p.114 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン 併しやすいことが知られており948),心臓CTで計測される左室内弁下組織異常の体積が大きいほど薬剤抵抗性の左室流出路閉塞をきたしやすいことが報告されている949).左室内構造をより明確に視覚化するために,心臓CTの情報から3Dプリンターを用いて心臓モデルを作成する試みも始まっており,外科的心筋切除術とPTSMAの治療法選択,ならびに心筋切除術前のシミュレーションに活用する報告がなされている950, 951).心臓CTは,冠動脈と心筋の両者を同時に描出することができるため,中隔枝と栄養されている心筋の関係性をある程度明らかにすることができる.この観点から,心臓CTは,手技前に可能な限り施行すべきであると考える.具体的にPTSMA施行前に心臓CTを行う利点としては,以下の3点があげられる. 1標的中隔枝の支配領域の大体の把握が可能であるこ と. 2標的中隔枝の派生元の冠動脈からの分岐角度の把握 が可能であること952). 3標的中隔枝が,左前下行枝以外から派生している可 能性につき知ることができること. b. 手技中・選択的心筋コントラストエコー法 PTSMAの実施には,閉塞の原因となる中隔心筋を同定することが必須である.1990年代には,近位部中隔枝を1本ずつバルーンで閉塞し,圧較差の軽減をみて有効かどうかを決めたが,判別困難な場合が多い.Faberらにより心筋コントラストエコーが治療の効果と合併症の軽減に有用と報告され,PTSMAは安全に実施できる治療として確立された953).当初,選択的心筋コントラストエコーには,コントラスト剤のレボビストが用いられたが,2012年に欧州での製造が終了し,現在は膠質液やヨード造影剤が撹拌され用いられている.2014年ESCガイドラインでは,選択的心筋コントラストエコーの併用がクラスIで強く推奨されている932).当該部位を灌流する中隔枝を,心エコーと冠動脈造影所見より推定し,選択的心筋コントラストエコー法により最終的に同定するという手技は,治療成績の安定化および合併症(不適切な領域へのエタノール注入,たとえば右室自由壁や乳頭筋など)の回避に大きく寄与する930, 954, 955).選択的心筋コントラストエコーで確認した領域へのエタノール注入により,標的心筋は少しずつ白染化する.エタノールの白染は一様となるように行い,領域内は可能な限り徹底した焼灼とする. 1選択的心筋コントラストエコー下で手技を行う. 2一時的ペースメーカを留置して手技を行い,最短でも 6.1.7 手技上のポイント48時間は留置する. 3オーバー・ザ・ワイヤバルーンは,血管造影上で推測 した中隔枝径より若干大きめのサイズを選択する. 4エタノールはかならず緩徐(毎分0.3 mL以下)に注入 し,冠動脈中隔枝の灌流範囲により1.0~2.5 mL/枝を基本とする.注入速度が速いと生理的血管床を超えてエタノールが流出し,後述する合併症発生の要因となる. 治療のエンドポイントについては,左室流出路閉塞症例の場合,治療前に比べて50%以上の圧較差の減少956),終了時点での安静時圧較差が10 mmHg以下かつ誘発時のピークの圧較差が治療前と比べて80%以上減少957, 958),持続的な完全房室ブロックを認めた場合などがあげられているが,統一した見解はない.手技終了時に,安静時圧較差はできるだけ低く,誘発時も30 mmHg以下であり,SAMが消失していることが理想的である.しかし,左室内腔の狭い症例では,閉塞心筋の収縮が無収縮となってもSAMは必ずしも消失しないことがある.その場合,治療直後には圧較差は十分に減少せず,焼灼部の縮小まで待つ必要がある.エタノール焼灼により心筋は凝固壊死となり,病理組織的には虚血心筋壊死とは異なるが,不十分な焼灼は灌流域に生存心筋が残存する可能性があり,致死的不整脈発生の原因となりうる.そのため,合併症を防ぐという観点からも,閉塞責任領域の中隔壁焼灼は心エコー観察下に徹底して行い,エタノールにより標的域が一様に濃く白染するまで行うべきとされる.隣接する複数枝の焼灼では,焼灼領域が術前に目的とした焼灼標的域を焼灼できれば手技を終了する.なお,左室流出路閉塞とは違い,中流部閉塞はSAMを伴わない閉塞であり,手技直後は十分な圧較差の減少が得られないことがある.したがって,治療のエンドポイントは,あらかじめ目的としていた領域を焼灼できれば終了とする.なお,有意な閉塞解除には,手技後6 ~12ヵ月を要することも多い. 治療成績は欧米からの報告が多く930),症例数は報告によりばらつきはあるものの,多くても600~700症例,観察期間は長くて10年である.新規に恒久的ペースメーカ挿入が必要となる率は,10~30%,院内死亡率は1~2%,再度PTSMAが必要となる率は5~15%,5~10年生存率は80~95%であった935, 956, 959-966).2016年に,欧州の7ヵ国,10 の3次医療機関で,1996年から2015年のあいだにPTSMAを施行された1,275症例が登録された,Euro- 6.1.8 治療のエンドポイント 6.1.9 PTSMAの治療成績927)