p.100 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン Debranching TEVARの適応については,体外循環・低体温法,心停止を要しないことから,外科治療高リスク例には適応を考慮されるべきである787-789). 弓部へのデバイス留置に際しては,弯曲した弓部大動脈に対するデバイス小弯惻の浮き上がりはbird beakとよばれ,遠隔期のmigration,collapse,エンドリークの原因となることが指摘されている790-792).このため,デバイス特性に応じた口径・シーリング長を確保することに加え,弓部弯曲へのデバイス追従性を考慮したうえで治療計画を立てることが必要となる. 近年では,弓部分枝への血流温存をdebranching手術に依存しない方法として,開窓型ステントグラフトおよび分枝型ステントグラフトが臨床使用されている.とくにzone 0治療においては開胸操作が不要となることから, debranching TEVARより一層の低侵襲化が図られることが期待されている793-796).また,わが国では,弓部遠位に限局する動脈瘤に対して治療が可能になる開窓型ステントグラフト(fenestrated stentgraft)「カワスミNajuta胸部ステントグラフトシステム」(Kawasumi)が,2013年6月に薬事承認されている. このようなデバイスおよび留置技術の進化に伴い,弓部大動脈瘤に対するステントグラフトの成績は向上しているが786, 797, 798),わが国では全弓部置換の良好な成績も報告されている799, 800)ことから,血管内治療に対する施設間の治療方針の差異が大きく,低リスク症例への適応については今後も引き続き検討が必要である. c. 下行大動脈瘤 下行大動脈瘤に対するステントグラフトは,外科手術に比較して,急性期死亡率,有害事象発生率が低く,中期成績も良好であるため801-803),解剖学的適応例においては,第一選択の治療として考慮されるべきである804-807).また,ステントグラフトは脊髄神経障害の発生率が低く,QOLも保たれやすいため,その適応は拡大されつつある.瘤径としては外科手術と同様に55 mm以上を適応とする778). d. 胸腹部大動脈瘤 腹腔動脈分枝直上まで,あるいは側副血行が確保された腹腔動脈を閉鎖するのみでlanding zone が確保できる胸腹部大動脈瘤に対するステントグラフトは,下行大動脈瘤と同様の適応と考えられる.一方で,上腸間膜動脈や両側腎動脈分岐レベルまでのステントグラフト内挿を要する症例では,腹部分枝バイパスを行ったうえでのハイブリッド治療が選択肢となる.このハイブリッド治療は,外科手術と比べて脊髄神経障害のリスクが低いことが報告されており808-810),また,人工心肺を使用せず治療が可能となるため,開胸手術の高リスク症例に対して有効とされている811, 812).ただし,腹部主要血管に対するlong bypassの開 存成績が施設間で安定しないため,低リスク症例への適応は慎重になされるべきである. また,branchedデバイス,fenestratedデバイスは,わが国では未承認であるため,今回のガイドラインには含まない.ただし欧米では承認されており,許容できる周術期成績が報告されている813-815).今後,わが国において保険償還されたなら,その適応について十分検討する必要がある.また,Chimney法,sandwich法については後述する. e. 腹部大動脈瘤 腹部大動脈瘤は,解剖学的適応の範囲であれば良好な成績が報告されている816, 817).瘤径における適応は,男性55 mm以上,女性50 mm以上とされている778).それ以下の小径大動脈瘤に関しては,その治療において有用であるという報告がなく,非劣性が報告されたにすぎない818).また,傍腎動脈および腎動脈上大動脈瘤(Crawford IV型)に関しては,現状のデバイスではその有用性の報告は少ない. 腹部大動脈瘤に対するEVAR後に発生するタイプIIエンドリークに関して,遠隔期予後への寄与について議論があったが,破裂に関与するリスクが低く経過観察可能との報告が多くなされていた819-822).しかし,近年では国際的にタイプIIエンドリークによるEVAR後の瘤径拡大を懸念する報告も多く認めることから823-827),術後遠隔期では慎重な経過観察が必要と考えられ,瘤径拡大例に対しては治療介入が推奨される828).ただし,タイプIIエンドリークに対する血管内治療もしくは直接穿刺による塞栓治療は, EVAR後に瘤径拡大を発症する限り,大動脈治療の原則である「破裂防止」を根本から覆すことになる.今後,その予防もしくは治療に対する研究は急務であり,タイプIIエンドリークを対処しない限り,今後EVARの適応を再考する必要があると考える. 大動脈疾患における病態別にカテーテル治療の適応について以下に記載する.ただし真性大動脈瘤に関しては,上記解剖学的適応に準じる. a. 外傷性大動脈損傷 最近の報告では,外傷性大動脈損傷,とくに動脈管索および下行大動脈に発生する大動脈損傷に対してのステントグラフトは,広く推奨されている778, 807, 829, 830).大動脈損傷を伴う外傷例の大部分は,大動脈以外にも合併外傷を伴っていることから,体外循環を用いた手術のリスクが高い.よって大動脈損傷の治療を短時間で終了させ,付随する合併外傷の治療に速やかに移行が可能なステントグラフトは 5.1.2 病態的適応(表79)