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p.38 抽出テキスト

先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン

テル治療が考慮される.Mooreらの報告では,乳児例でもバルーン弁形成術後経過良好の例もある219).また,彼らの成績では術後24ヵ月までの生存率は手術とバルーン弁形成術で同等であった219).いずれの治療方針を選択してもリスクは高いため,とくに幼児期早期までの症例では,まずバルーン弁形成術を施行するという方針も一法であろう237, 238).

1.8.7 結論

小児のMSに対するバルーン弁形成術においては,慎重な適応決定と合併症発生時の対処を計画しておく必要がある.

1.9 肺動脈弁狭窄症および右室流出路狭窄

1.9.1 小児の肺動脈弁狭窄症(表25)

a. 自然歴

1940年代には人工心肺を使用せずに肺動脈弁形成術が行われていたが,1950年代に入ると,人工心肺使用下で直視下での肺動脈弁形成術が行われるようになった.1958 ~1969年に心臓カテーテル検査を施行した肺動脈弁狭窄症586例の手術後および非手術後の自然歴が,1993年に報告されている239).右室–肺動脈圧較差50 mmHg以下の症例の大部分は手術をせず,圧較差80 mmHg以上の症例の大部分は手術をしている.圧較差50~80 mmHgの症例では,手術・非手術が混在している.これらの患者の 25年間生存率は健常人の生存率と変わらなかったことから,圧較差50 mmHg以上の肺動脈弁狭窄症を治療適応とするとされた.ただし,圧較差の基準を50 mmHgとするのか,

40 mmHgとするのかは,検討の余地があるとしている.また,圧較差25 mmHg以下の症例の圧較差増大例はなく,全体で細菌性心内膜炎は1例にしか発生しなかった. b. 肺動脈弁狭窄症に対する治療の適応

肺動脈弁狭窄症の重症度は表26に示すとおりである.右室–肺動脈圧間の圧較差50 mmHg以下の場合は,治療を施さなくても生命予後は悪化しない240).したがって,治療の絶対的適応はない.ただし,圧較差30~50 mmHgの症例に対する治療方針はいまだ議論の余地がある.1961 ~1978年に施行された自然歴調査では,圧較差25~49 mmHgの症例は状況に応じて治療法を選択すべきと述べられている241).

中等症以上の症例に対し,従来は外科的治療が行われていたが,その成績は良好で新生児期以降の手術死亡率は0~2%,長期予後も正常人と変わらないことが示されている240).手術の侵襲を考えると圧較差40~50 mmHg以上が手術適応と考えられる.

カテーテル治療が肺動脈弁狭窄症の治療に本格的に行われるようになったのは1980年代に入ってからであり, 1982年にJohns Hopkins大学のKanらがバルーン肺動脈弁形成術の最初の報告をした242).以来,次第に外科的治療はカテーテル治療にとって代わられ,今日ではわが国でも,幼児,小児,成人を含め単独の肺動脈弁狭窄症に対する手術はほとんど行われなくなった.今のところ新生児重症例を除いて死亡例は784例の集計で1例のみである243).カテーテル治療は圧較差40 mmHg以上が適応とされている209).

ドプラ心エコーまたはカテーテルで測定した圧較差に乖離があることがある.多くの場合,カテーテルで測定した圧較差のほうがドプラ心エコーでの圧較差より低いが,ドプラ心エコーで40 mmHg以上の圧較差を認めれば,カテーテル治療の適応がある. c. カテーテル治療の年齢

通常, 月齢が低いほど合併症発生率は増加するので,中等度の肺動脈弁狭窄症例は乳幼児期以降に治療が行われるのがよいと考えられる.しかし,重症例は早期の治療が望ましく,新生児の重症例では圧較差にかかわらず,ただちに治療を行う.また,高齢者でもカテーテル治療は有効

表26 右室収縮期圧による肺動脈弁狭窄症の重症度分類

軽症50 mmHg以下中等症50 mmHg ~体血圧重症体血圧以上

表25 肺動脈弁狭窄症(小児)に対するカテーテル治療の

適応に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

ドプラ心エコーまたはカテーテルで測定した右室ー肺動脈間の圧較差が40 mmHg 以上の肺動脈弁狭窄症に対し,カテーテル治療を行う. I Aドプラ心エコーまたはカテーテルで測定した右室ー肺動脈間の圧較差が40 mmHg 以下でも,右室収縮低下を有する,臨床的に明らかな肺動脈弁狭窄症に対し,カテーテル治療を行う. I Cドプラ心エコーまたはカテーテルで測定した右室ー肺動脈間の圧較差が40 mmHg 以上の異形成肺動脈弁狭窄症に対し,カテーテル治療を考慮してもよい. IIb C