p.95 抽出テキスト
5 単心室循環における 評価のポイント 5.1 概要 単心室循環に分類される先天性心疾患の解剖は多岐にわたるが,次の3群に大別される.1主心室と痕跡的心室(流入部を持たない心室)の組み合わせ(三尖弁閉鎖や両側房室弁同室挿入など),22つの心室が存在するが,一方が低形成などのためにそれぞれの心室が独立して肺もしくは体循環を維持することができない場合(VSDを伴わない肺動脈閉鎖,左心低形成症候群,右側相同などにおける不均衡型完全房室中隔欠損など),32心室のサイズは良好であるが,合併する心内構造異常(房室弁の跨乗[straddling],房室弁交差[crisscross heart],重症エプスタイン病,または多発性VSDなど)のために2心室を分割した治療が不可能な場合,などである606). 解剖は多岐にわたるが,最終的なフォンタン手術を目指して行う多段階治療をフォンタンtrackと呼び,これは基本的に次の3段階の手術を順次行うことを指す.第1段階として肺血流を適切に制御するための手術を行う.すなわち,肺血流が多い場合は肺動脈絞扼術,逆に少ないために低酸素血症が高度の場合はBlalock-Taussig(BT)シャント術,または心室と肺動脈を人工血管で連結する心室肺動脈シャント術(ventricle to pulmonary artery conduit)を行う.第2段階として上大静脈と肺動脈を接続する両方向性グレン手術を行う.これにより上半身を灌流した血液は,肺で酸素化を受けてから心臓に還流することになる.第3段階として下大静脈と肺動脈を右心房や人工血管等を介して接続するフォンタン手術を行う607).これにより冠静脈血流以外のすべての体静脈血が肺での酸素化を経てから心臓に還流することになり,チアノーゼが解消される.フォンタン手術には,心耳-肺動脈吻合(atrio-pulmonary connection),心内導管(TCPC),lateral tunnel TCPC,心外導管(extracardiac TCPC)法がある608).現在では,心房への負荷がなく,流体力学的にもエネルギー損失の少ないTCPC法が主に行われる608).また,肺血管床や術後の心機能に懸念がある場合には,開窓(fenestration)付きのTCPCを行うこともある. 単心室循環における心エコー法は未手術とフォンタンtrack上の手術ステージを含めて,次の4種類に分類して評価を行う:1未手術・肺動脈絞扼術後,2BTシャント術後,3両方向性グレン術後,4フォンタン術後.検査にあ たっては,まず,単心室に共通の評価項目(5.3 判読を参照)を施行したうえで,各分類に即した評価を行う(5.4 未手術/肺動脈絞扼術後症例~5.7 フォンタン術後症例を参照). 5.2 適応 単心室循環の症例は,どのステージであれ定期的な心エコー法が必要である.状態が安定している場合でも,年1 ~2回の心エコー法の実施が推奨される.房室弁閉鎖不全や心機能に懸念がある場合には,より頻回のフォローが必要となる. 5.3 判読 単心室循環の成人症例はエコーウィンドウが不良のことが多い.また,経年的な変化により心室の形態も診断が困難なことがある.検査前に解剖(心室形態・房室弁・半月弁・大動脈弓形態,また肺静脈還流異常の有無)についての情報をもっておくことが望ましい.以下の共通項目について,可能な範囲で検査を行う.房室弁閉鎖不全等で手術介入等についての評価が必要な場合は,経食道心エコー法を施行する.ただし,フォンタン術後遠隔期には肝硬変を合併している患者がいることから,経食道心エコー法前には,食道・胃静脈瘤の合併について胸腹部造影CTや上部消化管内視鏡検査を行っておくことが望ましい.また,食道・胃と心臓の解剖学的位置関係から経食道心エコー法や経胃評価が困難な症例も存在する.経食道心エコー法の前に造影CTを確認し,目的とする評価が可能かどうかを検討しておくことも重要である. 5.3.1 収縮機能評価 左室型単心室の場合にはdisk summation法を用いて左室容積と駆出率の評価を行う(良好な単心室患者における通常値>50%) (図21).この際に駆出に関与していない痕跡右室はトレースから除外する.右室型単心室または2心室型単心室などの場合には心尖部を含み,最も心室基部の横径が大きくなる四腔断面を用いてFACを測定する.不均衡型完全房室中隔欠損のように中央に心室中隔が大きく存在する場合は,中隔を心内腔に含まないように中隔の心内膜面をトレースする(図19).良好な状態の単心室患者におけるFACの通常値は>30~35%である(注: FAC>30%を右室駆出率>40%と同等に扱っている報告があることから>30%としたが,いまだ十分なエビデンスを欠く) 609).また,房室弁閉鎖不全がある場合は逆流の流