p.52 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン 群でのステント留置術と異なり,自己拡張型ステントが用いられることは少なく,ほぼ全例においてバルーン拡張型ステントが用いられている.また,大腿静脈を穿刺し心腔内を経由して動脈管に到達する順行性アプローチのほか,大腿動脈穿刺,総頚動脈・腋窩動脈穿刺による逆行性アプローチが症例に応じて選択される194). 心室と大血管との解剖学的な関係により,動脈管の形態と起始部は異なっており394),おもに次の4群に分類される(図6).グループ1のような横走する動脈管への挿入には大腿動脈穿刺が適しているが,腋窩動脈と同様に総頚動脈と比べて血管径が小さく,血管狭窄・閉塞のリスクがある点に留意する必要がある.グループ3のような垂直に起始する動脈管に対しては,総頚動脈穿刺により直線的な経路を形成でき,ステント挿入に有利と考えられる.さらに穿刺部から動脈管までの距離が短く,ロングシースへの入れ替えが不要となる(図7).グループ4の動脈管は総頚動脈や大腿動脈からのアプローチが容易であり,ステント留置術のよい適応である.異所性鎖骨下動脈から起始する動脈管の場合は血管輪を形成する可能性があるため,次段階の手術時に離断が必要となる394). 1.16.2 留意点 合併症としては,ステントの急性閉塞,血栓形成による肺梗塞,脳梗塞などの塞栓症,ステントの脱落,ガイドワイヤによる損傷や急な肺うっ血に起因する気道出血,カテーテルが心腔内を通過する場合には弁逆流の悪化や不整脈などがあげられ,循環動態が不安定な新生児が対象 となることが多く重篤な状態に陥りやすい.ステントを適切な位置に固定するためには,動脈管の最狭部を有意に上回る径のバルーンでステントを拡張させる必要があり,通常は3.5ないし4 mm以上を選択することとなる.外科的に造設したBlalock–Taussigシャント等に比べると,動脈管の経路は短いことも相まって,ステント留置後急性期には高肺血流性心不全に陥りやすく,注意深い管理が必要となる.以上のことから,カテーテル治療には,熟練した技術と,補助循環装着や開心術への移行を含めた心臓外科チームを中心とするバックアップ体制が必須である. 一方,確立した治療方針とされる体肺短絡造設術も,一定の合併症発生率や死亡率を有する比較的リスクの高い手技であることが明らかになっている.日本心臓血管手術データベース先天性部門によると,わが国における体肺動脈短絡術は2015~2016年の2年間で1,179例あり,56例(4.7%)が術後90日以内もしくは在院中に死亡した395).治療成績の比較や症例に応じた治療法選択の検討がなされておらず,今後の課題と考えられる. 1.17 ハイブリッド治療(表43) 循環器疾患領域におけるハイブリッド治療とは,通常,カテーテル治療と,心臓血管外科による手術を組み合わせた治療をさす.血管拡張用ステントや欠損孔に対する閉鎖栓などの治療用デバイスは,太いシース・イントロデュー 図6 大動脈側起始部と肺動脈への経路による動脈管の分類(鈴木康太, ほか. 2020394)より) A B C D A(グループ1)「横走する」動脈管.胸部大動脈から起始し,胸部大動脈と動脈管がなす角度が鋭角 (< 90度)となる.典型的には重症肺動脈弁狭窄やVSDを伴わない肺動脈閉鎖でみられる.多くが直線的だが,ときに屈曲・蛇行を伴う. B(グループ2)グループ1 より鈍角 (90~ 135度)に起始し,典型的には単心室に伴う重症肺動脈弁狭窄でみられる. C(グループ3)「垂直な」動脈管で大動脈弓 横走部から起始する.多くが屈曲・蛇行を伴い,典型的にはVSDを伴う肺動脈閉鎖でみられる. D(グループ4)大動脈弓と対側の腕頭動脈や鎖骨下動脈から起始する(左側大動脈弓・右動脈管ま たは右側大動脈弓・左動脈管).