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p.36 抽出テキスト

先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン

総頚動脈が選択されることが多い203).その際,かつては外科的カットダウンによりシースが留置されたが,近年は3 Frシースに対応する細径のバルーンカテーテルが使用され,エコーガイド下に穿刺留置,シース抜去後の用手止血も可能となっている.適用するバルーン径は大動脈弁弁輪径の0.9~1.0倍とされる.中等度以上の大動脈弁逆流がある場合には適応外となる.あくまで急性期を乗り切るための姑息的治療という位置付けであることから,小さめのバルーン径を選択し,効果をみながら段階的に拡張を繰り返す方針をとる.

1.7.2 乳幼児期以降のAS

心臓カテーテル検査で測定した安静時収縮期圧較差(peak to peak)が50 mmHg以上,また,胸痛,失神などの症状がある場合,心電図で左側胸部誘導にストレインパターンが認められる場合,運動競技への参加や挙児希望の場合は,圧較差40 mmHg以上がバルーン拡大術の適応となる139, 204).中等度以上の大動脈弁逆流があればバルーン拡大術の適応はない.ドプラ心エコー法で測定した瞬時大動脈弁収縮期圧較差は,心臓カテーテル検査で測定した収縮期圧較差に比べて過大評価される.そのためドプラ心エコー法で得られた収縮期圧較差は参考値とする.

バルーン拡大術の際には,新生児と同様に大動脈弁弁輪径の0.9~1.0倍のバルーン径を選択する.年長児で弁輪径が11 mm以上と大きな症例には,シングルバルーン法では6 Fr以上のシースが必要となるため,大腿動脈の損傷や血栓性閉塞を生じやすくなるため,ダブルバルーン法が選択される205).左室機能が保たれていれば,長径4 cmの長めのバルーンを用いて,高頻度ペーシングによりバルーンの拍出を抑えて安定をはかる206).

1.7.3 効果および合併症

経胸壁ないし経食道心エコーガイドを併用すると,手技中の効果判定にも有用であり,大動脈弁逆流が軽く被曝放射線量も低下する傾向があるとの報告もある207).的確な手技が効果的に実施されると,収縮期圧較差は20ないし35 mmHg低下し,大動脈弁逆流はほとんど起こらない. Valvuloplasty and angioplasty of congenital anomalies (VACA)Registryでは,1984~1992年に23施設から小児606例の報告があった.全体では60%の収縮期圧較差の低下がみられ,不成功,すなわち60 mmHg以上の圧較差残存,有意合併症や死亡の原因としては,生後3ヵ月未満,術前の高度な圧較差,バルーン径/弁輪径比0.9未満,未治療大動脈縮窄(CoA)の併存,日齢がより小さいことがあげられた208, 209).この結果からも,バルーン径/弁輪径比は0.9~1.0が推奨され,それより大きなバルーンでは大動

脈弁逆流の発生率が有意に増加することが示されている.

1990年代の報告では,バルーン拡大術の成功率は90%前後で209, 210),2000年代の比較的大規模の調査によると,再治療回避率は10年後で50%前後である211, 212).急性期の治療効果に関してはバルーン拡大術と外科的弁形成術とのあいだに差はなく,長期的な再手術回避率については外科的弁形成術が優れるという報告がある200, 213).初回の治療方法については,今後カテーテル治療と外科手術の比較検討が必要である.

1.8 小児の先天性僧帽弁狭窄症(表24)

先天性僧帽弁狭窄症(MS)は,先天性心疾患の0.2~ 0.4%を占めるまれな疾患である.重症例の自然歴は不良であり,4~5歳までに死亡する214, 215).また,外科的治療の死亡率も高い214, 215).小児ではリウマチ性MSに対する経皮的カテーテル僧帽弁形成術の報告があるが216, 217),先天性MSはまれな疾患であるがゆえに本症に対するバルーン弁形成術の報告は少ない218, 219).

1.8.1 バルーン弁形成術の適応

ほかの心疾患を合併する先天性MS(多くはCoA,AS)の治療は合併形態異常の治療を優先する.合併形態異常がない場合,MSに対する治療の適応は,呼吸困難,体重増加不良などの症状がある場合や,肺高血圧がある場合である.左右短絡疾患と異なり,本症の場合は肺高血圧がかなり長期間続いても血管閉塞性病変に進行することは少ない.ただし,肺高血圧が高度の場合には肺水腫となり突然死することもあり,治療の適応となる.

先天性MSは外科的修復が困難で予後不良の疾患である.僧帽弁の弁輪が狭小であるため,弁輪部への一般的な人工弁置換が困難であることが多く,弁上に(人工血管等も利用して)人工弁を装着する選択肢もある220).先天性MSに対する外科的僧帽弁形成術,僧帽弁置換術の死亡率は6~48%という報告もある215, 220–222).また,身体の発育

表24 小児の先天性MS に対する治療に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

幼児期早期までの先天性MS では,まずバルーン弁形成術を施行する方針を考慮してもよいが,慎重な適応決定と合併症発生時の対処を計画しておく必要がある. IIb C