p.61 抽出テキスト
≧1.3)を有していれば閉鎖適応とする向きもあるが508),自然縮小(うち13%は完全閉鎖)する例も存在し506),体格が大きくなれば治療の合併症も少なくなるため,無症状であれば適切な年齢・体格まで待機することを考える509).一方で,内膜肥厚による狭窄により心筋梗塞のリスクがあるため,3~5歳以上で顕著な瘻を有する場合は閉鎖を考慮すべきとの意見もある510).また,心不全症状がコントロールできない場合は出生後早期でも治療を考慮する511).感染性心内膜炎は全年齢を通じて起こり,頻度は3~4%と考えられるが,瘻の大きいすべての例で発生しており512),小さい瘻を予防的に閉鎖する適応はない.小児期には狭心症,瘤化した瘻の破裂,瘻内血栓形成はまれである506). 無症状でも中等度以上の瘻であれば閉鎖の適応と考えられる.瘻の大きさに関する明確な規定はないが,1軽度:瘻孔より中枢の冠動脈径が正常の冠動脈径の2倍未満の拡大,2中等度: 2倍以上3倍未満の拡大,3高度: 3倍以上の拡大,とする意見がある510).また,加齢とともに拡大する傾向にあり有症状となる頻度は増える.瘤化した瘻の破裂はおもに50歳以上の症例にみられ506),瘻内血栓形成も成人に多く急性心筋梗塞,発作性心房細動,心室性不整脈の原因となる513).冠血流盗血現象に起因する心筋虚血は狭心症を生じることもあるが,無症状の場合でも運動負荷心電図,負荷心筋シンチグラフィーで捉えることができる507, 514, 515). 多くの冠動脈瘻は,経カテーテル的にコイルや閉鎖栓により閉じることが可能である440, 509, 516, 517).外科手術に比して侵襲が少なく,手技中に還流部位やその大きさ,流入血管を明確に把握できるため,第一選択の治療法である516).カテーテル治療を第一選択とする条件としては,1瘻孔まで安全にカテーテルが挿入可能,2有意な正常側枝を閉塞することなく塞栓が可能,3塞栓部位に狭窄を有する, 4塞栓子のlanding zoneから冠動脈口および瘻孔まで距離がある,5瘻孔が複数あっても塞栓の妨げにならない, 6ほかに修復を要する心内病変がない,などがあげられる440, 507, 517).また,複数の供給血管,複数の瘻孔,叢状のネットワークなど複雑な解剖を有する場合には,術前の三次元CTが治療を計画するうえで有用である518). 塞栓子としては,コイル,AVP,ADOなどが用いられる.塞栓部径が5 mm未満の場合にはコイル,5 mm以上の場合にはコイル以外のデバイスが考慮されるが517, 519),わが国ではAVPの心臓血管への適用がないため,コイル, 2.6.2 成人のカテーテル治療の適応 2.6.3 治療方法(表53)マイクロコイルが汎用される.コイルの場合,塞栓部径の 1.3~1.5倍,少なくとも瘻孔の1.3倍のコイルを選択する509, 517).瘻孔が大きいほど血流が多く,通常の造影では正常側枝が認識されにくくなる.このためバルーンカテーテルを瘻孔まで進めバルーンを膨らませ,瘻孔を閉鎖して造影すると,末梢の正常冠動脈側枝が明らかになる.また5 ~10分間試験閉塞することで心筋虚血が起こらないか,すなわち閉塞部位が適切か否かの判断に役立つ509, 520).通常のコイルをデリバリーできるカテーテルを塞栓部まで挿入するのが困難な場合,とくに屈曲の強い病変ではマイクロカテーテルで到達可能なことが多く,マイクロコイルでの閉鎖を試みる.血流量が多くコイルが流される恐れのある場合には,手前の冠動脈をバルーンで一時的に閉塞することで血流を遮断し,そのあいだにコイルを留置する509).ただし大きな瘻孔に対してはマイクロコイルでは留置後も脱落のリスクが大きい.この場合,ワイヤを動脈側から冠動脈瘻を通過し右心系まで挿入してスネアし,AV loopを作り,これをガイドに静脈側から十分な太さのカテーテルまたはシースを瘻まで進め,より大きく強固な塞栓子での閉塞を行う507, 520).盲端を残すと内部で血栓が形成され心筋梗塞のリスクとなり得るため,最末梢の正常冠動脈側枝が出た直後の瘻まで完全に閉塞することが理想的である520).成人ではcovered stentの使用も可能であり,とくに瘻孔部に近接して動脈硬化性病変を合併している場合に有用とされている521). 表53 冠動脈瘻に対するカテーテル治療方法に関する推奨 とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 有症状例に対し,カテーテル治療を行う. I B無症状であるが大きな冠動脈瘻を有する例に対し,カテーテル治療を行う. I C無症状であるが中等度以上の冠動脈瘻を有する例に対し,カテーテル治療を考慮する. IIa C無症状であるが負荷試験で心電図,心筋シンチに心筋虚血の所見が出現する例に対し,カテーテル治療を考慮する. IIa C閉鎖後,6~12ヵ月間のワルファリン内服している例に対し,カテーテル治療を考慮する. IIa C無症状で,臨床的に有意な所見のない例に対し,カテーテル治療を行うべきではない. III Harm C