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p.104 抽出テキスト

先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン

右の椎骨動脈が脳底動脈レベルで交通していることを確認する必要がある.MRA,造影CT,血管造影にて,左右椎骨動脈の状態を確認し,場合によっては左鎖骨下動脈起始部にてバルーン閉塞試験を行うことも有用である.左右椎骨動脈の交通が確認できない場合,あるいは左内胸動脈を用いてCABGを施行している症例では,鎖骨下動脈バイパス術の追加が必須となる882). ii.腹腔動脈のcover(表84)

胸腹部大動脈瘤においては,その動脈瘤末梢側のlanding zone確保のため,腹腔動脈のcoverを意図的に行う場合がある.大部分の症例で,腹腔動脈は上腸間膜動脈を介した側副血行にて灌流されるため,腹部臓器や消化管血流に支障をきたすことは少ないが,可能な限りCTもしくは血管造影で上腸間膜動脈などからの側副血行路があることを確認する必要がある. c. ステントグラフトのデリバリー

通常,胸部大動脈用ステントグラフトは,スティッフタイプのガイドワイヤを用いてアクセスルートを直線化し,十分なサポートのもとにデリバリーを行う.しかし,屈曲の高度な症例,とくに胸腹部移行部が90度以上屈曲しているような症例では,上腕動脈から大腿動脈のあいだにthrough and through wireを作成してデリバリーシステムを挿入するのも一つのオプションである. d. ステントグラフトのタッチアップ(表85)

グラフト留置後,ステントグラフトとlanding zoneの大動脈との接合を良好なものにするため,バルーンカテーテルにてタッチアップを行うことが多い.胸部大動脈においては,腹部と比較して血流量が大きく,流速も早いため,オクリュージョンタイプのバルーンでは,血流によりバルーンが移動し,ステントグラフトのmigrationにつながる可能性がある.非閉塞性のバルーンカテーテルを用いるか,

高頻度ペーシングあるいは下大静脈オクリュージョンにより心拍出量を抑制した状態でタッチアップを行うことで,ステントグラフトのmigrationを予防する方法もある.またタッチアップは,大動脈弓部など,血流の影響を大きく受ける位置におけるグラフト展開時に,migrationを予防するためにも有用である.

大動脈解離症例に対するバルーンカテーテルでのタッチアップは,再解離のリスクがあるため,ステントグラフト留置後の造影検査にてエンドリークの有無を評価したうえでタッチアップを行うかどうかについては慎重に判断することが望ましい. e. Chimney technique(表86)

Chimney techniqueは分枝血流をbareあるいはcovered stentにて確保し,分枝血流を温存しつつlanding zoneを確保する方法である.近年,とくに弓部大動脈領域でdebranching TEVARの代替手段として有用であるといった報告も散見される883).一方,gutterによるタイプIエンドリーク出現のリスクや,遠隔期成績についての報告がないといった問題点もある884).そのため,緊急時Z0-2 にlandingを確保する必要のある症例で,open repairや頚部分枝をdebranchするようなoptionがないとき,あるいは不慮的に頚部分枝を閉塞させたときのサルベージ手段として考慮されるべき手法である. f. ステントグラフト治療の合併症i. エンドリーク(表87,表88)

エンドリーク(endoleak)は,大動脈瘤に対するステントグラフト治療における最大の問題である.エンドリークとはステントグラフト内挿術後に,瘤内が完全に血栓化せず,瘤壁に血圧のかかる状態が継続する現象で,タイプI ~Vに分類される.

タイプIエンドリークおよびタイプIIIエンドリークは,ステントグラフト内挿術後の瘤破裂のリスク因子であり,放置した場合の予後は不良である885).よって,術中にタイプIエンドリークおよびタイプIIIエンドリークが残存する場合は,バルーン拡張,ステントグラフトの追加留置など適切な根治治療が必須である.また,弓部大動脈など屈曲部へのステントグラフト留置においては,ステントグラフト小弯側の浮き上がり(bird beak)が遠隔期のタイプIエンドリーク発生を規定する重要な因子として認識されつつある790).Bird beak形成にはステントグラフトの種類も影響しており,大動脈屈曲率など解剖学的要件から適切なステントグラフトを選択することも重要である.

タイプIIエンドリークは,とくに腹部大動脈瘤に対するEVAR後に認めることが多く,その発生率は20~40%と

表84 ステントグラフト治療における腹腔動脈のcover に

ついての推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

腹腔動脈をcoverする際は,画像診断にて側副血行路を確認する. IIa C

表85 ステントグラフトのタッチアップについての推奨と

エビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

ステントグラフトのタッチアップを行う際は,厳密な血流管理下で行う必要がある. IIa C