p.60 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン 2.5 体肺短絡術後血管(表51) BTSなどの体動脈–肺動脈短絡術は,心内修復術後で短絡に依存せずに肺血流量が十分確保できるようになると不要になる.必要なくなった短絡が残存していれば過度に肺血流量を増やすなどの悪影響を及ぼす可能性があるため,根治術を行う時などに同時に閉鎖を考慮するのが一般的である.ただし,外科的な短絡閉鎖術の合併症リスクには,横隔神経麻痺,反回神経麻痺や胸管損傷などがあげられる.カテーテル治療の進歩に伴い,体肺短絡血管に対する経カテーテル的閉塞術の有効性と安全性が示されるようになってきた139). 経カテーテル的閉鎖術にはコイルやAVP等,さまざまなデバイスが使用されているが,より細径のカテーテルやシースが好まれるため,BTSに対する閉鎖術にはMReye Flipper, Detachable Embolizationコイル(Cook Medical Inc.など)などのコイルがおもに使用されている8, 438, 439, 492-495).BTSに対する経カテーテル的閉鎖術の際に動脈側と静脈側でワイヤでのAVループを作成することにより,ガイディングカテーテルの目的部位への到達や,デバイス留置が容易になる場合もある.BTS(とりわけ短絡内に狭窄がないもの)に対するカテーテル的閉鎖術では,デバイスの脱落による塞栓症のリスクを少なくする方法として,“controlled release”デバイスの使用,短絡吻合部の肺動脈側へのステント留置,短絡の遠位側を一時的にバルーン閉鎖してフローコントロールを行うなどの方法8, 492)が考慮される. BTS以外の体肺短絡術に関して諸外国から,Potts短絡 に対してはカバードステントやAMVSDO 496, 497)の使用が,またWaterston短絡に対してはAmplatzer Septal Occluder (ASO)など8)の使用が報告されている.・リスクと合併症 経カテーテル的BTS閉塞術の合併症として,コイルまたはデバイスの脱落による塞栓症498)があるが,前述したシャント吻合部肺動脈側へのステント留置や,バルーン閉鎖によってフローコントロールを行う439, 492-495)ことにより,塞栓症のリスクを軽減することが可能である. 経カテーテル的BTS閉塞術では,切り離されていないGORE-TEX tubeが残存しているため,患児の成長に伴い肺動脈が上方に引っ張られる“tenting”を引き起こす可能性があり,この潜在的な合併症に関して長期的なフォローアップが必要と考えられる. 2.6 冠動静脈瘻(表52) 冠動脈瘻は冠動脈と心腔または血管のあいだに毛細血管相を介さない交通を有する病態で,先天性のものが多いが,術後に発生するものもまれでない499).左右いずれの冠動脈からも発生するが,右冠動脈から発生するものが最多で,左前下行枝が続く500, 501).還流部位は右心系が90%を占め,右室,肺動脈,右房の順に多く,左心系では左房が多い502-504).還流部が複数みられることもある.まれに巨大な瘻による容量負荷により新生児期に心不全に陥る例があるが,多くは明らかな症状がなくカラードプラエコーにより偶然発見されることも多い505). 適応は明らかではない.冠動脈瘻の病態には,1有意な短絡によるうっ血性心不全,2冠血流盗血現象による狭心症,3感染性心内膜炎,4瘤化した瘻の破裂,5瘻内血栓形成,がある506, 507).無症状でも有意な短絡量(Qp/Qs 2.6.1 小児のカテーテル治療の適応 表51 体肺短絡術後血管に対する経カテーテル的閉塞術に 関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 純型肺動脈閉鎖症や重症肺動脈弁狭窄症の短絡術後で,体動脈– 肺動脈短絡に依存せずに十分な酸素化が得られる患者に対し,経カテーテル的閉塞術を行う. I C先天性心疾患の心内修復術後に,BTS から相当量の遺残短絡を認めた場合,経カテーテル的塞栓術を行う. I C外科的に短絡閉塞が困難または手術時のリスクを増加させると考えられる場合には,短絡閉鎖試験で重篤な低酸素血症がなければ,手術直前に経カテーテル的塞栓術を考慮する. IIa C短絡閉鎖試験で許容できない低酸素血症を引き起こした場合は,修復術前に経カテーテル的塞栓術を行うべきではない. III Harm C表52 冠動脈瘻に対するカテーテル治療施行に関する推奨 とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 先天性心疾患・構造的心疾患に対する専門知識があり,トレーニングを受けた医師が経カテーテル的閉鎖術を行う. I C経カテーテル的閉鎖に際しては,冠動脈瘻の経路と正常冠動脈側枝の完全な描出を行う. I C