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vii. アクセスルートの血管損傷 大動脈瘤に対するステントグラフト治療のアクセスルートは,大腿動脈アプローチが第一選択となる.しかし,体格の小さな女性や,高度に石灰化した腸骨動脈では,容易にアクセスルートの損傷をきたしうる.血管破裂をきたした場合は,急速に血行動態が破綻するため,損傷の疑われる症例では,シース抜去の際にとくに注意を要する.あらかじめ閉塞が可能なバルーンカテーテルを準備するとともに(対側からオクルージョンバルーンを前もって挿入するなど,緊急に対応できるようにすることが肝要である),適切なサイズのステントグラフト(ヘパリン使用血管用ステントグラフトなど)を準備したうえで,シースの抜去を行う.輸血製剤を院内に準備しておくことも必要である.血管損傷を認めた場合,近年の屈曲追従性の良好なcovered stent,あるいは開腹手術による早急な対応が重要である. ステントグラフト治療を行ううえで必要な環境については,欧米でも多く論じられている.今回,現在のわが国の状況も考慮しながら述べる. a. 外科医を含むaortic teamでの手技の施行および通常手術への移行可能な手術環境 ステントグラフト治療において,外科手術へ移行せざるをえない場合がある.そのため,外科医のバックアップは手術を安全に行ううえで,きわめて重要である898).また,今後の治療成績向上のためには,より精密な手技や脳保護 5.1.4 ステントグラフト治療におけるシステム (表92,表93) くにshaggy aortaなど,血管性状の悪い症例では塞栓症のリスクが高く,腸管虚血を含めた全身性塞栓症をきたした場合には,ときに致死的になりうる.血管性状の悪い症例へのステントグラフト治療は,その適応について慎重に検討する必要がある. v. 大動脈解離(RTAD,SINE)(表91) 大動脈解離に対するステントグラフト治療においては,真性大動脈瘤とは異なる特有の合併症が報告されており,代表的な合併症として逆行性A型解離(retrograde type A aortic dissection: RTAD)およびstent graft-induced new entry(SINE)とよばれるステントグラフト末端で生じる新たな内膜損傷があげられる. RTADのリスク因子としては,landing zoneとして38 mm径以上の大動脈の使用,過大なオーバーサイズ,上行大動脈拡大例,先天性2尖弁などが報告されており,逆行性A型大動脈解離となった場合,早急な心嚢ドレナージや人工血管置換術を考慮する必要がある892). また,SINEに関してもやはりステントグラフトの過大なオーバーサイズが要因となっており,さらにはステントグラフト末梢の大動脈に対する開度やデバイスの種類もリスク因子として報告されている897).大動脈解離に対するステントグラフト治療においては,過大なオーバーサイズを回避し,ステントグラフト末梢端は遠位弓部の弯曲部を避け,下行大動脈直線部に留置するなどの真性大動脈瘤とは異なる治療戦略が求められる. vi. ステントグラフト感染 ステントグラフト治療後遠隔期の合併症として,ステントグラフト感染があげられる.ステントグラフト感染を疑った場合,通常の培養検査・血液検査・画像検査に加え, PET–CT検査(保険適応外検査)やガリウムシンチグラフィが診断の一助となることがある.治療に関しては,画像診断の評価および抗生剤投与後の臨床経過を考慮して,人工血管置換術を絶えず考慮すべきである. 表91 ステントグラフト治療におけるRTAD,SINE 予防 に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 中枢landing zoneとして,38 mm径以下の大動脈の使用を考慮する. IIa B中枢/末梢landing zoneでの過大なオーバーサイズを避けることを考慮する. IIa B下行大動脈直線部を末梢landing zoneとして使用することを考慮する. IIa C表93 ステントグラフト治療の治療後についての推奨とエ ビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 治療後に画像診断によるフォローを行う. I C 表92 ステントグラフト治療の手術環境についての推奨と エビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル Open repairへの速やかな移行が可能な手術環境で行う. I C Open repairへの速やかな移行が可能なチームで,治療を行う. I C Hybrid手術室での治療を考慮する. IIa C