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p.37 抽出テキスト

に伴い,再置換術が必要となることもある.治療の困難性ゆえに,先天性MSのうち手術やカテーテル治療の適応となるのは中等症以上の症例で,MSに起因する症状を認めるか体重増加不良がある場合である219).

リウマチ性MSに対するバルーン弁形成術の後は,融合した交連部が分離するとされている217).先天性MSにおけるカテーテル治療の効果発現の機序を調べた報告はないが,先天性MSにおいても,交連部や弁尖の亀裂が生じ,さらに弁下組織間隙の拡大が起こると推測されている223).先天性MSに対するバルーン弁形成術は,乳頭筋を2個認めるいわゆる典型的MSに対し施行したとの報告が多い218, 219).乳頭筋が一つのパラシュート僧帽弁は,バルーン弁形成術により弁下組織が拡大するとは考えにくいため,一般的にはバルーン弁形成術の適応とされないが219), Grifkaらは3例にバルーン弁形成術を施行し,2例で経過良好であったという224).また,MSのなかでも僧帽弁上輪による狭窄は,通常,外科的に輪を切除できるので,カテーテル治療の適応とはならない224).Mooreらの報告でも,4例の弁上輪に対するカテーテル拡大術ののち,全例で僧帽弁閉鎖不全が増悪して弁置換となっている219).したがって,二つの乳頭筋を認めた典型的MSのみをバルーン弁形成術の対象とし,パラシュート弁や弁上輪は適応外とすべきである225–227).

僧帽弁口面積に関して,Raoらは1.0~1.5 cm 2/m 2以下の場合にバルーン弁形成術の適応となると述べている228).成人の正常僧帽弁弁口面積は4~6 cm 2 で,2 cm 2以下で軽度MS,1 cm 2以下となると高度MSとされる217, 223).参考値として体表面積1.7 m 2を用いて計算すると,正常値は2.3~3.5 cm 2/m 2 で,1.1 cm 2/m 2以下で軽度MS,0.6 cm 2/ m 2以下で高度MSとなる229).同じ僧帽弁口面積でも,心拍数や心拍出量が多いと左房圧は上昇する.小児では心拍数や心拍出係数が成人に比べ高いため230),弁口面積が同じでもより重症となる可能性がある.

1.8.2 バルーン弁形成術の方法

バルーン弁形成術は全身麻酔下に施行する.鼠径部を穿刺し,右心,左心カテーテルを施行する.僧帽弁逆流は左室造影からSellers分類231)にしたがって評価する. Gorlinの式から僧帽弁口面積を計算する232).

透視と経食道心エコーを用いて穿刺針の位置をモニターしながら,心房中隔を穿刺する.心房中隔穿刺部位を5 mmのバルーンで拡大したのち,7 Frのロングシースを左房に挿入する.バルーンは,通常の拡張用バルーンカテーテル,またはイノウエ・バルーン(東レメディカル)を用いる.バルーンの径は,左房造影で計測した弁輪径の0.6~0.8倍で開始し,経食道心エコーで左室流入血流速

度,僧帽弁逆流の程度をモニターしながら,効果のない場合は径を徐々に増やし,弁輪径と同等の径のバルーンまで用いる233).

1.8.3 急性期効果

Kveselisらは3例にバルーン弁形成術を試み,1例でのみ施行,弁口面積が0.7 cm 2/m 2から0.85 cm 2/m 2に拡大した234).Spevakらによる初期の経験では,9例で僧帽弁口面積が1.1 cm 2/m 2から1.8 cm 2/m 2に拡大した218).さらに, Mooreらはその後の経験を追加し,18例中15例で有意に左房圧が減少し,僧帽弁口面積は0.7±0.3 cm 2/m 2から1.0 ±0.5 cm 2/m 2へ増加した219).

1.8.4 急性期合併症

バルーン弁形成術に伴う合併症には,僧帽弁逆流,心タンポナーデ,房室ブロック,残存心房間交通,左房内血栓などが報告されている218, 219, 224, 234).緊急手術を必要とする僧帽弁逆流は成人では1%未満で,その原因は僧帽弁の前尖または後尖の断裂であったとされている217).小児では,急性期における中等度以上の僧帽弁逆流は22%,軽度の僧帽弁逆流は28%で,腱索の断裂がみられた症例も報告されている219).心タンポナーデの合併は,成人では3%以下とされているが,小児ではGrifkaらにより,10%と報告されている224).

1.8.5 中長期成績

再狭窄,僧帽弁逆流の悪化,弁置換が必要となった症例があり219),術後は中長期的に,再狭窄や僧帽弁閉鎖不全が発生しうることを念頭に置いてフォローアップする必要がある.

1.8.6 外科的治療か,カテーテル治療か

外科的治療では,僧帽弁形成術や僧帽弁置換術が行われる235, 236).しかし本症では,僧帽弁輪径が小さくかつ異形成の強い弁が多いので形成術で対応困難な例も少なくない.こうした症例では,乳幼児を中心に十分なサイズの弁が入らないこともあり,成績は不良である.

バルーン弁形成術では,術後に高度な僧帽弁閉鎖不全が比較的高率に発生する.それゆえ,年長児で弁輪径が比較的大きい場合には,手術を第一選択とするのが一般的である.しかし,僧帽弁上に人工弁を植え込まざるをえないような乳幼児例や,それ以上の年齢でも弁輪狭小例では手術の死亡率は高く,術後の罹病率も高いことから,乳頭筋が二つあり,腱索が短い典型的なMSの場合には,カテー