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p.33 抽出テキスト

d. 成人期のPDAに対するカテーテル治療

成人期のPDAは決してまれではない.多くの場合,動悸,息切れなどの心不全症状を有しており,長期の左心系容量負荷のため,心房細動,僧帽弁閉鎖不全,大動脈弁閉鎖不全を合併することが多い.成人のPDAを外科的に閉鎖するには,小児期のように単純な結紮術は困難で,人工心肺を用いた開心術を選択する必要があり,カテーテル治療の有用性は高い.加齢に伴う大動脈弓の形態変化によって,動脈管形態も,小児期に多くみられる円錐型(Krichenko分類A型)のものに代わって,動脈管長が短く大動脈側が開大した形態の症例が多くなる.さらに動脈管周囲や動脈管そのものに石灰化病変を伴う場合や,動脈瘤を形成する場合があり,慎重に評価する必要がある.小児例と比べ動脈管長が長い場合があり,小児に用いるADOでは長さが不十分な症例があり,形態に応じてVascular Plug IIが用いられている164).CTを用いた動脈管の3D構築像は,成人のPDAではとくに有用である.成人のPDAでは動脈管径が大きなものが多く,石灰化病変を伴っていることが多いため,カテーテル治療後も残存短絡が生じやすく,まれに重度の遷延する溶血を合併する症例も報告されている148, 173).抗凝固薬の使用例では,とくに注意が必要である.PDAにほかの大動脈病変を合併している場合,カバードステントを用いて大動脈の形成とPDAの閉鎖を同時に行ったとの報告もある174).まれな合併症としてカテーテル治療後の大動脈解離の報告もある175).

1.5 心房中隔裂開術(表21)

1.5.1 適応

右心系低形成心疾患(三尖弁閉鎖症,純型肺動脈閉鎖症,純型肺動脈狭窄症など)で体静脈血の左心系への還流が心房間交通に依存している疾患群,左心系の閉塞性疾患(左

心低形成症候群など)で肺静脈血の還流が心房間交通に依存している疾患群,大血管転位症のように動静脈血の混合を心房間交通に依存している疾患群がある.このような疾患群で心房間交通が狭小化している場合にバルーン心房中隔裂開術(BAS)が行われ,心房間交通の拡大を図る.

大血管転位症のように動静脈血の混合を心房間交通に依存している疾患群での本法の適応は,原疾患に対する心内修復術の時期との兼ね合いで決定する.低酸素血症が高度で,ほかの方法(例: プロスタグランジンE1投与)で改善せず,心内修復術が間に合わないときに本法を施行する.左心系の閉塞性疾患(左心低形成症候群など)で肺静脈血の還流が心房間交通に依存している疾患群では, BASを行うか,最初からステントを用いた心房間交通作成術を行うかは,議論のあるところで,症例により決定する.右心系低形成心疾患で体静脈血の左心系への還流が心房間交通に依存している疾患群では,原疾患に対する治療を行うと,循環が心房間交通に依存しなくなることがあるので,適応の判定は慎重に行うべきである.

BASにはバルーンを用いて拡大するRashkind法とStatic法,そのほかにブレード法がある.しかし,BAS用のブレードカテーテルは,現在わが国では入手不可能となっている.またBASを行ってもすぐに狭小化してしまう心房間交通に対するステントの留置の有用性も報告されている176–178).

1.5.2 Rashkind法

1966年にRashikindとMillerによって行われたもっとも古いカテーテル治療である179).通常は心カテーテル検査室にて,透視と心エコーによりカテーテル先端の位置確認をしながら行われる.バルーンが肺静脈,左心耳内,僧帽弁位にないことを確認しながら希釈造影剤でバルーンを拡大し,膨らんだバルーンを左房内より右房内に引き抜き心房中隔を裂開する.引き抜き時に引きすぎると,バルーンが下大静脈にまで達して下大静脈の損傷を招くことがあるため,注意が必要である.まれに,心臓カテーテル検査室への移送も困難な症例では,ICU内で心エコーガイドのみにて行われることもある.Rashkind法用のバルーンカテーテルはわが国ではラシュキンドカテーテル(日本メドトロニック社)が使用可能であったが,2020年末に有害事象により世界中で回収の報告が出ている.現在,わが国ではRashkind法用のバルーンカテーテルがないため,回収対象となっている本カテーテルを使用しているが,Z-5バルーン(ヌーメド社)を保険償還の申請中である.

表21 先天性心疾患に対するBAS の適応に関する推奨と

エビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

心房間交通が狭小化し,ほかに十分な動静脈血の混合部位をもたない大血管転位を認める場合,BAS を行う. I C肺静脈血の還流が心房間交通に依存している左心系の閉塞性疾患を認める場合, BAS を行う. I C心房間交通が狭小化した右心系低形成疾患を認める場合,BAS を考慮する. IIa C