p.93 抽出テキスト
大きいことを危険因子として合併することがある.頻度は0.1%程度であるが,手術介入にても難治性のことがある. a. 適応 ジャテーン術後20年の生存率は97%であるが,再手術回避率は75%にとどまる591).1/4の症例が再手術を要することから,安定している状態でも年に1回の心エコー法が必要である.中等度以上のARや右室流出路–肺動脈狭窄が合併している場合には,年2回の心エコ-法が推奨される.ARの術前を含めた詳細評価については,経食道心エコー法での評価を行うことが推奨される. b. 判読 乳幼児期には冠動脈を経胸壁心エコーカラードプラ法で評価することが可能であるが,学童以降になると観察が困難となる.心室の壁運動や心機能等で間接的に冠循環異常の有無を評価する.必要があれば,ドブタミン負荷心エコー法,ガドリニウム造影心臓MRI,または心臓カテーテル検査を実施する.右室流出路は胸骨のすぐ背側に位置することから観察が困難なことが多い.心窩部からの右室流出路断面が観察に有効な場合がある.肺動脈分岐部も観察困難なことが多いが,高位肋間から観察できる場合がある.2Dでの形態観察が困難でもドプラ法で血流を確認できる場合があり,左右肺動脈枝の血流速度を記録する. ARの評価に関しては,「第4章 2. 大動脈弁閉鎖不全症/大動脈弁逆流症(AR)」を参照されたい. 4.2.2 セニング/マスタード術後 セニング手術は自己組織のみを用いて心房間スイッチを行う手術を指す.心房の自己組織に余裕がある場合がよい適応で,術後も心房組織の成長が期待できる.一方,マスタード手術は心房間スイッチの際に自己心膜などのパッチを補填する手術で,心房の小さい症例でも施行が可能であり,また,術直後の心房容積に余裕ができることから,術直後の血行動態も安定しやすい.マスタード手術が報告されてからはセニング手術よりも多用されてきた経緯があるが,補填したパッチが術後遠隔期に石灰化などにより硬化をきたし,スイッチ通路の狭窄をきたすことがある.セニング/マスタード術後における合併症は次の2点に集約される:1心房内での血流転換操作に伴う合併症,2右心室が体心室となることによる合併症. 1心房内での血流転換操作に伴う合併症 心房間遺残短絡(頻度25%),体静脈通路狭窄(上大静脈通路8%,下大静脈通路1%)または肺静脈通路狭窄(2~4%),心房機能低下(リザーバーおよびブースターポンプの両機能が障害を受ける),洞機能不全(60%),心房粗動(心房内回帰性頻拍) (35%) 587, 592, 593). 2右心室が体心室となることによる合併症 右室機能不全,TR,左室流出路狭窄(左室流出路の異常筋束の存在などに加えて,右室拡大に伴った中隔の左室偏位のために左室流出路狭窄が生じる). a. 適応 術後20年の生存率はセニング術後が93%,マスタード術後が82%である.また,再手術回避率はセニング術後が89%,マスタード術後が45%と報告されている591).右室機能低下は約30%の症例に認められ,経年的に右室機能不全の割合も増加する.軽症~中等症程度のTRは状態が良好でも認められる.TRは経年的に悪化し,右室機能不全と相互作用的に悪化していくことが多い.定期的な心エコー法が必要であり,状態が良好でも年1回の検査が必要である.TRの悪化や右室機能低下を認める場合には,年2回の検査を行う.心房間遺残短絡や,心房内血栓等が疑われる場合,またはTRの評価には経食道心エコー法が推奨される.心房間遺残短絡で右左シャントが疑われる場合には,コントラストエコー法が有効である. b. 判読 体静脈から機能的右房までの経路と,肺静脈から機能的左房までの経路を経胸壁カラードプラ法で評価する.肺静脈–機能的左房通路は心尖部四腔断面で評価できるが,上大静脈–機能的右房通路はときに描出が困難なことがある.右側臥位にし,高位肋間からの傍胸骨断面が有効な場合がある.また,必ずドプラ法にて流速の評価を行う.右室機能評価と三尖弁機能評価に関しては「第3章 5. 右心系の機能評価」および「第6章 三尖弁疾患」を参照されたい. 4.2.3 ラステリ手術 完全大血管転位III型においてはラステリ手術が標準術式として施行される.ラステリ手術は左室からの駆出血液がVSDを介して大動脈に流れるようパッチにて心内通路を作成し,右室から肺動脈へは人工血管を用いて再建する手術法を指す.本疾患の治療にはREV(réparation à l’ètage ventriculaire)手術,Nikaidoh手術,またはhalf-turned truncal switch手術などの新しい術法も用いられる594).術後の問題点は次の2点に集約される:1右室流出路再建に使用した人工血管に関連する合併症,2左室流出路狭窄. 1右室から肺動脈への通路として使用する人工血管の種 類は時代とともに変遷するが,使用できるサイズは手術時の体格や心臓と胸壁の位置関係によって決まる.体格の小さい年齢で使用した人工血管は体格の増大に伴って相対的に狭小化し,また,弁付き導管を使用した場合には,弁の石灰化に伴った硬化により狭窄が