p.110 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン なっている922).内経静脈または大腿静脈より6~7 Frのガイディングカテーテルを肺動脈まで進め,0.014インチのガイドワイヤにより病変を通過,バルーンカテーテルで開大するのが一般的である.治療の成功率は病変形態に左右され,ワイヤなどによる血管損傷が治療中の主たる合併症である923).治療後病変は時間経過とともに自然に開大することが多く,ステントの留置は通常不要である.1病変に関してみるともっともシンプルな血管形成術であるが,程度の差こそあれ全18の肺動脈区域枝のほぼすべてに病変が存在するため,BPAの最低限の治療ゴールである「血行動態の正常化(平均肺動脈圧25 mmHg未満)により右心不全の発生を防ぎ,生命予後を改善すること」を達成するためには,この治療手技を反復して行わなければならない.一度の治療ですべての病変を治療することは困難で,治療を完結するためには1症例あたり通算4~6回の施行を要する. 初期の報告では,術後再灌流性肺水腫が60%と高頻度にみられたとされていたが917),現在では,これら術後合併症の多くは治療に伴う血管損傷に基づく肺障害と考えられている924).肺障害の発生は経験症例数の増加のみでも減少するが917, 921),先端荷重の低いガイドワイヤや血管径に比べて小径のバルーンを使用することにより,最近の報告では,10%程度とさらに減少傾向にある921).わが国のレジストリでは,BPAによる血行動態の改善,運動耐容能の改善はPEAに匹敵するほどで,半数以上の例で血行動態の正常化が得られている925).海外からの報告でも,安全性は確立されており,効果も症例数の増加とともに改善しつつある921).5年までの生命予後も良好であることが知られているが919),10年以上の長期生存に関してはいまだ歴史が浅いため不明である. BPAは広く全国で行われているが,依然として治療手技は施設ごとに異なり,その標準化に関して今後の検討が必要である.また,BPA適応の根拠たるPEA適応の客観的な判断基準に関しても,いまだ確立はしていない.BPAの安全性・有効性は実施施設・実施医の経験により支えられているが,CTEPHは希少疾患でありBPAの十分な経験を積むことは容易ではない.元来,慢性疾患である本症に対して緊急治療が必要となることはまれであり,十分な経験のある施設・医師における実施が望ましい.この観点から,日本循環器学会はBPA指導施設・実施医・指導医の認定を行っている926). 5.3.2 合併症と治療成績 5.3.3 まとめ6.1 経皮的中隔心筋焼灼術(表96) 肥大型心筋症は,一般成人の約0.2%に認められる遺伝性疾患である.日本循環器学会/日本心不全学会の心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版) 927)では,図22のとおりに定義されている.肥大型心筋症類似の形態を示す,ファブリー病やアミロイドーシスは,疾患特異的な治療が可能であり,肥大型心筋症の診断には,二次性心筋症の除外が重要である. 肥大型心筋症の表現型による分類を表97に示す927).肥大型心筋症のうち,安静時に30 mmHg以上の左室流出路圧較差を認める,あるいは安静時の左室流出路圧較差は30 mmHg未満であるが,誘発時に30 mmHg以上の圧較差を認める場合に閉塞性肥大型心筋症と分類される.また,左室の誘発性閉塞の定義を表98に示す. 心エコーを行う際にバルサルバ負荷をかける,半仰臥位,座位,立位での評価を行う.有症候性であり,前述の誘発で左室流出路閉塞が確認できない場合は,エルゴメーターなどを用いて運動負荷心エコーを行う.また,心臓カテーテル検査では,MTAKAカテーテルを左室内に,もう1本のカテーテルを上行大動脈に留置し,peak to peakの圧較差を測定する.その際に,バルサルバ負荷,PVCによる誘発,ニトログリセリン注などにより誘発による圧較差の有無を判定する. 経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)は,閉塞性肥大型心筋症あるいは心室中部閉塞性肥大型心筋症を対象にカテーテルを用いて行う手技である.具体的には,有意な圧較差を生じる原因となっている肥大心筋を灌流する冠動脈(多くは左前下行枝から分岐している中隔枝)を介してエタノールを注入し,肥大心筋の菲薄化により最終的に圧較差の軽減を図る.1995年に,Sigwartが初めてPTSMAの3例を報告した928).Sigwartの発表に先駆けて,1980年代に閉塞性肥大型心筋症の心筋梗塞合併症例で圧較差が消失 6 心筋症 6.1.1 肥大型心筋症の定義と閉塞性肥大型心筋症 6.1.2 誘発性閉塞の診断法 6.1.3 PTSMA