p.44 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン がある.20 mm以上の径の導管に対しては,ステントも導管径にまで拡大する必要がある.わが国で使用可能なステントPalmaz extra-large stent(P4010),Palmaz large stent (308,188)のうち,20 mm以上に拡大可能なものは, P4010のみである.ステント留置は肺動脈弁逆流を増加させることから,導管にステントを留置することは限定的である.乳児期に行ったRastelli手術などでは導管径が小さいため,それにあわせたステントを選択すれば,導管径までは拡大が可能となる.しかし導管径が十分でないため,根本的な治療ではなく,手術による次の導管交換までの時間を延長する目的で行われる.冠動脈の圧迫に関しては予測が困難であるため,あらかじめ想定されるステント径と同径のバルーンで拡大しながら冠動脈造影を同時に行い,圧迫の有無を判断する. 留置に際し,Palmaz largeステントは単体であり,導管径に近いバルーンカテーテルに用手的にリマウントする必要がある.留置に際しては,バルーンに対する適合サイズのシースより2 Fr以上太いロングシースを用いる.ステントは直線的な構造物であるため,ロングシースをなるべく直線的に狭窄部を超えて留置する必要がある.シースを留置したのち,ステントつきバルーンを狭窄部位まで進めるback loading法と,体外であらかじめステントをロングシースの先端部分まで進めておき,大腿静脈に留置したショートシースの中にロングシースとステントを一緒にして狭窄部位まで進めるfront loading法がある.治療対象部位に到達したら,バルーンがシース外に出るようにロングシースのみを引き,ロングシースから造影を行い,最終的なステントの位置確認を行う.位置が決まったら,バルーンを拡大しステントを留置する.バルーン拡大に際してステントがバルーンから移動しないようBalloon in Balloon(BIB)を用いることもある.BIBにはinnerとouterのバルーンがあり,2段階でステントを拡大する仕組みになっている. 1.10.5 成績 バルーン拡大術により,急性期には圧較差の改善が認められる303).しかしながら,長期的には効果は限定的である304, 305).狭窄解除の点からは,導管狭窄に対するステント留置は有用であり,導管の寿命を数年延長できる306).しかしながら,肺動脈弁閉鎖不全残存のため最終的には人工導管の再置換または経皮的肺動脈弁留置術が必要になる. 1.10.6 リスクと合併症 導管破損のリスクがあるため,導管径を超えないバルーン径を選択する.ステントでは留置後に胸骨の圧迫によるステント破損のリスクがある.冠動脈と走行が近い場合は,ステントによる冠動脈の圧迫のリスクがあり,心電図をモ ニターしながらのバルーン拡張やバルーン拡大と同時に冠動脈造影を行う必要がある.またステント挿入に伴い,肺動脈弁逆流は増悪する. 1.10.7 Melody® Valveを用いた導管拡大術 Melody ® valve(Medtronic,Minneapolis,MN)は,グルタールアルデヒド処理をした18 mmのウシ頚静脈弁をプラチナ製のバルーン拡張型ステント(Cheatham platinumステント)に縫着したもので,18,20,22 mmのBIBカテーテルにマウントされている.22 Frのデリバリーシステムを用いて留置する.2000年にBonhoefferにより報告された307).2006年にカナダと欧州で認可され,続いて2007年に米国の5施設で前向き多施設共同研究が開始308), 2015年FDAのPMA認可を受けた.この研究におけるMelody ® valveの適応基準は,右室流出路に生体弁(18~ 20 mm以上)あるいは,導管(16 mm以上)が挿入されているもので,以下の基準を満たす場合であった.1 5歳以上,2体重30 kg 以上,3 New York Heart Association (NYHA)心機能分類I度で,重度の肺動脈弁逆流と右心室の拡大あるいは機能低下のあるもの,またはドプラ平均圧較差40 mmHg 以上,4 NYHA心機能分類II度以上で,中等度以上の肺動脈弁逆流があるもの,またはドプラ平均圧較差35 mmHg. a. 適応 上記の適応基準を参考に,肺動脈弁逆流と導管狭窄に対して適応を決定する. b. 方法 留置前の狭窄が強い場合は,高耐圧バルーンによる前拡張が行われる.冠動脈造影を同時に行い,冠動脈の圧迫の有無を確認する.また高度狭窄の場合は,前拡張によりカテーテルを狭窄部に進めることが容易になる. 留置システムはBIBバルーンカテーテルとその外側に装着されているアウターシースからなり,BIBバルーンに弁付きステントを用手的にマウントし,それを外側からアウターシースで覆って,狭窄部に進める.狭窄部に到達したら,アウターシースを引くことで弁付きステントがむき出しになるので,バルーンを拡張し留置する. c. 治療成績と合併症 2010年にまとめられた124例の中期成績の報告では,有意な逆流の減少や狭窄解除が得られている309).ステントの移動,冠動脈の圧迫,肺動脈分岐狭窄,ホモグラフト導管破裂,ステントの破損,穿刺静脈のトラブルが合併症として報告されており,術前の磁気共鳴イメージング(MRI),コンピュータ断層撮影(CT)を用いた解剖の評価,十分な