p.87 抽出テキスト
1.2 心エコー法の実際 先天性心疾患の心エコー法診断の基本は,1血流に沿った解剖学的部位診断と大静脈/肺静脈–心房–心室–大血管の関係診断,2血流に基づいた血行動態診断,3心房,心室の容積・サイズを含めた機能診断の3つからなる557, 560-563).特に発生学的異常が基となる先天性心疾患の心エコー法においては,体静脈が心臓に戻って肺循環および体循環に駆出される血液の流れに沿って解剖学的診断をしていく方法(区分診断法)が最も重要となる557, 560, 564, 565).各部位の解剖学的特徴と診断については表65に示す557, 561, 562). 3つの部位診断と2つの関係診断からなる5ステップの区分診断法(segmental approach)の詳細については,「先天性心疾患並びに小児期心疾患の診断検査と薬物療法ガイドライン(2018年改訂版)」を参照されたい557). この診断手順においては各部位の解剖学的診断も重要であるが,部位間の関係診断も重要となるため,短軸断面では心尖部から心室基部,大血管レベル,大血管から血管分 岐レベルまで,心尖部四腔断面では腹側から頭側まで,心室長軸断面では右側から左側まで,心臓全体をカバーするように連続的にスイープすることも重要である557, 560, 564, 565).成人では狭いエコーウインドウと超音波の透過性の問題から十分な画質が得られないこともあるが,小児においては心窩部からのアプローチで良好な画像が得られることが多く,解剖学的断面(anatomical view)として臨床上用いられることが多い557, 560). 1.3 外科手術と先天性心疾患の心エコー法 複雑な解剖学的異常を呈する先天性心疾患に対して,さまざまな外科手術が行われる.左右心室を使用する二心室修復や,単心室などに対する一心室修復(いわゆるフォンタン循環)に大きく分類されるが,それぞれの修復術特有の解剖学的特徴所見や血行動態所見に基づいて,心エコー法を行う必要がある.先天性心疾患の手術前後において, 表65 心房・心室・大血管の心エコー法診断 部位解剖所見解剖学的特異度心エコーでの検出性/ 有用性 心房解剖学的右房解剖学的左房 下大静脈流入(+) (-) ◎ ◎心耳形態基部の広い三角形状基部の細い人指し指形状◎ ○分界稜心基部と心房後壁間にある(-) ◎ △櫛状筋の分布心耳を超えて広がる心耳の先端のみ◎ △卵円窩の解剖二次中隔がある側一次中隔がある側◎ ○ 心室解剖学的右室解剖学的左室 心尖の肉柱形態調節帯(moderator band)粗造(+)緻密で網状 (-) ◎ ◎ 房室弁の付着部位より心尖に近く付着心基部に近く付着◎ ◎心室中隔表面粗平滑△ △乳頭筋の挿入心室中隔面自由壁(心室中隔面には挿入しない) ◎ ◎漏斗部(円錐部) (+) (-) ○ ◎房室弁–半月弁線維性結合(-) (+) ◎ ◎ 大血管肺動脈大動脈 動脈弓の形成(-) (+) ◎ ◎頚部動脈の分岐(-) (+) ◎ ◎起始後すぐに分岐(+) (-) ○ ○