GL検索 v0.1.0
画像は 85 ページを描画したものです
page 85

p.85 抽出テキスト

1 概要

アントラサイクリン系,シクロホスファミド,5–フルオロウラシルといった古典的な抗腫瘍薬だけでなく,トラスツズマブ,ベバシズマブ,ニボルマブなどのモノクローナル抗体や,スニチニブ,ニロチニブなどのチロシンキナーゼ阻害薬,インターフェロンαなどのサイトカイン,ジドブジンなどの抗ウイルス薬,ピオグリタゾンなどの糖尿病治療薬,三環系抗うつ薬などの向精神薬,カバサールなどの麦角系アルカロイドの他,アルコール,コカインなども心毒性を有している.また,β遮断薬や抗不整脈薬なども,心機能に悪影響を与える可能性があり,広い意味での心毒性を有する.薬物起因性心毒性の病態には,左室収縮不全から生じる心不全だけでなく,QT延長,不整脈,心筋虚血,心膜炎,心筋炎,高血圧,血栓症なども含まれる.無症候性の心筋障害を呈することに注意する必要があり,特に早期においては左室拡張不全を生じる.

2 適応

一般的に心機能障害の既往例では心毒性が発症しやすいため,心毒性を有する薬物を使用する際には,投与前の心エコー法がリスク層別化に役立ち,その結果次第で薬物投与の再考が必要となる場合もある198, 548-550).心毒性を有する薬物の投与中は,心不全症状が出現した際の心毒性の診断に心エコー法が用いられる.特に無症候心毒性の早期診断には画像診断が不可欠であり,心エコー法がその中心的役割を果たす.トラスツズマブなどの抗HER2モノクローナル抗体の心毒性は,投与量に関係なく心毒性が発生するため,薬物投与中の定期的なモニタリング(通常3ヵ月ごと)が必要である.一方,アントラサイクリン系抗腫瘍薬は,投与量依存性の心毒性が知られており,投与終了後も数年~数十年にわたって影響が遷延するため,投与終

了後の経過観察においても心エコー法が有用である198, 550).心毒性を有する薬物投与時の経胸壁心エコー法による心機能評価の推奨とエビデンスレベルを表63に示す.

3 判読

3.1 左室収縮機能

一般的には,2断面disc summation法により算出したLVEFを用いて左室収縮機能の判定を行い,正常下限値を下回った場合に左室収縮機能が低下していると判断する. 2断面disc summation法によるLVEFの正常値としては53 ~73%が広く用いられている3).しかし,薬物心毒性による左室収縮機能低下であると判断するには,薬物投与前のLVEFと比較する必要がある.

抗腫瘍薬の心毒性による左室収縮不全の病態は,抗がん剤治療関連心筋障害(CTRCD)と呼ばれるが,その定義はいまだ統一されていない551).最近よく用いられているCTRCDの定義は,「LVEFがベースライン値と比較して10%以上低下して,53%を下回る」である550).一方,

第18章 心毒性を有する

薬物投与時の心機能評価

表63 心毒性を有する薬物投与時の経胸壁心エコー法

(TTE)による心機能評価の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

心毒性を有する薬物の投与が予定された患者における心機能評価のためにTTEを行う. I C心毒性を有する薬物投与中,あるいは投与後の無症候性患者における心機能評価のために定期的なTTE を行う. I C心毒性を有する薬物投与中の患者において,心不全症状が疑われる,あるいは病態に変化があった場合にTTE を行う. I C