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p.50 抽出テキスト

先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン

2セントラル短絡術(central shunt: CS)上行大動脈から肺動脈へ人工血管で血流を供給する. 3 心室–肺動脈導管(ventriculo-pulmonary arterial conduit:

VPC)心室から肺動脈へ人工血管で血流を供給する. mBTS,CSは,基礎疾患の状況に応じて,側開胸または胸骨正中切開のいずれかによるアプローチが選択される.胸骨正中切開の場合は,より精緻な吻合や肺動脈形成の追加を可能とするために,人工心肺や膜型人工肺などの補助循環を併用して行われることがある.肺血流供給の程度は,吻合される人工血管の径,長さ,角度や狭窄,あるいは供給先の肺動脈へのほかの付加的血流や肺血管抵抗に依存する.そのいずれかに障害があると狭窄や閉塞をきたすことになる.基本的には収縮期から拡張期にかけて連続性に血流が供給され,人工血管が太く短いほど肺血流が増える.このため,左心低形成症候群に対するNorwood手術に代表されるような開心姑息術では,拡張期の冠血流低下も相まって,術後死亡や心不全につながりやすく,成績不良の主因とされた375).一方,VPCは胸骨正中切開と人工心肺のもとで,心室(通常は右室)前面の切開と筋切除により開窓した部位に人工血管が吻合される.心室切開に伴う心機能低下が懸念されるが,大動脈血流の拡張期盗血現象をきたすことなく十分な肺血流を保ち,Norwood手術の成績を向上させた術式として広く施行されている376, 377).

1.15.2 体肺短絡術後狭窄に対するカテーテル的拡大術(表41)

体肺短絡術後には,前述したいずれかの障害により人工血管の吻合部あるいは内部に狭窄や閉塞をきたし,再手術やカテーテル的拡大術の対象となる場合がある.手技的な吻合部狭窄のほか,血栓形成や内膜増生が主因となることが多く,急性閉塞の場合は緊急治療を要する.早期再手術の成績は不良であり,1990年頃からその代替治療としてカテーテル的拡大術が報告されるようになった378–380).mBTS, VPCに対して,バルーン血管拡張術,ステント留置術のいずれにおいても数多くの報告があるが,その適応や治療法選択に関してはランダム化比較試験を行うことは難しく,症例対照研究のみである.いずれも,比較的高い確率で安全に手技を遂行することが可能であり,術前後で酸素化が改善した,次に控える心臓外科手術を待機的に計画可能であった,とする報告が多い381, 382).

バルーン血管形成術では,0.014インチないし0.018インチガイドワイヤ対応の細径のバルーンが使用される.また,ステント留置術でも,近年はおもに0.014インチないし0.018インチガイドワイヤ対応の,より薄く,柔軟な構造のステントが使用されている.なお,屈曲病変へのステント

デリバリーは,より柔軟で,より長さが短いものほど容易になる.

血栓形成に伴う完全閉塞の急性期,亜急性期においては,ガイドワイヤで再開通させてからカテーテル的形成術が施行される383, 384).低酸素血症が重篤で,循環動態が不安定な場合は,先に人工心肺を装着して酸素化と循環状態を安定させてからカテーテル的再開通・形成術を行う380).一方,急性の狭窄・閉塞に対する対応以外に,とくにVPCでは,心室側吻合部に残存した心筋および内膜の肥厚により経時的に狭窄を呈することが多い.この部位のバルーン拡大術はある程度は有効だが381),ステント留置術のほうが効果は確実である385, 386).VPCの内部には弁が装着されていることもあるが,その場合には比較的早期にカテーテル治療を要したと報告されている387).また, BTS,VPCいずれにおいても,術後急性期の肺血流過多による心不全を防ぐため,血管クリップを用いて人工血管に狭窄を作成して肺血流を制限し,数ヵ月を経た成長後にバルーンあるいはステントでクリップを外して狭窄を解除する,段階的な肺血流増加治療も施行されている388).

バルーン形成術に比べ,ステント留置術は拡張された内腔の保持が良好で,リコイル現象が少ないことから効果が高い.しかし,屈曲・狭窄した病変を通過させることがより難しく,またロングシースあるいはガイディングカテー

表41 体肺短絡術後狭窄に対するカテーテル的血管形成術

に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

肺動脈弁狭窄や肺動脈閉鎖などを伴う肺血流減少性先天性心疾患,あるいは左心低形成症候群に代表されるような単心室循環の先天性心疾患に伴う体肺短絡路作成術において,狭窄・閉塞をきたした場合には,バルーンまたはステントによるカテーテル的血管形成術は再手術を考慮する. IIa B初期に造設した体肺短絡路が,経時的な変化や患児の成長に伴い相対的に狭窄をきたすことをあらかじめ考慮し,次段階手術への待機,肺血管床成長を目的としてカテーテル的拡大術を考慮してもよい. IIb C体肺短絡術後狭窄に対するカテーテル治療は先天性心疾患カテーテル治療の豊富な経験と,心臓外科チームとの協議による適応決定,また術中術後の補助循環装着や開心術への移行を含めたバックアップ体制のもとで行うことを考慮してもよい. IIb C