p.108 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン rt-PA投与は,末梢静脈投与群と治療効果に有意差はみられなかった900).したがって,現在では単にカテーテルを肺動脈に誘導し,血栓溶解薬を局所投与する方法は否定的で,パルス・スプレー法などの併用が不可欠である.米国で推奨されている薬剤投与量は以下のとおり. i. ウロキナーゼ ヘパリン2,000単位とともに,25万単位/時を2時間で投与し,その後10万単位/時を12~24時間持続投与する. ii. rt-PA ボーラスで10 mg投与したあと,20 mg/時を2時間で投与するか,100 mgを7時間かけて持続投与する. このように,米国ではわが国の5~10倍量である901).最近,脳出血などの重篤な出血性合併症への反省から,投与量を半量以下に抑える動注法や,超音波による血栓溶解増強を併用する試みも発表され,成果を得ている902).現在,わが国で承認されている血栓溶解薬はモンテプラーゼ(mt-PA製剤)のみで,静脈からの全身投与が想定されている. 2016年の米国胸部医学会(ACCP)ガイドラインでは,血栓溶解薬は肺動脈に留置したカテーテルからでなく,末梢静脈から投与することが推奨されている(Grade 2C) 903).一方,2014年のESCガイドラインでは,血栓溶解療法による出血の危険が高い中リスク群患者に限って推奨されている(クラスIIb,レベルB) 902, 904). b. カテーテル的血栓除去術(CBTR) 血栓溶解療法以外のカテーテル治療は,血栓吸引術(aspiration thrombectomy),血栓破砕術(fragmentation),流体力学的血栓除去術(rheolytic thrombectomy)の3項目に分けるのが一般的で,これらのほとんどが血栓溶解療法を併用している.少数のコホート研究ではあるが,本法の臨床成果は外科的血栓摘徐術に匹敵することが示唆されている905).治療効果の評価に際しては,血行動態や酸素化の改善を重視すべきで,血管造影所見にとらわれすぎ 技術を要することは言うまでもない.欧米では,aortic teamを重要視する傾向にあり,わが国でも外科医を含め,放射線科医や脳神経外科医などによる包括的かつ多様なチーム作りが急務である. 手術室の環境については,速やかに手術に移行できる環境,さらに胸部大動脈瘤においては,体外循環装置など外科手術に移行したときの補助手段を速やかに行う環境が不可欠である. b. 治療後の画像診断を含んだフォロー ステントグラフト治療特有の合併症としてのエンドリーク,migrationがあるため,画像診断によるフォローは不可欠であり,長期間にわたるフォローを考慮する必要がある898). 胸部下行大動脈瘤におけるTEVARの良好な短期および中期成績は,さまざまな試験の結果からも明らかであり,今後,TEVARが第一選択となっていくものと考える.一方で弓部および胸腹部大動脈瘤については,ようやくsemi order-madeのfenestrated stentgraftであるNajutaがわが国で承認され,今後治療の幅が広がってくると考えられるが,debranched TEVARの長期成績も含めて,TEVARと外科手術の成績の比較が待たれる.また,branched デバイスが今後さらに開発され,臨床導入されるようになれば,治療戦略も変化するものと考えられる. 胸部大動脈瘤患者の生命予後は不良であり,心血管イベントの二次予防のため,動脈硬化危険因子のコントロールがきわめて重要である.また,慢性期の大動脈関連イベントを早期に発見するためにも,生涯にわたる経過観察と,適切な画像診断が望まれる. 急性広範型肺血栓塞栓症のうち,さまざまな治療を行ったにもかかわらず不安定な血行動態が持続する患者が本治療法の適応である899).ほかの内科的治療法や外科的治療法との多施設前向きランダム化比較試験は実施されていない.便宜上,カテーテル的血栓溶解療法(CDT)とカテーテル的血栓除去術(CBTR)に分けられる. a. カテーテル的血栓溶解療法(CDT) CDTは,血栓溶解療法の治療成績を向上させ,出血性副作用の発現を抑える目的で行われてきた.しかし,多施設前向きランダム化比較試験によれば,肺動脈内への 5.1.5 まとめ 5.2 急性肺血栓塞栓症(表94) 5.2.1 カテーテル治療法 表94 急性肺血栓塞栓症に対するカテーテル的血栓溶解療 法に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 全身血栓溶解療法が禁忌・無効な高リスク群に対し,熟練した術者・専門施設によるカテーテル的血栓除去術を考慮する. IIa C全身血栓溶解療法による出血の危険が高い中リスク群に対し,カテーテル的血栓溶解療法を考慮してもよい(単なる肺動脈内投与は勧められない). IIb C