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p.46 抽出テキスト

先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン

b. 特殊なバルーン血管形成術i. ダブルバルーン法

2本同時に拡張する方法で,15 mm以上の血管拡張径を確保する必要がある場合に使われることが多い.Yeagerらの方法により換算直径を算出する302).利点として,高耐圧バルーンが使用できるため有効性が高く,完全閉塞しないため体血圧をある程度保つことができる.欠点として,手技が煩雑になり,医療経済性に劣ることがあげられる. ii. カッティングバルーン法

通常のバルーン血管形成術でwaistが残存する小口径の硬い病変に対して用いる322).通常のバルーン血管形成術に抵抗性の血管に対してのみ使用すべきである.カッティングバルーンはその構造上,金属ブレードをバルーンに接着して製作されており,取り扱いに慣れた術者により使用することが望まれる.カッティングバルーンのバルーン径は6 mmまでであり,それ以上に拡張が必要な病変は超高耐圧バルーンが代替として用いられる. c. リスクと合併症

有効性拡大のためには狭窄部やその周辺を過拡大する必要があり,内膜–中膜の亀裂が認められることが多い.有効性と合併症は表裏の関係であり,重度の肺動脈損傷を起こすことがある.術後病変では周囲組織の癒着により血管外漏出が縦隔および胸腔内に広がることは少ないが,心房壁や大動脈壁に癒着している部分が穿孔した場合は,心房–肺動脈交通や大動脈–肺動脈交通のため急激で重篤な循環障害をきたすことがある.また,スティッフワイヤが右心房,右心室を進展し,徐脈や期外収縮などの不整脈が誘発されることがあり、ワイヤ先端が末梢肺血管を損傷し肺出血が起こることもある.バルーン血管形成術後,再狭窄が起こることもあり,経過観察が必要である.

1.11.2 ステント留置術(表35)

先天性心疾患に対するステント留置術は1980年代後半から施行されている323, 324).標的病変としては肺動脈狭窄に対する使用実績がもっとも多く,次いで大動脈縮窄,大静脈狭窄などに使用されている.また欧米では導管や短絡血管(右室–肺動脈[RV–PA]短絡)に対するステント留置術が広く行われている.わが国では使用可能なステントに制限があることから,成長途上の小児においてはバルーン血管形成術が選択されることが多い.しかし,狭窄率が小さい病変,長い範囲にわたる狭窄病変,弾性反跳(elastic recoil)を呈する病変などではバルーン血管形成術の効果は不十分で,ステント留置術が必要となることが多い325–327).

欧米では,体格や解剖学的に可能であれば成人血管径まで拡張可能なステント治療が第一選択とされている.今

後,欧米で使用されている大血管ステントがわが国に導入されれば,普及すると予想され,一次治療としての適応が広がることも考えられる.ステントを成長途上の小児に対して使用する場合,成長に伴いステントを再拡大する必要性を予想して,最大拡張可能径を意識してステントを選択すべきである328–330).現在,わが国で利用可能なステントとして,大血管(肺動脈,大動脈)にはPalmaz XL(P4010 [胆管用ステントで血管には適応がない]),またはPalmaz Large(P308,P188[末梢血管用])があるが,わが国では肺動脈狭窄におけるCheatham Platinum(CP)ステントの医師主導型臨床試験が終了しており,早期の承認が待たれる331).中血管にはPalmaz medium stent,Palmaz Genesis (腎動脈用),Express Vascular LD(末梢血管用)があり,小口径のステントでは冠動脈用のステント(肺動脈には保険適用はない)が用いられることがある.中口径以下のステント(成人血管径まで拡張できないステント)を留置する場合は,あくまで姑息的手段と認識し,将来の外科的ステント摘出やステント留置部肺動脈形成(ステントを切断して血管形成)について事前に外科医との十分な打ち合わせが必要である.ステント留置の際には,一般にバルーン血管形成術を直前には行わないが,硬い病変でステント拡張が困難と予想される例や,狭窄高度でロングシースの挿入困難が予想される例では,前治療として適切なバルーン

表35 肺動脈狭窄に対するステント留置術に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

成人の血管径まで拡大できるステントを留置できる体格の患者では,有意な肺動脈狭窄に対する一次治療として,ステント留置を行う. I B心臓手術後で肺動脈分枝狭窄による循環動態の異常が原因と考えられる重篤な患者に対し,体格や血管径にかかわらずステント留置を考慮する. IIa B主肺動脈狭窄により右室圧が上昇している場合,ステントが肺動脈弁を損傷せず,また肺動脈分岐部の障害にならなければ,一次治療としてステント留置を考慮する. IIa B体格の小さい患者の重症の肺動脈分枝狭窄に対し,成人の血管径まで拡大できない小または中口径ステント留置を考慮する.これらのステントは将来の外科的治療(導管置換やFontan 手術)の際に,外科的に拡大または摘出する必要がある. IIa C