GL検索 v0.1.0
画像は 91 ページを描画したものです
page 91

p.91 抽出テキスト

るが,肺動脈血流との角度が不良の場合には,心窩部からの右室流出路断面が有効な場合もある.ファロー四徴術後ではPRの重症度が増すにつれて肺動脈の拡張期圧が著明に低下し,また肺動脈弁による血流制限も弱いことから弁での逆流血流の加速や弁下での血流収束(flow convergence)が認められにくくなり,PISA法や縮流部(vena contracta)を用いた重症度評価が困難となる.また, PHTや逆流血流持続時間/拡張期時間(pulmonary regurgitation-index(PR-i))などの指標は逆流量だけでなく,右室コンプライアンスの影響を受ける.特にファロー四徴術後には右室のコンプライアンスの低下したrestrictive physiology of right ventricleと呼ばれる病態が存在することから,逆流血流速の減衰を利用した評価法では逆流の程度が過大評価される可能性がある(図19).各指標の限界を理解したうえで複数の指標を組み合わせて総合的に重症度を判断する必要がある.Renellaらは,末梢肺動脈からの引き込み血流陽性の所見とPR-i<0.77の両指標が揃った場合には,PRの程度が重度である可能性が100%であると報告している585).PRの重症度評価におけるアルゴリズムを図20に示す73, 585).

PRに対する治療介入の要否は右室拡大の程度で決まることから,右室拡大の程度を通常の四腔断面,右室焦点四腔断面(RV focused 4-chamber view),左室短軸断面などを使用して多角的に評価する.右室機能等については「第

3章 5. 右心系の機能評価」を参照されたい.しかし,心エコー法による右室容積の定量は困難であることから,拡大の進行が疑われた場合には心臓MRIにて左右心室の容積を評価し,治療適応を決定する587).ペースメーカ等により心臓MRIが施行できない場合には,心臓カテーテル検査や造影CT検査にて右室容積の評価を行う.右室流出路や肺動脈狭窄が残存する場合も右室圧評価のために心臓カテーテル検査を施行する.大動脈基部拡大が疑われる場合には造影CTによる評価が有用である.また,ARに対して形成術等の適応がある場合には,経食道心エコー法も考慮する必要がある.

4.2 完全大血管転位

完全大血管転位(complete transposition of the great arteries)は心房位が正位もしくは逆位で,心房と心室の接続関係が正常(atrioventricular concordance),かつ心室動脈不一致(ventriculoarterial discordance)となる疾患群を指す.大動脈と肺動脈の位置が心室中隔を越えて入れ替わっており,右室から大動脈,左室から肺動脈が起始する. VSDを伴わないI型,VSDを伴うII型,VSDと肺動脈狭窄を伴うIII型,そして稀ではあるが,肺動脈弁狭窄があ

PRの重症度

逆流ジェット引き込み領域

(ナイキストリミット:

50~70 cm/秒)逆流ジェットが肺動脈弁下のみMPAから逆流血流(+)末梢PAから逆流血流(+)

*拡張期順行性血流

PR-ジェット幅/肺動脈弁輪径

(ナイキストリミット:

50~70 cm/秒)

PHT

PR持続時間/拡張期(PR-index=B/A)

右室容積正常正常-拡大拡大

軽症中等症

≧0.70

<100 ミリ秒

<0.77

重症(拘束障害性右室)

AO PA AOPA AO PA

AO PA

PR PR PR *

B

A A

B

A *

B

図19 PR の心エコー指標AO:大動脈,PA:肺動脈,MPA:主肺動脈(肺動脈幹).