塞に対するPFO閉鎖術のエビデンス 当初,PFOを有する潜因性脳梗塞を対象とし,カテーテルによる本治療の有効性を検討したランダム化比較試験では558-560),各試験で設定したエンドポイントにおいて本治療の有効性を示すことはできなかった.長期の経過観察調査が継続して行われたことにより本治療の有効性が示唆され,再度注目を集めることとなった.2017年に3つのランダム化臨床試験の結果が公表された553-555).これらの検討をもとに,国内では2019年末に潜因性脳梗塞再発予防を 表55 脳梗塞再発予防を目的とした経皮的PFO 閉鎖術を 検討する際に必要な検査法1.必須・頭部MRI(MRI撮像禁忌・困難例では頭部CT)・12誘導心電図・ホルター心電図等による24時間以上の心電図モニター・経胸壁心エコー図・経食道心エコー図・梗塞巣に関連する頚部動脈の画像検査(カテーテル血管造影, MRA,CTA,頚部超音波検査のいずれか)・梗塞巣に関連する頭蓋内動脈の画像検査(カテーテル血管造影, MRA,CTAのいずれか) (これらが行えない場合は,経頭蓋超音波ドプラ法)・脳梗塞を起こしうる特殊な原因(血管炎,血栓性素因,悪性腫 瘍等)検索のための各種検査2.推奨・静脈血栓塞栓症(肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症)に関する画像検査(造影体部下肢CT,または下肢静脈超音波検査のいずれか)・右左シャント検出のための,経頭蓋超音波ドプラ法または経胸壁心エコー図を用いたマイクロバブルテスト・大動脈CTAまたはMRA・(60歳より高齢の場合)1週間以上の長期間心電図モニター,ま たは植込み型心電図記録計による観察(日本心血管インターベンション治療学会, ほか. 2019556)より)