p.98 抽出テキスト
1 大動脈病変 1.1 大動脈壁のアテローム エコーで検出される大動脈壁のアテロームは脳血管626)および末梢動脈627)の塞栓症との関連が指摘されている.さらに,胸部大動脈壁のアテロームは冠動脈疾患628)の強い予測因子であり,死亡率を高める因子としても報告されている.また,コレステロール塞栓症,冠動脈バイパス術後の脳卒中,心臓カテーテル術または大動脈バルーンポンプに関連する塞栓症に大動脈壁の動脈硬化性病変629)が関与する.大動脈壁のアテロームは,一般に2 mm以上の大きさが有意と判断される(表67) 630).さらに大きさ,形態の不整,潰瘍性病変の有無,可動性病変の有無等で重症度が定義されている630).心エコー法での大動脈アテロームの評価は,経食道心エコー法を用いての観察になるが,経胸壁心エコー法による体表からの観察においても描出された部位の評価が可能である.大動脈壁のアテローム評価を目的とした心エコー法は一般に施行されないが,弁膜症 等で経食道心エコー法を施行した場合には,大動脈壁のアテローム評価を行うことが推奨される.また,経胸壁心エコー法においても大動脈アテロームの簡易スクリーニング行うことは無益ではない(表68). 1.2 大動脈瘤 上行大動脈の一部は経胸壁心エコー法の上位肋間アプローチで描出可能であるため,上行大動脈の拡大,すなわち上行大動脈瘤が心エコー法で指摘されることが多い.特に,大動脈2尖弁とマルファン症候群の患者では,心エコー法施行時に大動脈基部から上行大動脈の観察が望まれる(表69) 631, 632).弓部および下行大動脈は鎖骨上窩から,また心臓をウインドウに描出できる場合があるが,詳細な観察は困難である.腹部大動脈瘤は心エコー法の一環として,あるいは腹部エコー検査で診断が可能であり,スクリーニングに有用である633-635).表70に腹部大動脈瘤の 第20章 血管疾患の超音波診断 表67 大動脈壁動脈硬化の重症度 グレード動脈硬化重症度病変内容 1 正常 内中膜厚が2 mm未満 2 軽度病変 内中膜厚が2~3 mm 3 中等度病変>3~5 mmのアテローム(可動性なし,かつ,腫瘍性病変なし) 4 高度病変5 mmを超えるアテローム(可動性なし,かつ,腫瘍性病変なし) 5 複雑病変 可動性または腫瘍性病変を有 する(グレード 2,3,4) (Goldstein SA, et al. 2015 630) より) Copyright (2015) by the American Society of Echocardiography, with permission from Elsevier. https://www.sciencedirect.com/journal/journal-of-the-american-society-ofechocardiography表68 動脈硬化性疾患を有する症例での心エコー法施行時 の大動脈アテローム評価の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 経食道心エコー法施行時には,大動脈アテロームの評価を行う. I B経胸壁心エコー法施行時には,大動脈アテロームの評価を考慮してもよい. IIb C 表69 大動脈2 尖弁,マルファン症候群における経胸壁心 エコー法(TTE)による大動脈基部および上行大動脈の評価の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 初回TTE 施行時に大動脈の評価を行う. I C TTE で大動脈拡大を指摘された症例では,毎年大動脈の評価を行う. I C