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p.109 抽出テキスト

てはならない906).一般的合併症として,血管壁損傷,末梢塞栓,血栓症再発,外傷性溶血,血液損失などが起こりうることを熟知しておく必要があり,カテーテル挿入部位の大出血は2%(348例中8例),右室穿孔は0.3%(348例中1例)と報告されている905).

最新のメタ解析では,臨床成功率86.6%,重篤な合併症率2.4%と報告されている907).また,3年にわたる101例の前向き登録研究でも,臨床成功率は94%,平均肺動脈圧(mmHg)は51.17から37.23に低下し,手技に伴う大出血はみられない908).

2016年のACCPガイドラインでは,カテーテル的血栓除去術(CBTR)は,重症患者に限って熟練した専門施設で施行することが推奨されている(Grade 2C) 903).一方, 2014年のESCガイドラインでは,高リスク群で血栓溶解療法が禁忌・無効な患者における外科的血栓摘徐術の代替治療として推奨されている(クラスIIa,レベルC) 904). i. 血栓吸引術(aspiration thrombectomy)

Greenfield embolectomy デバイスは,米国では認可されているが,わが国ではまったく使用されていない.これに対し,ガイディングカテーテルを用いた血栓吸引療法に関するまとまった報告があり,その簡便性と良好な結果から注目を集めている909).一方,肺動脈にも応用されている経皮的血栓除去用カテーテルは,通常0.014インチ・ガイドワイヤに沿わせて使用できるため安全性は高いが,一方で,吸引ルーメンが小さく吸引能は落ちる.Indigo ®, FlowTriever ®,AngioVac ®などのsuction thrombectomyも注目されてきているが,わが国では未導入である. ii. 血栓破砕術(fragmentation)

末梢側肺動脈総容量は中枢側の2倍以上存在するということを理論的根拠として,中枢側肺動脈内の塊状血栓を直接破砕し,末梢に微小血栓を再分布させる手技である901).血栓は回収されないが,砕かれて小さくなれば総表面積は増えるため,血栓溶解薬の効果も増強する.以前よりさまざまな血栓破砕用デバイスが開発されてきているが901, 905, 906),実際には,ピッグテイルカテーテルを回転させることにより塊状血栓を破砕し,末梢に離散させる方法910)と,バルーンカテーテルにより塊状血栓を押しつぶす方法が用いられている.手技に伴う遠隔塞栓に対しては,ガイディングカテーテルや特殊なデバイス(Aspirex)を用いた血栓吸引術を追加するハイブリッド治療が提唱され,これが標準術式と評価されている906, 911). iii. 流体力学的血栓除去術(rheolytic thrombectomy)

AngioJet TMなどがこれにあたるが,現在わが国で使用できるデバイスはない. 5.3 CTEPH(表95)

急性肺塞栓症例の3.8%では,血栓が器質化して残存し,肺動脈の狭窄・閉塞を広範にきたし肺高血圧症を呈するようになる912).これは慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)とよばれ,有効な治療なしでは長期生存は望めない913).病変の主座が区域動脈またはそれより近位にある,いわゆる中枢型CTEPHに対しては,超低体温循環停止による肺動脈血栓内膜摘除術(PEA)が標準的治療として確立している914).病変の主座が区域動脈の遠位側にある,いわゆる末梢型に対しては,可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤であるリオシグアトが2014年1月より保険承認となっている.リオシグアトは,末梢型CTEPH患者の血行動態・運動耐用能を改善することが,前向きの二重盲検試験で確認されているが915),その改善程度はPEAに及ぶものではない.

2001年に,末梢型CTEPH患者18例のバルーン肺動脈形成術(BPA)の結果が米国から報告された916).右心不全による死亡1例,術後肺障害11例(うち3例で人工呼吸器管理)と手技に伴う合併症が高率である.一方で,十分な肺動脈圧の低下が得られず(術後平均肺動脈圧33.7±10.2 mmHg),その後,欧米では普及するに至らなかった.わが国では手術適応のない末梢型CTEPHの頻度が高いこと,有効な薬物治療が存在しなかったことから,2004年頃からBPAの治療手技や術後管理の改良が試みられ917),技術的な進歩に加えて病変性状や合併症発生メカニズムに関する知識の集積により,2012年以降になって本手技の有用性と安全性が向上・普及し918, 919),世界的にも脚光を浴びるようになってきた920, 921).

BPAの対象となるのは,1PEAの施行困難例,またはPEA後の遺残肺高血圧症例,2内科的治療を行ってもNYHA心機能分類とWHO肺高血圧症機能分類III度以上の自覚症状を有する,3病状およびリスク・ベネフィットを十分に説明したうえで本人および家族がBPAを希望している,4重度の多臓器不全を有さないCTEPH症例,と

5.3.1 適応と治療手技

表95 慢性肺血栓塞栓症に対するカテーテル治療に関する

推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

末梢型CTEPHに対し,循環器学会認定BPA実施医によりBPAを行う. I C