GL検索 v0.1.0
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p.97 抽出テキスト

軸方向の弁輪移動速度の絶対値を収縮機能や拡張機能の指標として使用することについては限界があり,同一患者における経過観察の指標にとどめることが望ましい.なお, GLSなどの新しい指標については,まだ小児におけるエビデンスに乏しいことから今回のガイドラインでは言及を控える.

5.4 未手術/肺動脈絞扼術後症例

単心室循環であっても肺動脈弁狭窄などにより肺血流量が適切な状態で経過したとき,もしくは一時的に高肺血流による心不全状態であったとしても,肺血管病変が進行することで高肺血流と心不全が軽快して経過した場合には,成年期また稀に老年期まで無加療で経過する場合がある616, 617).また,高肺血流の時期に肺動脈絞扼術を受け,その後何らかの理由によりさらなる手術介入が行われなかった場合などもありうる.これらの症例は種々の程度のチアノーゼと運動耐容能の低下を認める.

5.5 BTシャント術後症例

体肺動脈シャント手術はチアノーゼ改善を目的として,肺動脈への血流を増やすために体動脈から肺動脈へ人工血管等を吻合する手術である.鎖骨下動脈を肺動脈に直接吻合するBlalock-Taussig(BT)シャント術が原法であるが,現在ではde Levalらが提唱した人工血管を用いたmodified BT シャントが標準術式となっている618).肺血管床の状態がグレンやフォンタン循環に適さない場合は,シャント手術の状態で長期間にわたり管理されている場合がある.これらの症例もチアノーゼと運動耐容能の低下を認める.

5.6 両方向性グレン術後症例

両方向性グレン手術では上大静脈と肺動脈を直接吻合する.両側上大静脈の場合は,それぞれの上大静脈を同側の肺動脈へ吻合することが多い.術後は上半身の体静脈圧が上昇することで,この圧と肺静脈圧の圧較差を駆動圧として肺循環が成立する.経皮的酸素飽和度は85%前後のことが多いが,肺血管抵抗,または手術時の年齢や体格が大きいほど低値となりやすい.また,長期間にわたり両方向性グレン循環の状態が続くと,上半身から下半身の体

静脈系へ静脈–静脈シャントが形成され,または肺動静脈瘻の発生により経年的にチアノーゼが進行することがある.さらには,体肺側副血管が増生してくることで肺動脈内に逆行性血流を認めるようになる.これは重症になると上大静脈まで逆行性血流を認めることがある.体肺側副血管からのシャント血流量が増加するような状態では,容量負荷による心室拡大と心機能低下を認めることが多い.

5.7 フォンタン術後症例

フォンタン術後においては,高い体静脈圧に加えて,体心室への前負荷低減・後負荷増大による心拍出量の減少,また心室–血管カップリング異常による心臓の仕事効率の低下が起こっている619, 620).また,種々の程度の低酸素血症を認め,極軽度の症例から,fenestration,肺動静脈瘻,または体静脈–肺静脈シャントなどに起因して中等度以上の低酸素血症を呈する症例が存在する.運動耐容能は総じて低下しており,良好な経過のフォンタン術後患者においても正常の60%程度と報告されている621, 622).心機能は,房室弁閉鎖不全などによる心筋障害などが起こっていなければ,左室収縮機能は正常範囲のことが多いが,拡張機能は種々の程度で障害を受けている614).しかし,前述のとおり,心エコーを用いた拡張機能評価にはいまだ課題が多い.また,フォンタン術後は血管内皮障害,血小板機能亢進,そして体静脈–肺循環における血流うっ滞により血栓症のリスクが上昇している.心エコー法の際にフォンタン回路について可能な範囲で血栓の有無を評価する必要があり,確定診断にはコントラスト心エコー法や経食道心エコー法が有効である623-625).次いでフォンタン回路内の血流をカラードプラ法およびパルスドプラ法で評価する.下大静脈は呼吸性変動が大きく,呼気時に血流の途絶や逆行があることは,良好なフォンタン循環でも認められる所見である.一方,上大静脈や末梢肺動脈の血流は順行性の連続性血流であり,呼吸性変動はあるものの通常血流の逆行は認められない.末梢肺動脈で逆行性血流を認める場合には,体肺側副血管の増生や肺静脈狭窄など,肺循環の異常が示唆される.なお低酸素血症が進行してきている場合には,カテーテル検査の際に上下大静脈や肺動脈内でコントラスト心エコー法を行うことで,肺動静脈瘻や体静脈–肺静脈シャントの定性評価を行うことができる.