p.48 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン 1.14 大動脈縮窄(表39,表40) 大動脈縮窄(CoA)は欧米では頻度が高く,先天性心疾患の5~8%を占めるとされるが,2018年のわが国でのサーベイランスでは2.8%であった.単純型で縮窄の程度が軽いと成人まで診断されず,成人後に高血圧の原因となる場合もある350–352).Turner症候群に合併することもある.合併心疾患は大動脈二尖弁,大動脈弁狭窄,大動脈弁下狭窄,僧帽弁狭窄,僧帽弁上輪などの頻度が高い.VSDや両大血管右室起始などを合併する複合型は新生児期・乳児期に発症して早期の外科的修復術が行われる. 1.14.1 カテーテル治療の適応 複合型CoAでは乳児期早期にCoAの修復と肺動脈絞扼術を行い,成長後に心内修復術を行う方法と,一期的にCoAと心内構造異常(主としてVSD)を治す方法とがある.いずれの場合でも,術後にCoA修復部の再狭窄をきたす可能性があり,その際には乳幼児ではバルーン血管形成術の適応となる. 単純型CoAでは,初期治療として手術を行う場合とカテーテル治療を行う場合とがある.未手術のCoAに対す るバルーン血管形成術では,若年において再狭窄率が高く,破裂や動脈瘤形成の危険性が看過できないため353–355),成長後まで耐容できるステントが使用できない体格では外科治療が選択される場合が多い.一方,手術後の再狭窄に対しては,複合型と同様に乳幼児ではバルーン血管形成術が行われることが多い.比較的限局性の狭窄で,大動脈弓部の低形成がない場合,成人に近い体格の学童以上の患者では15~20 mm以上に拡大できるステントを用いて拡大することが行われる356–359).近年では破裂や動脈瘤形成のリスクを考慮して,欧米ではカバードステントが用いられることが多く,血管壁の合併症が低減されている360–364).米国では2016年にカバードステントがCoAを適応として承認されたが140, 365),わが国ではいまだCoAを適応として 表38 肺静脈狭窄に対するステント留置術に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 高周波アブレーション術後の後天的な有意の肺静脈狭窄では,ステント留置を行う. I C年長児,思春期における肺移植後の後天性肺静脈狭窄,腫瘍による外部からの圧迫に対し,ステント留置を行う. I B孤発性の先天性肺静脈狭窄に対し,ステント留置を考慮してもよい. IIb C乳児,幼小児における肺移植後の後天性肺静脈狭窄,腫瘍による外部からの圧迫に対し,ステント留置を考慮してもよい. IIb C総肺静脈還流異常術後の肺静脈狭窄に対する治療として,ステント留置を考慮してもよい. IIb C複雑心疾患に伴う総肺静脈還流異常で肺静脈閉塞をきたしている重症例では,手術成績がきわめて不良な総肺静脈還流異常の早期の外科的介入を回避する目的で,ステント留置を考慮してもよい. IIb C外科的治療を必要とするほかの先天性心疾患を合併した肺静脈狭窄に対し,血管形成術やステント留置は行うべきではない. III Harm C表39 未治療CoA または再縮窄に対するバルーン血管形 成術に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル カテーテル検査により計測した縮窄部を介する収縮期圧較差≧20 mmHg で適切な形態の場合,年齢にかかわらず再縮窄に対してバルーン血管形成術を行う.ただし,安全にステントを留置できる体格(体重25 kg 以上)の場合には,ステント留置を優先する. I Cカテーテル検査により計測した縮窄部を介する収縮期圧較差<20 mmHg であっても,適切な形態の場合,豊富な側副血管により圧較差が過小評価されている場合,および単心室または有意な心室機能障害を伴う場合には,年齢にかかわらず再縮窄に対してバルーン血管形成術を行う.ただし,安全にステントを留置できる体格(体重25 kg 以上)の場合には,ステント留置を優先する. I C重症の心室機能障害,重症僧帽弁逆流,心拍出量の低下,心機能により悪影響を受ける多臓器疾患などの危険因子を有する場合,年齢にかかわらず未治療縮窄に対するバルーン血管形成術を考慮する. IIa Cカテーテル検査により計測した縮窄部を介する収縮期圧較差≧20 mmHg で適切な形態の生後4~6ヵ月以後の患児に対し,未治療縮窄に対するバルーン血管形成術を考慮してもよい. IIb C複雑な形態,または結合織疾患やTurner症候群を合併する未治療縮窄または再縮窄では,バルーン血管形成術を考慮してもよいが,個々の症例ごとに慎重に検討すべきである. IIb C