p.40 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン 弁形成術が行われることがあり,その有効性も確認されている248, 254). 1.9.3 新生児重症肺動脈弁狭窄(表28) 新生児重症肺動脈弁狭窄(critical pulmonary valve stenosis)は,新生児において,肺動脈弁狭窄が非常に重度で,肺血流が動脈管に依存する血行動態を呈する.右室低形成例や,右室と冠動脈に類洞交通が存在する症例がある.肺動脈弁の形態,右室容積,三尖弁弁輪径や類洞交通の有無により治療法が異なるため,術前の評価は重要である.類洞交通は13%程度に合併し,三尖弁の低形成例に多く合併する255).バルーン肺動脈弁形成術直後には,著明に肥厚した心筋や右室の低形成のため動脈管依存の状態が継続する症例が10~20%程度存在するが255, 256),狭窄の解除により右室壁肥厚の減少,右室拡張能の改善,および右室の発育が期待される257–260). 1990年に報告された新生児重症肺動脈弁狭窄に対するカテーテル治療の重度の合併症は1.8%(3/168例)と,小児期や成人期のカテーテル治療よりも高い240).施行の際には,ガイドワイヤによる右室流出路の損傷や,心タンポナーデ等の種々の合併症に注意する必要がある. 右室容積が小さい場合には,肺血流を確保するためにBlalock–Taussig短絡術や動脈管ステント留置術が必要となる場合がある255, 261).肺動脈弁の発育も期待しうるが,弁輪径が小さいほど再肺動脈弁形成術や右室流出路再建術が必要となる255).年長児とは異なり,半数以上の症例に中等度以上の肺動脈弁閉鎖不全を合併し,なかには肺動脈弁閉鎖不全が進行する症例もある251, 255, 263).肺動脈弁弁輪径の125%以上の径のバルーンを用いて弁形成術を行った場合に,遠隔期に肺動脈弁閉鎖不全のために弁置換術が必要となる可能性が高くなる255, 264).・リスクと合併症 右室流出路付近でのカテーテルやガイドワイヤの操作により,右室流出路の損傷や穿孔をきたし,心嚢液貯留や心タンポナーデとなる場合がある.ガイドワイヤによる刺激などで,動脈管が収縮し,緊急Blalock–Taussigシャント術や動脈管ステント留置術などが必要となる場合があり得る. 1.9.4 純型肺動脈弁閉鎖(VSDを伴わない肺動脈閉鎖) (表29) 心室中隔欠損を伴わない肺動脈弁閉鎖は,肺動脈弁弁輪径,右室容積や三尖弁弁輪径によって,多様な経過をとる疾患である265).治療法も二心室修復からFontan手術までと幅広い.治療戦略や最終目標は解剖学的特徴から選択されるが,治療方針は施設間で異なる266, 267). a. カテーテル治療の適応 カテーテル治療のよい適応は,右室が流入部,肉柱部,流出路からなるtripartiteで,肺動脈弁が膜様の閉鎖であることである.肺動脈弁が膜様に閉鎖している場合には,閉鎖肺動脈弁を形成することにより,右室–肺動脈の順行性血流が漸増し,二心室修復が期待できる268–271).右心室が小さい症例ほど治療が難しく,また右室漏斗部が筋性閉鎖の場合にはカテーテル治療は不可能である272, 273).右室容積は三尖弁弁輪径に相関する.三尖弁弁輪径Zスコアが-2.5以上の場合は,肺動脈弁形成術後に右室は発育し二心室循環が成立する.Zスコアが-4.5以下は,肺動脈弁形成術を施行しても右室は発育しないので二心室循環は成立しない.Zスコアが-4.5~-2.5の場合は,しばしば右室心尖の発育が乏しいbipartiteの症例が含まれ,肺動脈弁形成術後に暫時動脈管またはシャントの付加肺血流が必 表28 新生児重症肺動脈弁狭窄に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 動脈管に依存した肺循環を呈する新生児重症肺動脈弁狭窄に対し,カテーテル治療を行う. I A表29 VSD を伴わない肺動脈閉鎖に対するカテーテル治療 に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 膜様閉鎖の肺動脈閉鎖で,右室に依存する有意な類洞交通を認めず,適切な三尖弁弁輪径,右室容積を有する症例に対し,カテーテル治療を考慮する. IIa C膜様閉鎖の肺動脈閉鎖で,適切な三尖弁弁輪径,右室容積を有するが,類洞交通を認め,広範囲ではないが右室に依存する冠循環を有する症例に対し.カテーテル治療を考慮してもよい. IIb C三尖弁弁輪径,右室容積が著しく低形成で,経皮的肺動脈弁形成術による右室の発育を促す効果が期待できない症例 *に対し,カテーテル治療を考慮してもよい. IIb C右室流出路が筋性閉鎖の症例に対し,カテーテル治療は推奨されない. III No benefit C類洞交通を有し,冠循環が広範囲に右室に依存する症例に対し,カテーテル治療を行うべきではない. III Harm C * この場合には,肺動脈への順行性の血流を作成し,短絡術を回避する目的で経 皮的肺動脈弁形成術を施行する.