p.84 抽出テキスト
天異常がある.また,多重反射や鏡面現象などによるアーチファクトを腫瘤と見誤ることがあるため,多断面断層像で確認する,振動の有無を確認する,Mモード心エコー法も活用する,などの工夫が必要である.血栓は血流のうっ滞する部位に発生しやすく,もやもやエコーを伴うことが多い.僧帽弁疾患や心房細動に伴う血栓は左房,特に左心耳に多く,虚血性心疾患や拡張型心筋症に伴う左室内血栓は心尖部に多くみられる.心エコー法では,腫瘍の形状や付着部位,茎の有無,広がりを評価できるが,組織性状評価は石灰化や内部の均一性などに限られる. (造影)CTや心臓MRIは空間分解能に優れ,組織性状評価にはこうしたモダリティーを複数組み合わせて評価することが有用である540).一方,心エコー法は時間分解能に優れており,(造影)CTや心臓MRIでは検出困難な小さな可動性腫瘤(疣腫や弾性線維腫など)の診断に優れている.加えてドプラ法による血流障害や心機能の評価も行えることが利点である. また,心臓腫瘤では外科治療の適応かどうかという視点での判読も重要である.悪性腫瘍では外科的摘出術の対象となるのはもちろんのこと,良性腫瘍でも塞栓症のリスクが高いものは外科的摘出術の対象となる.さらに,大きな粘液腫で僧帽弁への嵌頓リスクがあるものは緊急手術の適応となる.そのほか,血栓でも大きく可動性がある場合には塞栓症のリスクが高いため,外科的摘出術の適応となることがある. 4 診断に有用な他のモダリティー 4.1 CT CTは時間・空間分解能に優れ,多断面での切り出しが可能である541).さらに,肺や縦隔,腹部などの心外臓器の情報も得られるため,心外臓器との関連や広がりを評 価できる.CT値により脂肪組織や液体,石灰化などの組織性状評価が可能であり,造影効果により血管に富む良性腫瘍(粘液腫や血管腫)や悪性腫瘍の鑑別が可能である.また,心電図同期の造影冠動脈CTなどにより,術前の冠動脈バイパス用血管の評価も可能である.放射線への被曝と造影剤による腎毒性はCT検査のデメリットである. 4.2 心臓MRI 空間分解能はCTよりやや劣るが,軟部組織の性状診断能やコントラスト分解能に優れる.心臓MRIには断面の制限がなく,心臓機能評価や心臓周囲組織の評価が可能である542).T1,T2イメージやガドリニウム遅延造影により組織性状診断が可能である.T1画像は脂肪組織が高信号となり,T2画像は水分の多い粘液腫や心膜嚢胞で高信号となる.ガドリニウム造影の早期像では腫瘍灌流血流量の評価が可能で,血流のない血栓との鑑別に有用である543).また遅延造影像では線維腫は均一に染まり,転移性腫瘍や血管肉腫などでは不均一に染まることから,良性と悪性の鑑別にも有用である544).また,血管肉腫におけるsunray patternは特徴的所見とされる545).心臓MRIのデメリットとしては,撮像時間の長さ,ガドリニウムによる腎毒性,検査可能な植込み型デバイスに制限があること,また閉所恐怖症などがある. 4.3 18F-FDG PET 生体内の糖代謝を評価する18F- FDG PETは(造影)CTや心臓MRIと併用することにより良性と悪性の鑑別に有用である546).また,原発巣の検索や悪性腫瘍のステージングにおいても有用である. 18F-FDG PETはMRIと比べて組織性状の評価では劣るが,MRIの遅延造影では診断困難な腫瘍の再発と局所の線維化との鑑別に有用性を発揮する547).