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粥状硬化病変(shaggy aorta)など,血管性状の悪い症例では塞栓症のリスクが高い.腸管虚血を含めた全身性塞栓症をきたすと,ときに致死的になりうるため,術前に全大動脈の血管性状を詳細に評価し,血管性状の悪い症例(Atheromatous glade III以上)へのステントグラフト治療は,その適応について慎重に検討する必要がある877). 胸部および胸腹部大動脈瘤の治療における重篤な合併症の一つに,脊髄虚血による対麻痺がある.脊髄神経障害の発生のリスク因子には,広範囲の肋間動脈閉塞,腹部大動脈瘤治療(手術あるいはEVAR)の既往,鎖骨下動脈もしくは内腸骨動脈などの側副血行路の閉塞があり810, 878), 術前に評価しておく必要がある. TEVAR施行のためには,胸部ステントグラフト用シース,あるいはシース一体型のデバイス本体が通過するためのアクセスルートが必要である.通常は鼠径部を切開して大腿動脈を露出し,カットダウンにてシースを挿入するが,外腸骨動脈の狭窄や石灰化により大腿動脈からのアプローチが困難である場合は,腸骨動脈あるいは腹部大動脈からアプローチする方法や,腸骨動脈から導管を立てる方法もある. 胸部大動脈ステントグラフトは,腹部大動脈用のデバイスに比べてシースサイズが大きいため,アクセスルートである腸骨動脈の損傷には注意を要する.術後腸骨動脈の解離に対しては合併症の項目に記載した. b. Landing zone(表83) ステントグラフト治療において,もっとも重要なのは動脈瘤の中枢側および末梢側において適切な正常径大動脈とステントグラフトとの接合部分(landing zone)を確保することである.Landing zoneの性状がよく,長いほうがエンドリークの発生が少なく,良好な結果が得られる.胸部および腹部大動脈領域に対しステントグラフト治療を行う際は,各デバイスのinstructions for the use(IFU)を順守することが望ましい. 弓部など屈曲部にステントグラフトを留置する際は,ステントグラフト小弯側の浮き上がり(bird-beak)がエンドリークを規定する重要なリスク因子になりうるため791, 879, 880), landing zoneの選択にあたっては,留置の際にbird-beakを形成しないように留意することが望ましい. i. 左鎖骨下動脈cover 遠位弓部瘤および近位胸部下行大動脈瘤の治療を行う場合は,動脈瘤中枢側のlanding zone確保のため,左鎖骨下動脈のcoverを意図的に行うことがある.この場合,脳梗塞や脊髄虚血の合併症が多いことが報告されており881),可能な限りバイパス手術による左鎖骨下動脈の再建を行うべきである.左鎖骨下動脈をcoverせざるをえない症例では,右鎖骨下動脈および右椎骨動脈の開存状態,および左 表80 ステントグラフト治療における術前評価についての 推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 術前治療対象となる動脈瘤および大動脈頚部から鼠径部に至る全大動脈領域の血管性状(蛇行,壁在血栓,石灰化)をthin slice CTにて評価する. I C術前CT検査にてlanding zoneの径および治療長を計測し,適切なサイズのステントグラフトを選択する. I C術前治療対象となる動脈瘤および大動脈頚部から鼠径部に至る全大動脈領域の血管性状(蛇行,壁在血栓,石灰化)をthin slice CTにて評価する. I C術前CT検査にてlanding zoneの径および治療長を計測し,適切なサイズのステントグラフトを選択する. I C 表81 Shaggy aorta に対するステントグラフト治療の推 奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル Shaggy aorta症例に対し,ステントグラフト治療を考慮してもよい. IIb C 表82 ステントグラフト治療におけるアクセスについての 推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 術前にアクセスルート(径,屈曲の程度,血栓,石灰化の程度)を評価する. I C使用するステントグラフトのシース口径を熟知する. I Cアクセスルート損傷時の対応物品を準備する. I C 表83 ステントグラフト治療におけるLanding zone につ いての推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル ステントグラフト治療を行う際は,各deviceのinstructions for the use(IFU)を順守する. IIa B