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p.53 抽出テキスト

サーを要するものが多く,目標とする病変部へ到達させる際には,患児の体格が小さいほど血管の太さや心内への物理的負荷が問題となり,技術的にも侵襲的にも困難となる.一方,開心術においては,大きな切開創や体外循環,心停止を含めた外科的侵襲とそれらによる中枢神経系や発達への影響が問題となり,筋性部VSDや末梢肺動脈など,直視下に到達して修復することが困難な病変も存在する.そのような病変に対して,外科的切開による病変部へのより直接的なアプローチのなかで,カテーテル治療を行う治療形態を先天性心疾患に対するハイブリッド治療とよぶ.

ハイブリッド治療を行う環境“hybrid suite”には,シングルプレーンの血管撮影装置が備わった心臓血管外科用手術室“hybrid OR”と,手術室と同じフロアで同じく空気清浄度クラスII以上の清潔域内に設けられた血管撮影室“hybrid catheterization suite”の2種類が提唱されている.後者では開胸下あるいは補助循環使用下にアプローチ可能なように,コンパクトで可動域の大きいバイプレーン・フラットパネル・ディテクターに加えて,手術用無影燈,術野記録用カメラや血管内視鏡を備える.全身麻酔が可能であり,看護師や臨床工学士を含めた多職種チームの連携が前提とされる.

1.17.1 左心低形成症候群,単心室循環

左心低形成症候群や単心室は,適切な時期での段階的手術介入が不可欠な自然予後不良の重症心疾患群であり,機能的修復術としてFontan型手術が到達目標とされる396, 397).新生児期・乳児期早期に第一段階の姑息的手術の対象になることが多く,機能的単心室に接続する狭窄の

ない体循環,狭窄のない心房間交通,適度に調節された肺血流路,十分な冠血流の4つを構築することが救命への鍵となる.以降の段階的治療間でも,これらのバランスを維持することが予後のQOLにとって重要となる.

1990年代以前は,Norwood第1期手術の侵襲の大きさと術後管理の困難さから成績不良であったが,2000年以降は早期生存率が80~90%を超える施設がみられ,第3期Fontan型手術への段階的治療が確立してきた377, 398).しかし,Norwood第1期手術では,新生児期の長時間の体外循環による多臓器とくに中枢神経・発達への障害,二期的胸骨閉鎖とそれらに伴う重症感染症,心室機能低下例への対応,大量の輸血,入院期間の長期化などの問題も残され,頭蓋内出血・気道出血などの出血傾向や34週以前の早期産児には基本的に施行できない399).

AkintuerkとMichel–Behnkeらは,1998~2002年,動脈管依存性の左心系狭窄疾患の新生児20例に対して,透視下に動脈管へのバルーン拡張型ステント留置と両側肺動脈絞扼術を同時,もしくは引き続いて行うハイブリッド治療を行った.同時に行う場合には開胸下,主肺動脈にシースを留置した.急性期に2例,遠隔期に3例死亡がみられたものの,動脈管と肺動脈は最高331日間維持され,2例が心臓移植に,11例が第2期の大動脈弓再建+両方向性Glenn手術に,2例が二心室治療に到達したと報告した400, 401).また,GalantowiczとCheathamらは,2001年以

表43 先天性心疾患におけるハイブリッド治療の推奨とエ

ビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

左心低形成症候群や体循環系狭窄病変を有する単心室の新生児に対し,Norwood第1 期手術のような従来の開心姑息術の代替として,第1 期ハイブリッド治療(両側肺動脈絞扼術,動脈管ステント留置,および必要に応じて心房間交通拡大を人工心肺非使用で開胸下にカテーテル手技を組み合わせて行う)を考慮する. IIa B前もって評価されている血管狭窄病変に対し,アプローチが困難な症例において,あるいは他の病変の開心術を行うと同時に,術中ステント留置を考慮する. IIa C左心低形成症候群や体循環系狭窄病変を有する単心室の新生児に対する第1 期ハイブリッド治療や術中ステント留置は,設備の整った“hybrid suite”と諸専門分野から構成されるチーム“multidisciplinary team” のもとで行う. IIa C

A: 大動脈弓から起始する垂直かつ屈曲した動脈管を示す血管造影所見. B: ステント後の血管造影所見.動脈管が直線化し肺動脈への良好な血流が得られている.

図7 VSD,肺動脈弁狭窄を伴う完全大血管転位の乳児例

に対する動脈管ステント(鈴木康太, ほか. 2020394)より改変)

A B 3Fシース

大動脈弓

肺動脈の一部

動脈管 全長