p.29 抽出テキスト
も注意を要する84). 1.4.1 コイルによる動脈管開存閉鎖術 PDAの閉鎖にはさまざまなコイルが用いられ,材質,直径,巻数,太さ,ダクロン糸のつき方などに特徴がある.プッシャブルコイルであるGianturcoコイルも,習熟すれば安全に使用できるが147),ほとんどの施設でより安全なデタッチャブルシステムにより閉鎖術が施行されている.これには0.038インチFlipper ® PDAコイルを使用する場合と, 0.052インチGianturcoコイル先端の球状部を3 Fr心筋生検鉗子で把持してデタッチャブルシステムとしたものを用いる2つの方法があった.わが国でADOが保険適用となった2009年以前は,複数コイルの同時留置,0.052インチGianturcoコイルの使用などにより,最小径4 mm以上の動脈管にもコイルによる閉鎖術が試みられた148).しかし,動脈管が太くなると,コイルの脱落・遊走などの合併症もまれではないことから,コイルの適応は最小径2~3 mm 以下の動脈管と考えられている149–151).なお,0.052インチGianturcoコイルと3 Fr心筋生検鉗子はすでに製造が中止され,日本国内では販売されていない. コイルによるPDA閉鎖術については多くの報告がある. 1990年代半ばに施行されたコイル閉鎖術535例(最小径中央値2.0 mm)の検討では,成功率95%,24時間以内の完全閉鎖率75%であり152),欧州での集計では,1,258例(1,291回)のコイル閉鎖術の結果,閉鎖率は留置直後で59%,1年で95%である153). 1.4.2 コイル閉鎖術の問題点,合併症とその対策 a. 過剰コイルの血管内突出 コイルの過剰な巻き数部が肺動脈内または大動脈内に突出して左肺動脈または大動脈が狭窄する場合がある.小児例では,わずかな突出は成長とともに軽減するが,有意な圧較差を残す場合には,コイルを回収して再閉鎖を行うなどの対処が必要となる. b. 肺動脈・胸腹部大動脈内へのコイルの脱落 通常,コイルの離脱時に発生するが,まれに数日後にも発生する.肺動脈側に塞栓することが多く,その部位はコイルの大きさ,脱落した個数によりさまざまである.通常, 4 Fr(5 mm,10 mm径)のキャッチングスネアと5 Frロングシースなどを用いれば,その回収は可能である.血行動態も安定しているため,落ち着いて回収する.なお,静脈側からアプローチする場合,コイルが三尖弁腱索に絡まるのを防ぐため,肺動脈内でロングシースなどに回収することが望ましい154). c. 赤血球破砕症候群 PDAに対するカテーテル治療後には速やかな血栓性閉塞をきたすように,抗血栓療法や抗血小板薬を用いることはない.遺残短絡のために多数の赤血球が破砕された場合,ヘモグロビン尿を発症する155, 156).ハプトグロビンを投与しながら経過を観察すると,血栓形成とともに自然に改善することもあるが,乳酸脱水素酵素(LDH)上昇が持続,ヘモグロビン低下が進行する場合には追加治療を考慮する.体内のハプトグロビンが消費された後に顕性化するため,退院後に発見される可能性がある. 1.4.3 Amplatzer デバイス(図4) a. ADO ADOは2009年に保険収載された.デリバリー用のロングシースは5~7 Frである.わが国では,施設基準を満たした施設の術者基準を満たした医師が,JCICとCVITの定める教育プログラムを受けた場合にのみADOを使用で 表20 PDA に対するカテーテル治療に関する推奨とエビデ ンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 左右短絡を有する中等大より大きい動脈管で,解剖,患者の体格が適しており,以下の条件を満たす動脈管開存の場合,カテーテル治療を行う. 1 ほかに外科手術を必要とする心血管系合併症を有さない. 2 多呼吸,体重増加不良などの症状がある. 3 胸部X 線,心エコー検査などで肺血 流増加所見,左心系の容量負荷所見を認める. I B左心系の容量負荷はなく,動脈管は小さいが,聴診で動脈管による心雑音が聴取される動脈管開存の場合,カテーテル治療を考慮する. IIa C動脈管の短絡血流は肺血管閉塞性病変のため両方向性であるが,酸素負荷,肺血管拡張薬により血管抵抗が減少し,左右方向になる動脈管開存の場合,カテーテル治療を考慮してもよい. IIb C左右短絡を有する小さな動脈管で,心拡大がなく,動脈管による心雑音を聴取しないが,心エコー検査で乱流シグナルを認め,動脈管を短絡する加速血流が検出される脈管開存の場合,カテーテル治療を考慮してもよい. IIb C動脈管は肺高血圧,肺血管閉塞性病変のため両方向性か右左方向で,酸素負荷,肺血管拡張薬に反応しない脈管開存の場合,カテーテル治療は行うべきではない. III Harm C