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良好であるとは限らない.未治療でも20歳までの自然歴は比較的良好であるが,30歳を過ぎると生存率は低下してくる81).また,40歳以降には心房細動の頻度が増し,右心不全の原因となる82).肺高血圧を合併した例では,右心室に容量負荷と圧負荷が同時に加わる. これまでASDの多くは小児期に発見され,成人に達する前に治療される疾患と考えられていた.しかしながら近年,60~70歳になって初めて発見される例が数多く経験されるようになっている83).平均余命が伸びたこと,心エコーが広く用いられるようになり,軽症例が発見されるようになってきたためと考えられる.このため自然歴としては,これまでのように小児期に発見されて成人期まで移行した場合と,小児期には気づかれずに成人になって初めて診断された場合の2つを考える必要がある.とくに成人期に発見されるASDの自然歴に影響を及ぼす要因として考えられるのが,加齢に伴う左心室のコンプライアンスの低下であり,その結果,短絡量が増大する.治療適応を考慮する場合には,併存症の評価も重要である.60歳以上の患者では心房細動を高頻度に合併し,三尖弁閉鎖不全の頻度や重症度も上昇する.高血圧や虚血性心疾患のため左室拡張能が低下していると,欠損孔の閉鎖が病態を悪化させる可能性もある84). b. 臨床所見i. 症状 成人症例の診断の契機は,動悸・息切れといった一般的な症状である.さらに不整脈,脳梗塞,うっ血性心不全を発症して診断されるなど,心雑音や学校検診などで診断される小児期のASDの臨床像とは異なっている.成人例では動悸や息切れが長期にわたって持続しているために強い自覚症状に乏しく,閉鎖術後に初めて症状が改善したことに気づく場合もある85).特殊な病態として,臥位では無症状であるが立位を取ると高度の低酸素状態を呈するPlatypnea–Orthodeoxia症候群があり,高齢者に認められることが多い.ASD孔を閉鎖することによる低酸素血症の著明な改善が報告されている86, 87). ii. 身体所見 聴診所見ではII音の固定性分裂を聴取し,収縮期駆出性雑音を胸骨左縁第二肋間中心に聴取する.左右短絡が中等症以上で相対的三尖弁狭窄による拡張期ランブルを胸骨左縁下部で聴取することもある.肺高血圧から右心不全を呈している患者では,両下肢の浮腫を認める.しかし,欠損孔が小さい場合には雑音を聴取できない症例や,II音の固定性分裂がない症例も存在し,身体所見から診断に導くことは難しい. c. 検査所見 i. 心電図 多くの場合洞調律であるが,心房細動・粗動を合併している場合もある.左上大静脈遺残合併や静脈洞欠損では冠静脈洞調律(II,III,aVFでの陰性P波)を認めることがある.右軸偏位,(不)完全右脚ブロックは,比較的多くみられるQRS異常で,右室負荷所見がみられた場合はASDの可能性を考え,心エコー図での確認を行う必要がある. ii. 胸部X線検査 左右短絡を反映して肺動脈の拡大と心胸比の増大がみられる.側面像にて右室の拡大を認める.肺高血圧症合併例では肺野が明るくなる.短絡量が小さい症例では,心胸比も正常範囲であり,一般健康診断では見逃される可能性がある.しかし,心胸比正常でも左2弓は突出することが多く,見逃さないようにする. iii. 心エコー・経胸壁心エコー もっとも診断精度の高い検査法である.右心系拡大の有無,推定右室圧,心室中隔の奇異性運動,欠損孔と短絡血流を同定し,診断する.エコーによる肺体血流比の算出も参考になる.経胸壁心エコーで診断する場合,多断面でスキャンすることが重要である.傍胸骨短軸断面,傍胸骨四腔断面を基本断面とし,必要に応じて心窩部アプローチや右胸壁アプローチを用いることでより正確な診断が可能である88).ASDに合併する心内構造異常として左上肺静脈遺残と部分肺静脈灌流異常の合併には注意が必要である.上方静脈洞型欠損では部分肺静脈灌流異常を合併することが多く,経食道エコーや造影CTを行う必要がある.・経食道心エコー 経食道心エコーによる欠損孔の形態評価は非常に重要である89).なかでも欠損孔の最大径の計測と周囲縁の評価が重要である.大動脈周囲縁は治療の可否に関係しないが,上大静脈や左心房上縁が欠損する症例,下大静脈縁が欠損する症例,房室弁周囲縁の欠損する症例はカテーテルによる閉鎖栓の留置が難しく,手術を選択することがある.経食道エコーによる評価では,すべての周囲縁が5 mm以上ある症例は全体の約25%に過ぎず,約65%は大動脈側の周囲縁が欠損(5 mm未満)していると報告されている.一方,後下縁が欠損している症例もあるが,周囲縁の欠損領域が狭い場合にはカテーテル治療可能な場合が多い.三次元画像はカテーテル治療にきわめて有用である.とくに欠損孔が大きい症例や多発性欠損例では,デバイス選択などの治療戦略決定にきわめて有用である.