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p.89 抽出テキスト

血液混入攪拌生理食塩水を用いたコントラスト心エコー法が有用である(第1章 5. コントラスト心エコー法[心腔]を参照) 570-572).特に心房位のシャントでは,経食道心エコー法によるコントラスト法はシャント血流量の半定量評価,シャント部位の形態診断に有用である573).

3 成人期に診断される未手術の先天 性心疾患

本ガイドラインでは,成人期に診断されることのある未手術の先天性心疾患として,修正大血管転位症,エプスタイン病,動脈管開存症(PDA),心房中隔欠損症を取り上げる.

3.1 修正大血管転位(corrected transposition of the great arteries)

3.1.1 適応

心電図の房室ブロック・胸部X線写真の右胸心や正中心を契機に修正大血管転位が疑われた場合,あるいは診断後に心雑音の出現や心不全などの病状変化が疑われる場合には,心エコー法の適応である.確定診断例においては病状の変化がなくとも,単純型では2年に1回,複雑型では1年に1回程度の経過観察としてフォローアップ心エコー法が適応となる.

3.1.2 判読

初診時は区分診断法574)を用い,心房と心室の接続不一致(atrioventricular discordance),および心室動脈不一致(ventriculoarterial discordance)によって診断する. VSD・肺動脈弁狭窄を合併する複雑型は,合併しない単純型に対して予後不良因子575)であり,心エコー法による診断が必要である.加齢に伴い体循環を担う右心室の拡大,機能不全,TRの出現と進行に留意する.TRの成因として,機能性に加えてエプスタイン病様の器質性の異常を認めることもある.体循環右室の容積および機能については心エコー法による定量化に限界があるため,心臓MRIなど他のモダリティーとの併用を考慮すべきである.肺動脈弁狭窄の併存は,肺循環左室への圧負荷に伴う心室中隔の扁平化を介して,体循環右室の房室弁逆流には保護的に働くなど576),心室間相互作用が重要であり,その評価として心室中隔の偏位にも注目すべきである.房室ブロックに対するペースメーカ調律は心臓同期不全により体循環右室不全を助長するため,デバイス治療選択にあたり

右室機能評価は重要である576).

3.2 エプスタイン病

3.2.1 適応

末梢静脈のうっ血による下腿浮腫,肝腫大,腹水などの臨床所見で,胸部X線写真での右心系の拡大,心電図での右心負荷所見からTRを疑った場合には,心エコー法を行う.

3.2.2 判読

エプスタイン病の診断にあたっては,心尖部四腔断面像での三尖弁偏位だけでなく,右室流入路長軸断面にて,後尖の心尖部側への偏位を確認する必要がある.エプスタイン病は三尖弁を含めた右室の先天異常であり,進行性の右室拡大と機能不全に注目して判読する.エプスタイン病では長軸方向の三尖弁輪運動が右室駆出率に比して過大である特徴があり,TAPSEによる右室収縮機能評価は注意を要する577).経験豊富な施設においては三尖弁形成術(Cone手術など)を念頭においた弁尖と右室壁の評価578)が推奨される.

3.3 動脈管開存(PDA)

3.3.1 適応

脈圧の増大,連続性雑音,左室容量負荷からPDAが疑われる場合には心エコー法が適応となる.

3.3.2 判読

自覚症状やシャント血流量,Qp/Qsによらず,連続性雑音が聴取されるPDAでは感染性心内膜炎,加齢に伴う動脈管石灰化による瘤化などが危惧され閉鎖術を検討することから,心エコー法による存在診断が重要である.アイゼンメンゲル症候群ではPDAが逆シャントとなり,下半身のチアノーゼが生じる.肺高血圧の合併,PDA血流の速度と方向の評価が重要である.近年では閉鎖デバイスによる経皮的治療の適応が拡大している.治療法は動脈管の形態に基づいて選択されるが,心エコー法では限界があり,造影CTが推奨される.