GL検索 v0.1.0
画像は 22 ページを描画したものです
page 22

p.22 抽出テキスト

先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン

1.1.1 背景

心房中隔欠損症(ASD)は先天性心疾患の7~13%を占め,成人で発見される先天性心疾患のうち,大動脈二尖弁を除くともっとも多い疾患である.約2:1で女性に多い.二次孔欠損がもっとも多く,ほかに一次孔欠損,静脈洞欠損,冠静脈洞欠損がある(図1).無治療で放置した場合,右心不全,不整脈,肺高血圧症を合併する.二次孔欠損においては2005年からわが国に導入された経皮的ASD閉鎖術が外科的閉鎖術と並ぶ標準的治療となっている51-53).

1.1.2 カテーテル治療

二次孔ASDのカテーテル治療は1976年にMillsとKingによって初めて報告され,径26 mmまで5例の欠損孔を二枚傘の閉鎖栓で閉鎖した54).その後27年にわたる経過観察では,4症例で遺残短絡や合併症のない生存が確認されている55).MillsとKingの閉鎖栓は,太いデリバリーシステムと閉鎖栓の扱いにくさのため普及しなかったが,その後,さまざまな改良が加えられた閉鎖栓が考案され,1997年のAmplatzer Septal Occluder(ASO)の登場によって広く普及した56).

わが国ではASOは2005年に認可された.径6 mmから38 mmの閉鎖栓まで使用できる.デリバリーケーブルからの離脱前であれば閉鎖栓の位置修正や回収が可能である.また,コネクティングウエスト径が4 mmと細い多孔性欠損用の閉鎖栓もある.2016年には,わが国で第二の閉鎖栓となるFigulla Flex II(FF II)が導入された.基本構造はASOと同じだが,左房ディスクの中央にハブがないことと,ワイヤがまばらであることから,左右のディスクが開きやすい特徴がある.また,ケーブルとディスクに50度までの

傾斜が可能である.径は6 mmから36 mmまでである.

わが国では,ASDのカテーテル治療は施設基準を満たした施設で,術者基準を満たした医師が,日本先天性心疾患インターベンション学会(JCIC,旧称: JPIC)と日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)の定める教育プログラムを受けた場合のみ使用できる(表16,表17) 57).

わが国に導入された2005年から2018年末までにメーカーおよびJCICとCVITによる集計で,10,999例のデバイス植込みが行われた.近年では,毎年1,200例程度で推移している.現在,わが国で使用できる治療機器は上記の2種類のみであるが,欧州やアジア諸国では数種類の機器が市場に出回っている.図2に実際の手技の流れを示す.

1.1.3 適応

2012年の日本小児循環器学会とJCICによる「先天性および小児期発症心疾患に対するカテーテル治療の適応ガイドライン」1)では,解剖学的に適する二次孔ASDであって血行動態的に有意なもの(右心系の容量負荷所見,右心不全,右心系の圧上昇),右左短絡による奇異性塞栓症の二次予防,右左短絡によるチアノーゼ症状を閉鎖の適応としている.

従来,成人においては,肺体血流比が1.5~2.0以上の場合を適応としてきたが,日本循環器学会の「成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版)」53)によれば,症状の有無,欠損孔の大きさ,肺体血流比によらず,右室の容量負荷(右室拡大)が認められる場合,心房由来の不整脈を併発している場合,ASDによる奇異性塞栓症の発症例,または体位変換性低酸素血症(platypnea-orthodeoxia)が証明された,肺血管抵抗5 Wood単位以下の症例を適応としている.小さな欠損孔の場合でも,成人期に奇異性塞栓をきたす症例や,心房性不整脈を合併し心不全へと進行する症例があるため,個々の病態に応じて有用と判断される場合には閉鎖を試みる価値がある.

解剖学的には38 mm未満の二次孔欠損かつ大動脈周囲縁を除く欠損孔辺縁が5 mm以上である場合が適応とされている.ただし,欠損孔の約60%は大動脈周囲に位置しており,大動脈周囲縁に関しては5 mm未満であっても適応から除外されない58).さらに下方,後方,上方の辺縁欠損例に対する治療成功の報告もある59).欠損孔が複数存在する場合も複数個の閉鎖栓の留置例が報告されている.大動脈周囲縁が乏しい症例に心侵食(閉鎖栓による穿孔)が多いことも報告されているが,両者の因果関係はいまだ不明である60, 61).少なくとも大動脈周囲縁が広範に欠損して

いる例,大動脈周囲縁が完全に欠損している例,大動脈自図1 ASD の種類

SVC

IVC TV

a b

c d e a: 二次孔欠損

b: 上位欠損c: 下位欠損d: 冠静脈洞欠損e: 一次孔欠損

SVC:上大静脈,IVC:下大静脈,TV:三尖弁