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p.119 抽出テキスト

左房に至る経路に屈曲や偏位が存在する場合. 4上行大動脈が著しく拡張した症例. 5胸縦隔腫瘍や大量の心嚢液により,心房が周囲から圧

迫されている症例. 6巨大右房のため,心房中隔穿刺点の偏位が著明な症例.

a. 心嚢液貯留

不適切な位置での穿刺,すなわち心嚢腔や大動脈壁や冠状静脈洞の誤穿刺,または心房中隔解離が心外膜に及ぶ際に生じる.心タンポナーデを生じる血行動態上有意なもの,また心嚢腔内出血は認めるものの血行動態上温存されているものの双方を合わせて,3.2%に心嚢液貯留が認められていると報告されているが,穿刺困難例でその発生率が高くなる.

穿刺針の先端部のみによる穿刺に留まる場合には,心タンポナーデに至ることはきわめてまれである.ただし,この段階で適切に誤穿刺が認識されることなく,ダイレーターが挿入されると急速に心タンポナーデ発生が生ずる.巨大右房症例においては,右房からいったん心嚢腔に抜けて左房にエントリーするために,デバイスの抜去後に初めて発症する.

早期診断,抗凝固薬の中和,必要に応じて迅速かつ的確な心嚢ドレナージにより対応するが,ダイレーターまたはシース挿入例では,穿通孔の自然閉鎖が困難となり,外科的処置が必要とされることが多い. b. 血栓・空気塞栓症

冠動脈や脳血管への塞栓症を生じることがある.迅速に穿刺術を完了して適切な抗凝固療法を行い,穿刺針とダイレーターを的確なタイミングで十分にフラッシュ操作することにより,血栓形成を予防する.施術中,穿刺針先端の圧力を注意深くモニターして,圧波形の鈍化がみられたときには,血栓形成を見逃さないようにする.また,穿刺針がダイレーター内に収まっている段階では,針先端から空気を吸引することがあるので,フラッシュの際には吸引を避けるようにする.左房内にカテーテルやシースが挿入されたのちは,システム内への気泡の混入に十分注意する.ペースメーカーリードが挿入されている症例では,同部位に付着した血栓の可能性に注意し,また左房内血栓の有無を術前エコーにより除外しておくことが重要である. c. 術後ASDの残存

術後に有意なASDが残存する可能性がある.その因子として,菲薄な心房中隔,多数回の穿刺,デバイスの径,術中の機械的ストレスの程度,さらに左房圧上昇などが含まれる.すべての症例において,施術を完了してデバイス

7.1.8 合併症994-996)を抜去したのちに,残存した心房中隔シャントを介した塞

栓症発症のリスクを念頭に入れる必要があり,デバイス抜去後の右房内や大腿静脈におけるフラッシュ操作には,細心の注意を払う必要がある.

7.2 小児の心房中隔穿刺術(表99)

左心系の診断や治療のためのルートが必要な場合は適応となる997, 998).左心系へは大動脈から逆行性に到達する方法もあるが,右房からの心房中隔穿刺のほうが,メリットがある場合や,心房中隔穿刺でしか左房に到達できない場合にリスクを考慮したうえで適応を決定する.適応となる疾患,病態を表100に示す997-1001).小児の心臓は非常に柔らかい一方で,疾患によっては心房中隔が非常に厚く穿刺しにくいこともある.先天性心疾患では,心房,心室,大血管の位置が通常と異なることが多いので,注意が必要である.

穿刺針には,小児用(62 cm)と成人用(72 cm)とがあ

7.2.1 適応

7.2.2 手技

表100 小児および先天性心疾患における心房中隔穿刺術

の適応1. 電気生理学的検査,カテーテルアブレーション1)正常心の左房起源不整脈2)Fontan術後の左房起源心房頻拍3)Mustard術後,Senning術後の左房側の頻拍2. 左心低形成症候群術前で,心房間交通狭小化3. 完全大血管転換症術前で,心房間交通が閉鎖4. 先天性僧帽弁狭窄症に対するバルーン形成術5. 大動脈弁狭窄や大動脈縮窄に対するバルーン拡張術を順行性に行う6. 大動脈弁人工弁置換術後,左室圧を測定7. 肺静脈圧,肺静脈楔入圧の測定8. 肺静脈楔入造影(肺動脈を逆行性に造影する) 9. 肺静脈狭窄に対するカテーテル治療

表99 小児に対する心房中隔穿刺術の推奨とエビデンスレ

ベル

推奨クラスエビデンス

レベル

左心系の診断や治療のためのルートが必要な場合,心房中隔穿刺は有用な方法である.小児の場合,体格が小さく,先天性心疾患では心房,心室,大血管の位置が通常と異なることが多いため,経験ある術者によって,十分な合併症対策を講じたうえで心房中隔穿刺を行う. I C