p.28 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン による閉鎖は,Amplatzer membranous VSD Occluderやほかのメーカーのmembranous VSD Occluder,コイルあるいは動脈管用閉鎖栓を用いた閉鎖が海外で施行されている125).合併症の頻度は比較的高く,Amplatzer membranous VSD Occluderでは,永久的なペースメーカが必要となった完全房室ブロックを2~4%に認めた.また,デバイス脱落(2%),大動脈閉鎖不全の増悪(9%),三尖弁閉鎖不全の増悪(9%)などの合併症の報告もある126, 127).近年のメタ解析では,膜様部VSDに対するカテーテル治療の成績として,成功率は97.8%,合併症の発生率は遺残短絡15.9%,不整脈10.3%,弁機能障害4.1%,完全房室ブロック1.1%とされている128).また,外科的閉鎖術とカテーテル治療を比較したランダム化比較試験では,両者の有効性と重篤な有害事象の発生率には差がなく,輸血回避率や入院期間などにおいてカテーテル治療が有益であったと報告されている129).なお,わが国では膜性部VSD治療用の閉鎖栓は未認可である. 筋性部VSDに関しては,外科的な閉鎖が困難で死亡率は0~17%と低くなく,再手術率も5~10%と高い130–133).欧米では,左室・左房に容量負荷がある筋性部VSDに対する経皮的またはハイブリッドアプローチによる経心室的カテーテル治療が積極的に施行されている134–137). 米国での閉鎖栓を用いた筋性部VSD閉鎖の基準は次のようになっている138).1体重が5 kg以上で心室中隔の形状が閉鎖に適している筋性部VSDの場合は,経皮的な閉鎖の適応となりうる.2体重が5 kg未満,あるいは心室中隔の形状が特異な場合は,手技またはデバイスに関連した合併症の危険性が高くなるため,外科的な閉鎖または経心室的なカテーテル治療を検討する. 除外項目はVSDから大動脈弁,肺動脈弁,僧帽弁,および三尖弁までの長さが4 mm未満,肺血管抵抗が7 U・m 2以上,敗血症,および6ヵ月以上抗血小板薬が使用できないことである. 合併症としては心停止,血圧低下,右室穿孔,大動脈弁損傷,三尖弁閉鎖不全,僧帽弁閉鎖不全,軽度の左室流出路狭窄の出現,デバイス塞栓,溶血,脳卒中・TIA,心室頻拍,房室ブロックなどが報告されている134).近年の米国における多施設研究では,経心室的カテーテル治療は併施する心臓手術がない場合では手技的成功率は100%であり,中期的な完全閉鎖率も90%と高く房室ブロックや有意な房室弁逆流の合併はなかったとされている16).わが国では筋性部VSD用の閉鎖栓も未認可である. VSDの閉鎖栓はわが国では未認可であるため,推奨レベルを呈示しない.米国での筋性部VSD閉鎖の推奨レベル139)を参考のために示す(表19).表19 米国における筋性部VSD 閉鎖の推奨(参考)と エビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 有意な左右短絡 *がある5 kg 以上の乳幼児,小児,成人において経皮的に筋性部VSD の閉鎖を考慮する. IIa B 有意な左右短絡の筋性部VSD と人工心肺を用いた治療が必要なほかの先天性心疾患を有する新生児,5 kg 未満の乳児および小児では,人工心肺中もしくは先行してハイブリッドアプローチにより経右室的に筋性部VSD のデバイス閉鎖を考慮してもよい. IIb有意な左右短絡がある筋性部VSD であっても,房室弁や半月弁と十分な距離がない場合は,デバイスによる閉鎖を行うべきではない. III時間経過で縮小が期待できる小~中サイズの筋性部VSD を有するが症状や肺高血圧の所見がない症例では,閉鎖を行うべきではない. III * Qp/Qs 2.0 以上または左室・左房の容量負荷があるもの. (Feltes TF, et al. 2011139)より作表) 1.4 動脈管開存症(表20) 動脈管開存症(PDA)のカテーテル治療は1967年に初めて報告されたが141),大径のシースが必要で,かつ手技が複雑であるため普及しなかった.Rashkindらが1979年にsingle-disk 142),1987年には改良されたdouble-disk 143)を用いた閉鎖術を報告して以来,普及するようになった.1990年代前半に,Gianturcoコイルを用いたPDAの閉鎖術が報告され144, 145),より細い5 Frカテーテルを用いて閉鎖が可能という点が画期的であった.その後,種々の閉鎖栓,閉鎖術が開発され,現在,わが国で使用可能なPDA閉鎖用のデバイスは,コイル,Amplatzer TM Duct Occluder(ADO), Amplatzer TM Duct Occluder II(ADO II),およびAmplatzer Piccolo TM Occluderである.PDAの形態分類には大動脈造影側面像を用いたKrichenko分類が広く用いられている(図3) 146).多くのPDA患児は乳児期から小児期に発見されて治療されるが,症状が比較的乏しいために成人期まで放置される症例や,成人期に初めて診断される症例もまれではない.とくに近年,高齢者心不全の原因としてPDAが散見されるようになった.高齢者のPDAはその形態や血行動態が小児期とは大きく異なり,カテーテル治療の適応に関して