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先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン a. 合併症 バルーンが破裂することがある180).破片が飛散せず空気抜きが完全であれば,身体への重篤な影響はないが,破片が飛散したり空気抜きが不完全な場合,塞栓により脳梗塞等が発生しうる.大きなバルーン断端は回収可能なことがある181).バルーンが心室に入っていると,腱索を断裂することがある.心耳のjuxtapositionの例では,右心耳にバルーンが入ると,穿孔することがある.バルーンを膨らませたまま下大静脈の遠位まで引きすぎると,下大静脈の破裂が発生しうる. b. Rashkind法の限界 大血管転位症で本法を行う場合,生後1ヵ月を過ぎると,心房中隔が厚くなり,バルーンで裂開できなくなることがある.また左心低形成症候群では,生直後から心房中隔壁は厚いことが多い.BASが有効でない場合には,ブレード法やステントを用いた方法を適用する. 1.5.3 Static法 BAS用バルーンカテーテルを用いるのではなく,弁拡張用バルーンもしくは血管形成用のバルーンカテーテルを用いて心房間交通を拡大する方法である.2021年中にはStatic BASに対して保険償還をもつTMP-PEDカテーテル(東海メディカル社)が販売される予定である.Rashkind法では裂開困難となった心房中隔の拡大や,Rashkind法用のバルーンカテーテルが挿入困難な症例,太いイントロデューサー・シースの留置が困難な症例で行われることが多い. まず,カテーテルを用いてガイドワイヤを左房内もしくは肺静脈まで先進させる.ガイドワイヤにバルーンカテーテルを沿わせて心房中隔位までもって行き,バルーンを広げて心房間交通を拡大する.Rashkind法用のバルーンカテーテルが引き抜き可能な症例では,心房間交通の拡大効果はRashkind法が優れている.しかし,心房中隔が肥厚してRashkind法用のバルーンカテーテルが右房まで引き抜けない症例では,Static法が有効な方法である. 1.5.4 ブレード法 Parkが開発した方法である182, 183).カテーテル先端に刃が収められていて,手前のワイヤを押すと刃が出る仕組みになっている.左房内で刃を開き,手前に引いて心房中隔を切開する.透視で,刃の方向が左下方を向くようにしてカテーテルを引く.刃の長さに大・中・小のサイズがある. BAS用のブレードカテーテルは,現在わが国では入手不可能となっている. 1.5.5 単独施行までに必要と考えられる症例数 手技的にはもっとも基礎的なものであり,卵円孔へのカテーテル挿入とバルーンの位置確認が重要である.単独施行に必要な症例の経験数は,Rashkind法が3例,Static法が5例程度と考えられる. 1.6 心房間交通作成 1.6.1 Brockenbrough法 左心低形成症候群の小児や,肺動脈性肺高血圧症の患者では,心房中隔にまったく交通がない場合がある.そのような患者で,心房間交通を作成する場合には, Brockenbrough法による中隔穿刺が行われる.以前は肺動脈造影や透視のみで左房の位置確認をしていたが,近年では安全性を確保するために,経食道心エコーや心腔内エコーガイド下の手技が勧められている.成人では習熟を要する手技ではあるが,合併症の頻度は高くない(針穿孔3%以下,心タンポナーデ1%以下,死亡0.5%以下) 184).新生 児では,習熟した術者によってのみ行われるべき合併症の頻度が高い手技である.最近では高周波通電用のBrockenbrough針が開発され,本法でも導入されている185).また,小児用に高周波通電用のワイヤも使用可能となっている. 1.6.2 心房間交通に対するステント留置 心房中隔が肥厚しており,BASを行っても十分な効果を得られない場合や,短時間で再狭窄を起こしてしまう場合に本法が行われることがあり176–178),左心低形成症候群を中心とした疾患群に施行される.しかし,わが国ではこの数年間に年間5例前後行われているのみである. 手技のモニターは,透視とともに経食道心エコーもしくは経胸壁心エコーが用いられる.BASの直後に行われたときや,左心低形成症候群によくみられる卵円孔の位置が高位で左房壁に接しているような場所の場合には,ステントが留置直後に落下する可能性もあり,ほかの心房間交通拡大術とは異なるリスクを有している. 1.6.3 特発性肺高血圧症の末期右心不全に対する 心房間短絡の作成(表22) 肺高血圧症が進行して肺血管抵抗が著しく上昇すると,右室から肺への心拍出量が減少し,低拍出症に陥る.このような病態の場合,心房中隔に短絡を形成して心房間での右–左短絡を作成し,左室よりの体循環拍出血流量を確保