p.24 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン 体が前方に偏位し,一次中隔と二次中隔の整列不整(septal malalignment)を認める症例では,慎重に適応を決定する必要がある62). 一方,二次孔以外の欠損孔,二次孔欠損であっても肺静脈還流異常などの合併形態異常がある場合,デバイスが安定するための適切な辺縁が存在しない場合,38 mmを超える大きな欠損孔は,外科的修復術の適応となる.また,臨床的に有意な房室弁閉鎖不全が併存する場合にも外科的修復術の適応とされるが,これらの閉鎖不全はASDの閉鎖のみで改善する症例もあることから,適応に関しては議論がある. 適応を慎重に判断された二次孔ASDのカテーテル閉鎖術の成績は外科的閉鎖術に匹敵するという報告がある51, 52, 63, 64).カテーテル閉鎖術の合併症の頻度は低く,麻酔時間は短く,入院日数も短い.このため,多くの施設において形態的に適したASDでは,カテーテル閉鎖術が第一選択の治療法として用いられるようになっている. 1.1.4 治療成績およびリスクと合併症 手技的成功率はASOで97.9% 65),FF IIで98.2% 66)と高い.ASOとFF IIを比較した場合,FF IIのほうが手技は容易であり,手技時間も短いことが報告されている66–68).ただし,現時点では両閉鎖栓のあいだで有効性に差はないと考えられている.現在,国内では大動脈周囲縁が欠損している症例にはFF IIを選択されることが多くなってきている. 合併症としては,閉鎖栓の脱落,位置不正,感染,不整脈,タンポナーデや心侵食/心穿孔,房室ブロック,および空気塞栓,血腫などが報告されている59).米国のデータベースから推定されたカテーテル閉鎖術の死亡率は0.093%であり,米国胸部外科学会データベースによる外科的閉鎖術の死亡率0.13%と有意な差はないとされている69). ASOの主要合併症とされる心侵食と脱落の発生率はそれぞれ0.1~0.47%,0.55~1.76%とされてきたが59, 69–73),最近の米国での市販後調査では,心侵食は0.3%,脱落は0.2%とされている.また,術後の片頭痛の発生率は1.9%と報告されている65).JCICとCVITの集計による,わが国における2018年までの合併症発生率は,心侵食0.15%,脱落0.42%であった.わが国では治療関連死亡はないが,米国ではASO治療関連死亡26例の集計があり,その原因は心侵食50%,手技時の心穿孔15%,脱落11%,空気塞栓8%,血栓4%,その他12%となっている74). 心侵食の多くは,術後72時間以内に発生し,心嚢液貯留から心タンポナーデを生じる.このため術後数日は胸痛,息苦しさなどの症状に注意し,心嚢液の有無について心エコー図による経時的な評価が必要である.一方,閉鎖栓留 置後,数ヵ月から数年を経て発症する症例も報告されている.本合併症を発生するリスクの高い患者として,1欠損孔に対して大きすぎるデバイスを選択された例(欠損孔径の150%を越える閉鎖栓の選択),2大動脈側周囲縁の広範な欠損例,3心房中隔の偏位(malalignment)によりデバイスと心房壁さらに大動脈壁とのあいだの過度な圧迫が生じる例,が考えられている60, 62, 75, 76).このような症例では,閉鎖栓と大動脈壁との機械的摩擦によって穿孔が起こるのではないかと推測されている.国内の心侵食例について,リスク要因を検討した研究では,経食道心エコー図による留置直後のディスクが大動脈側の心房壁を圧迫する最大の深さが2 mmを超える場合は回収もしくはサイズを変更すべきとしている76). ASOとFF IIの心侵食の発生率の比較は行われておらず,デバイス間の差異について,現時点での評価は難しい.国内ではASO,FF IIともに心侵食が報告されており77, 78),いずれを選択する場合でも,慎重な形態評価と長期にわたる経過観察が必要である. 一方,閉鎖栓の脱落は,ほとんどが術中もしくは術直後に生じる72).このため術後の心エコー評価,および心電図モニタリングを行うことが推奨される.閉鎖栓が比較的小さい場合,もしくは脱落部位が経皮的に回収可能な部位にある場合(右心房,肺動脈,大動脈など)には経皮的な回収が行われる.閉鎖栓の右房側ハブをスネアで捕捉し,経皮的に回収することが可能である79).閉鎖栓が大きい場合,あるいは左心室,右心室内など経皮的な回収が難しい場合には外科的開胸術による回収が必要な場合がある. 1.1.5 小児 小児においては,大欠損で症候性の場合は乳幼児期に外科的閉鎖術が施行される場合が多い.カテーテル治療の大半は長期予後を考慮した待機的治療であるため,一般的には体重が15 kg以上の症例を対象とする.待機することによる不利益が大きい症例では,2歳未満でも可能ではあるが,アクセス血管径の問題や経食道エコーでの詳細な評価がやや困難であることから,慎重な適応判断が求められる. 1.1.6 成人 a. 病態生理 成人の先天性心疾患でもっとも多くみられる疾患であり,40歳以上の先天性心疾患の約35~40%を占める80).幼小児期に自覚症状を伴うことは少なく,成人期までほとんど無症状に経過する.しかし,その生命予後は必ずしも