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p.83 抽出テキスト

奇形腫などがある.粘液腫は最も多い良性心臓腫瘍であり,成人原発性心臓腫瘍の約50%を占める528–530).皮膚の色素沈着,末梢性・内分泌腫瘍を合併する常染色体優性(顕性)遺伝疾患のCarney複合に伴う粘液腫は多発することが多く,心房中隔以外のまれな部位にもみられ,術後再発も多い531, 532).粘液腫は75%が左房に発生し,心房中隔,特に卵円窩に茎をもった有茎性腫瘍として発達することが多いが,可動性に乏しい無茎性のものもあり,10~15%は右房にも生じる.脂肪腫は2番目に多く,無茎性のポリープ状を呈し,心内膜(50%),心外膜(25%),心筋(25%)のあらゆる部位に発生する.右房,左室に多く,心膜に発生したものは広範囲に広がるが,心筋内に発生したものはカプセル化された小さいものが多い533).脂肪腫との鑑別を要する心房中隔の脂肪腫様過形成(lipomatous hypertrophy)は,脂肪腫と異なり皮膜を有さない.乳頭状線維弾性腫は弁や弁近傍の心内膜に,多くは有茎状に多発性・単発性に発生し,可動性を有する534).ランブル疣贅(弁尖から連続する細い線状構造物)や粘液腫との鑑別が問題となる.横紋筋腫は幼児・小児にみられる心臓腫瘍のうち最も多く(50~60%),心室筋に多発性に発生し,まれならず結節性硬化症に合併する(結節性硬化症の30 ~50%) 535).

原発性悪性腫瘍は心臓腫瘍の15~25%を占め,悪性リンパ腫,心膜中皮腫を除けば,血管肉腫,横紋筋肉腫,線維肉腫などほとんどが肉腫である528, 529).肉腫の発生部位は左心,右心ほぼ同程度であり,最も多いのは血管肉腫である536, 537).その他,心膜に発生する腫瘍としては心膜嚢腫が最も多く,憩室との鑑別には複数の検査法による比較が有用である538).

転移性腫瘍は,頻度的には肺癌(37%),悪性リンパ腫などの血液疾患(20%),乳癌(7%),食道癌(6%)などが多い539).

2 適応

心臓の腫瘤,あるいは腫瘍を疑うのは,脳あるいは全身の塞栓症を発症した場合,他の画像検査で心臓腫瘤や心膜液を認めた場合,心雑音を認めた場合,などである.まずは非侵襲的な経胸壁心エコー法を行うが,経胸壁心エコー法だけでは必ずしも心臓腫瘍の除外に十分な情報が得られないことがある.原因不明の塞栓症状など心臓腫瘍が否定できない場合や経胸壁心エコー法で心臓腫瘍が疑わしい場合には,経食道心エコー法を行う.特に左房や僧帽弁,大動脈弁など左心系にみられる腫瘤性病変

の診断には経食道心エコー法が有用である.心臓腫瘍を疑ったときの経胸壁心エコー法(表61)と経食道心エコー法(表62)の推奨とエビデンスレベルを示す.

3 判読

心臓腫瘍との鑑別が必要なものとして,心腔内血栓や疣腫(第16章 感染性心内膜炎を参照),また病的意義の少ない右房内キアリ網,ユースタキオ弁,テベシゥス弁,右室内肉柱(調節帯など),左心耳と左上肺静脈の隔壁であるクマジン陵,左室仮性腱索などの胎生期遺残物,先

表61 心臓腫瘍を疑ったときの経胸壁心エコー法(TTE)

の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

塞栓症(脳,全身)を認めたときにTTEを行う. I B他の検査法で心臓腫瘍が疑われたときにTTE を行う. I B術後再発の可能性がある腫瘍のフォローアップをTTE により行う. I B他臓器に悪性腫瘍があり,心病変の可能性がある場合にTTE を行う. I B心臓腫瘤を形成する可能性がある病態であるが,腫瘤の存在を示す臨床所見のない場合にTTE を考慮する. IIa B

表62 心臓腫瘍を疑ったときの経食道心エコー法(TEE)

の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

塞栓症(脳,全身)を認め,TTE が陰性の場合にTEE を行う. I B TTE や他の検査法で評価困難な小さな腫瘤を認めた場合にTEE を行う. I B手術・抗凝固療法適応決定のためにTEEを行う. I B TTE の画像が不鮮明,あるいは撮像断面が限られている患者においてTEE を考慮する. IIa B TTE:経胸壁心エコー法