p.56 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン ることがもっとも多いということもあり,塞栓術後にMRI画像を損なわないようにとの配慮から,プラチナ製のコイルが増えている. 2.1.2 コイル塞栓術の適応疾患 先天性心疾患の領域でコイル塞栓術の対象となる病変には動脈管144, 145, 147, 427),主要体肺側副動脈428, 429),体肺短絡血管,正常血管から肺内に発育していった体肺側副動脈430-434),Fontan手術後やGlenn手術後の静脈–静脈短絡435-437),冠動脈瘻,肺動静脈瘻などがある.PDAでは直径2 mm以下の例,主要体肺側副動脈においては,中心肺動脈とdual supplyの血管,中心肺動脈へ統合できない,あるいは心内修復術時に結紮できなかった血管が治療対象となる.外科的に閉鎖しきれなかったBTS 438, 439)のような体肺短絡手術後症例に対しても,コイル塞栓術は行われている.Fontan手術前後では,短絡量が多い体肺側副動脈に対してコイル塞栓術が施行される.またFontan手術後もしくは両方向性Glenn手術後には,静脈–静脈短絡に対するコイル塞栓術が施行される.冠動脈瘻においてコイル塞栓術が適応となるのは,病変部位までカテーテルが挿入可能で,閉塞予定部位から遠位に正常冠動脈がなく,コイル留置可能な狭窄がある場合である440).肺動静脈瘻は有症状例が治療の対象となる441, 442). 2.1.3 コイル塞栓術の合併症(表45) すべてのコイル塞栓術に共通する合併症はコイルの脱落・迷入である.動脈管や体肺側副動脈などの左右短絡血管では,多くの場合,コイルが脱落しても肺動脈や側副動脈の末梢にコイルが留まるため,重篤な合併症とはなりにくい.一方,静脈–静脈短絡,肺動静脈瘻などの右左短絡血管へのコイル塞栓術では,コイル脱落・迷入は中枢神経系をはじめとする全身臓器の塞栓症を生じるため,重大な結果をもたらす.したがって,これらの血管病変に対する塞栓術にはデタッチャブルコイルもしくはVascular Plugを積極的に使用し,コイル脱落・迷入の予防に努めるべき である.また,比較的大きな動脈性の血管では,コイル留置後の遺残血流により溶血をきたすことがあるため,完全閉塞を目指すべきである.一方,コイル塞栓術が有効であればあるほど,異常血管のすべての血流を遮断することになるため,組織壊死を目的とした塞栓術でない限り,塞栓する血管がその組織への唯一の血液供給源ではないことを確認しておくべきである. 血管塞栓用プラグAmplatzer Vascular Plug(AVP)は,ナイチノール合金で編んだメッシュによる円筒状構造を呈す.とくに高流量の中型~大型血管において良好な塞栓効果を示し,成功率が高く,再発率も低い443).米国では2004年に最初に承認され,わが国でも2012年に導入された444). 2.2.1 Vascular Plugの種類と特徴(図8,表46) AVPの源流はAmplatzer Septal OccluderとAmplatzer Duct Occluderである443). 基本構造は自己拡張型のMRI対応血管プラグとプッシャー・ワイヤからなる.プラグ両端のエックス線不透過プラチナ・マーカーにより,高いエックス線視認性を有する.プラグ本体はステンレス・スチール製螺旋でワイヤと接合されており,正確な位置決め後にワイヤを反時計方向に回転させ,リリースされる.ワイヤからリリースするまでは位置修正が可能となっている. プラグは自己拡張型メッシュ製であり,十分な拡張力を有するため移動はきわめてまれである.再開通もまれであり,AVP留置1,200例中5例のみであったと報告されている443).留置後の変形も報告されているが,臨床上は問題にならない445). AVPには4つのモデルがあり,血管解剖,血行動態などに応じてそれぞれ特徴的なデザインと形状を有し,わが国ではAVP,AVP II,AVP 4の3種類が承認されている.それぞれの形態を図8,表46に示す443). 原型であるAVPは4~16 mm径で,円筒型プラグ一つのみの形状のため,7~8 mmの短い病変に使われる446). AVP IIは3~22 mm径で,円筒型プラグ両側に扁平ディスクを備えており,6層のメッシュ構造となるため塞栓効果は高い.圧迫挿入により比較的短いランデイング・ゾーンにも留置可能となっている447).AVP 4は4~8 mm径で, 2つの円筒型プラグからなる.細径のため屈曲した血管にも対応可能とされる.4 Fr診断用カテーテルを通じて留置 2.2 AVPについて 表45 コイル塞栓術に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 静脈静脈短絡や肺動静脈瘻などの右左短絡血管に対する塞栓術には,塞栓子の脱落・迷入の予防のために,デタッチャブルコイルやVascular Plug を使用する. I C組織壊死を目的とした塞栓術でない限り,塞栓する血管がその組織への唯一の血液供給源ではないことの確認を行う. I C