p.32 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン 窄はなく,2例で大動脈縮窄が進行し,ステント留置が施行された.三尖弁閉鎖不全の増悪が5例に認めれており,注意が必要である163). d. AVP II わが国,FDAともに,AVP IIは心臓および頭蓋内血管への適応は承認されていないが,米国,ヨーロッパでおもに5 kg未満の乳児のPDAに使用されている.AVP IIの構造はADO IIと同様に中心部のウエストと両端の保持ディスクから構成されているが,ウエスト径と保持ディスクの径が同径で大動脈や肺動脈突出のリスクがより低いことが期待されている.デバイス径は3~22 mm,長さは6~18 mmまでの計11種類のバリエーションを有している.このうち,使用頻度が比較的高い,デバイス径8 mmまでは4 Frの,10 mm,12 mmは5 Frのデリバリーシースで留置可能である.ただし内腔支持力が弱いシースではデリバリーが困難な場合がある.米国での単施設後ろ向き研究では, C型5%,D型9%,E型28%を含む67例のうち,43例(64%)をAVP IIで閉鎖し,Krichenko分類にかかわらず閉鎖成功率は100%で,大動脈や左肺動脈への突出・狭窄や遺残短絡はない164).ADOでは閉鎖困難な膨大部が浅い動脈管も閉鎖可能だが,動脈管の長さが6 mm未満の短い管状動脈管は大動脈側に突出の恐れがある.閉鎖方法は41例(95%)が静脈側アプローチでデバイスの選択は動脈管最狭窄部の2倍以上,動脈管の中央部の1~2 mm以上のサイズで留置される. 1.4.4 PDAに対するカテーテル治療のさまざまな問題 a. 心雑音のないPDA(silent PDA)をどうするか Silent PDAが感染性心内膜炎の原因になるか否かについてはいまだ議論がある.現時点で,silent PDAの閉鎖の意義を裏づけるデータはない.Lloydらによれば,silent PDAにおける感染性心内膜炎の発生率は連続性雑音を聴取する症例の1,000分の1以下と推測される165).しかし, 1心雑音は胸壁の厚さ,診察室周囲の環境,脈拍数,さらには短絡血流の方向などに影響を受け,短絡量のみで規定されていないこと166),2成人の動脈管は概して大きいが,小児期にsilent PDAと診断された動脈管も成長する可能性があること,3年齢とともに血圧が上昇し,動脈管前後の圧較差が増大したとき,感染性心内膜炎の危険率が上昇する可能性があること,は留意すべきである. b. 乳児期早期のPDAをカテーテル治療で閉鎖するか カテーテル治療のデバイスでコイルやADOしか使用できなかった時代には,乳児期早期のPDAのカテーテル治療の対象は外科的介入が困難な重症例に限られ,未熟児・新生児など体格が小さな症例は外科的介入を行うべきとされてきた.Fisherらは月齢1~11ヵ月,体重2.6~7.8 kg, 動脈管最狭部径1.5~5.0 mmの12例に対し,ADOによる閉鎖術を行った結果,2例で結紮術が必要となり,9例で手技・透視時間が長かったと報告している167).乳児例ではADOのretention skirtが小径の大動脈に突出する可能性が高く,体重10 kg未満では合併症の発症率も高くなるため,十分に注意する159). しかし,ADO II,Amplatzer Piccolo TM Occluder,適応外ではあるがAVP II等のデバイスの参入により,乳児期早期のPDAに対するカテーテル治療の成績は向上している.英国の13施設による多施設共同研究で体重6 kg未満(平均体重4.9±1.0 kg,月齢5.7±3.0ヵ月)の患者408例に対して,ADO(220例),ADO II(56例),Amplatzer Piccolo TM Occluder(41例),コイル(40例),AVP II(7例)を用いてカテーテル治療を施行し,92%(374例)が合併症なく閉鎖でき,最終フォローアップ時に95%が完全閉鎖していた.7例(1.7%)に左肺動脈や大動脈への突出を認め,20例(5%)にデバイス塞栓を認めたが,体重4 kg未満,4~5 kg未満,5 kg以上の3群で合併症発生率に有意差は認められなかった168). c. 新生児期のPDAを閉鎖するか 在胎週数27週未満で出生した早産児の50%以上は,心不全症状を発症し169),従来から薬物治療が第一選択で,無効な場合に外科的閉鎖術が行われてきた.しかし,外科的結紮術には,出血,反回神経麻痺,横隔神経麻痺,乳糜胸,偽性瘤,あるいは創部感染等の合併症がある170).カテーテル治療に関しては,ADOは硬く太いデリバリーシースが小さな右室流出路を急峻な角度で走行して血行動態を悪化させやすく,またシースが折れ曲がりやすいため167), 5 kg未満では推奨されない.また,新生児は早期産であればより腎機能が未成熟なため171),造影剤の使用により造影剤腎症をきたしやすいこともカテーテル治療の障害となってきた.しかし,Amplatzer Piccolo TM Occluderが使用可能となり,700 g以上の早産児のPDAが比較的安全に閉鎖されるようになった163).また,適応外使用になるが,新生児に対するAVP IIによる閉鎖も報告されている.米国の単施設での検討では,F型(早産児)24例(手技時日齢30日,手技時体重1,249 g)をAVP IIで閉鎖した.左肺動脈狭窄をきたしてデバイスを回収した3例を除く,21例(88%)に留置が可能であった.1例に左肺動脈狭窄を合併し,ステント留置が施行された.大動脈や遺残短絡はなかった172).大動脈側の膨大部径が小さい症例に,AVP IIは大動脈側への突出が少なく,有用であり,Amplatzer Piccolo TM Occluderで閉鎖が不可能な場合の代替手段になりうる.