p.113 抽出テキスト
については,peak LVOT PGが50 mmHg以上あったとしてもSRTの適応とはならない.最適な薬物療法が行われており,かつNYHA心機能分類III度以上の心不全症状,繰り返す労作時の失神などを認める場合はSRTの適応と考える. 上記のi,ii,iiiの条件を満たした場合,SRT,すなわち中隔心筋切除術あるいはPTSMAを考慮する. PTSMAの適応を考える際には,まず,中隔心筋切除術の適応を考える.開胸にて同時に修復できる併存心疾患がある場合は,中隔心筋切除術を選択する.本ガイドラインにおける,中隔心筋切除術を積極的に考慮すべき症例についての記載は,2014年版先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患に対するカテーテル治療のガイドライン2)を踏襲した.詳細は次のとおりである. 1外科治療を要する左室流出路または僧帽弁腱索複合 体の構造的異常を有する症例. 2外科治療を要する器質的大動脈弁または僧帽弁疾患 を合併している症例. 3上記1,2を除く閉塞性肥大型心筋症で,とくに若 年・青壮年の症例. 4閉塞を生じる心室中隔局所の壁厚が30 mm 以上の閉 塞性肥大型心筋症の症例933). 5PTSMAによる中隔縮小効果が不十分な症例.僧帽弁腱索複合体の構造的異常の有無につき確認することは,SRTを実施するうえで非常に重要な点であり,経胸壁および経食道心エコー,心臓CT,心臓MRIなどのさまざまな画像モダリティを用いて確認する934).なお,冠動脈の解剖上PTSMAに不向きな症例(PTSMAの適応と判断し,PTSMAを試みた際にガイドワイヤにより標的心筋を灌流している中隔枝が選択できない,ガイドワイヤによる選択が可能でもオーバー・ザ・ワイヤ[OTW]バルーンが通過せず中隔枝をバルーンにより閉塞できないなど)があり,そのような症例は,PTSMAが施行できず,中隔心筋切除術が選択される. b. 年齢 前述のとおり,若年者に対しては,中隔心筋切除術を施行するべきと考えるが(併存疾患などで開胸手術が困難など特別な状況でない限り,PTSMAを治療の選択肢として考えるべきではない),中高年に対しては,はっきりとした年齢での線引きがあるわけではない.過去の文献に基づいて65歳未満は中隔心筋切除術,65歳以上は両者いずれも選択可能という意見935)もあるが,最近では50歳以下の症例においてもPTSMAの成績は容認できるという報告936)もあり,40歳以上の症例については,単に年齢だけではなく症例ごとに背景因子やさまざまな検査所見(経胸壁あるいは経食道エコー,心臓CT,心臓MRIなど) 937 -939)をふま えて,循環器内科医,心臓血管外科医などで構成されるハートチームで議論し,どちらが当該症例にとって有効な治療かを検討するのが望ましい. c. 術者経験 PTSMAは,ほかの侵襲的治療同様,経験により治療成績が左右される940).PTSMAの適応となる症例は,重症の心不全症状などを伴っており,臨床的に状態不良の症例が多い.そのため,安全かつ確実で長期間にわたって効果が持続する結果を求められる.長期予後を改善する有効な治療を行うには,肥大型心筋症の病態,診断および合併疾患に精通している必要があり,安易な手技は慎むべきである. ACC/AHAガイドライン2011において,経験のある術者とは,20例以上の第一術者としての経験があり,50例以上の治療経験のある施設で手技に携わっていることと定義されている.ACC/AHAガイドライン2011 931),ESCガイドライン2014 932),2014年版先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患に対するカテーテル治療のガイドライン2)および2018年改訂版日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン心筋症診療ガイドライン927)ではクラスIとして931, 932),経験のある術者により施行されるべき,とする記載があることを明記しておく. a. 手技前i. 心エコー PTSMA施行にあたっては,術前に焼灼予定となる中隔心筋領域を同定し,僧帽弁前尖の収縮期前方運動(SAM)による僧帽弁閉鎖不全症の程度などを把握しておくことが重要である.高齢者においては,閉塞性肥大型心筋症に大動脈弁狭窄を合併する場合があり,SRTの適応を判断するうえで圧較差の評価には注意が必要である. ii. 心臓MRI 経胸壁および経食道心エコーと比べて,僧帽弁前尖のSAMと弁下部の状態の描出に優れている.中部心室の肥大に関連した心室中部閉塞性肥大型心筋症も同様に評価が可能である.心エコー検査で識別できない肥大部位の識別や僧帽弁や乳頭筋の構造的異常を明らかにすることが可能なことがあり,SRTの適応を判断する際には禁忌でない限り,心臓MRIを行うことが推奨される941-943). iii. 心臓CT 心臓CTの解像度が飛躍的に上昇し,中隔枝の評価を行うことが可能となり,2008年以降,PTSMA施行前の心臓CTの活用法につき,多くの検討がなされてきた937, 944-947).閉塞性肥大型心筋症では,僧帽弁腱索複合体の異常を合 6.1.6 手技前および手技中の画像評価