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先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン 変(shaggy aorta)を有する症例では,全身性塞栓症やコレステロール塞栓症の高リスク群となる.コレステロール塞栓症は40歳以上を対象とした心臓カテーテル手技の0.8%に発症するという報告もあり,予後不良である41). 脳梗塞も重大な合併症である.空気塞栓や血栓塞栓,コレステロール塞栓に代表される動脈原性塞栓,心房細動による心原性血栓塞栓,周術期の一過性血圧低下や低心拍出による脳低灌流,術後安静によって生じる奇異性塞栓等があげられる.長時間の手技により生じたカテーテル内の血栓を飛散させて生じる医原性塞栓や,ヘパリン起因性血小板減少症等にも注意を要する.TAVI施行時の重篤な脳梗塞の合併は1.7%と報告されており39),TEVARにおける脳梗塞は2.5~2.8%と報告されている42, 43).空気塞栓は動脈系アプローチでも発症するが,静脈アプローチの治療においても発症することがある.MitraClip ®や左心耳閉鎖などをはじめ,大口径シースの左房内の手技ではbelow zeroでのカテーテル操作の原則を忘れずに,water sealにてデバイスやカテーテルの挿入を行わなくてはならない.今後は経皮的僧帽弁植込み術,経皮的三尖弁形成術といった新たな治療もわが国で導入予定であり,肺への空気塞栓も防止しなければいけない.鎮静が過剰であったり,睡眠時無呼吸の既往がある患者では,急激な吸気とともに胸腔内が急激に著しい陰圧となることから,大口径シースの取り扱いには十分な注意が必要である. 閉鎖栓を用いた治療は,ASDや卵円孔開存(PFO)といった心房中隔の閉鎖治療だけではなく,今後は心房中隔に孔を開けるシャント作成術や心室中隔欠損(VSD)の治療においても応用されるであろう.こうした治療では,心侵食といった重大合併症のほかに房室ブロックや心機能低下症例での致死性不整脈発生も念頭におかなければいけない.経皮的弁周囲逆流閉鎖術では複数回の開心術を経験した症例も多く,血行動態が破綻した際には速やかにIABPやPCPSといった補助装置の使用や緊急開心術の決断を行う必要がある.また,溶血の悪化や機械弁のスタックも重要であり,デバイスの経皮的あるいは外科的抜去も念頭におかなければいけない. 心タンポナーデは心室内にガイドワイヤーやペーシングカテーテルを挿入する場合にも発生するが,心房中隔穿刺や経皮的左心耳閉鎖術の際の左心耳壁穿孔からも生じうる.これらの手技で血圧低下を認めたら,直ちに心タンポナーデを疑い,適宜ドレナージを行いつつ,その血液をシースから体内に戻す自家輸血が有用である. 放射線皮膚障害はカテーテル治療が長時間におよぶ場合は留意する.3 Gy以上5 Gy未満(レベル2)では, 一過性の脱毛,発赤,びらんが生じる可能性を説明し,被ばく線量と部位を診療録に記載する44).通常は患者本人が見 えにくい背中等に,数週間後に皮膚障害が生じるために患者家族や外来担当医にも説明し,観察を行ってもらう. 薬剤によるアナフィラキシーショックは常に起こりうる.血管造影室内には,アナフィラキシーショックに対応するのに必要な薬剤を準備しておく必要がある.造影剤アレルギーの既往のある患者では,前日からのステロイド投与(13,7,1時間前に0.5~0.7 mg/kgのプレドニン投与)と,手技1時間前の抗ヒスタミン薬投与が推奨されている45).また,手技後にプロタミンにてヘパリンを拮抗する場合の合併症としてプロタミンショックは有名であるが,プロタミンを含有する中間型インスリン製剤を使用している糖尿病患者では,アレルギーリスクが高いことが報告されており注意を要する. 高齢者や慢性腎臓病(CKD)を併せ持つ成人患者では造影剤起因性腎症も重要な合併症である.これは造影剤使用後早期にみられる急性腎障害で,一般的に可逆性である.リスクファクターとして,慢性腎臓病や糖尿病性腎症,造影剤の過量があげられる.予防法として,造影剤の減量,手技前からの生理食塩水や炭酸水素ナトリウムの輸液が推奨されている.また,CKD症例での治療後に行う予防的血液透析の有効性は確立されていない. また,悪性腫瘍合併例,血栓性素因を有する症例,静脈血栓症の既往を有する症例では,手技後の安静臥床に起因する深部静脈血栓症,肺塞栓症にも留意する必要がある.第2章2.のポイント 経験症例数が増え習熟するとともに合併症は減少し,症例数の多い施設では入院中の死亡率が低いことが知られている.TAVI,TEVAR,ASD/PFO閉鎖術等では,術者が習熟するまでのあいだ,院外から指導医が立ち会い実際の手技をサポートするプロクタリング制度が確立している.ほかの手技においても,経験症例数の少ない術者が施行する際には,経験の多い術者が適切に補佐する体制の構築が望まれる.