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p.79 抽出テキスト

b. 心室中隔穿孔

心室中隔穿孔は前壁中隔梗塞と下後壁梗塞で生じやすい.前壁中隔では心尖部中隔,下後壁梗塞では心基部中隔に生じることが多い.聴診により新たな汎収縮期雑音の聴取が発見のきっかけになる.心エコー法では,カラードプラ法による左室から右室へのシャント血流の存在によって診断される.また,下後壁梗塞は右室梗塞を合併することが多く,左右シャントによる右室不全は予後を悪化させるため,右室機能評価が重要である.さらに心基部中隔穿孔には複雑な病態が併存することがあり,心筋解離,心筋内血腫,仮性心室瘤の形成といった他の合併症にも注意が必要である454, 455). c. 乳頭筋断裂

乳頭筋断裂では急性肺水腫を生じ,急激にショックに至ることが多い.乳頭筋断裂は後乳頭筋に生じることが多い456).乳頭筋は心内膜下組織であるため,非ST上昇型急性心筋梗塞や小梗塞でも乳頭筋断裂を生じうる457, 458).経胸壁心エコー法ではMRに加えて,僧帽弁の逸脱やフレイルな僧帽弁の動きを確認する.しかし,ショックによる頻脈に加え,左房圧と左室圧が近似すると,経胸壁心エコー法では僧帽弁運動およびMRの正確な観察が困難な場合があり,経食道心エコー法がその診断に有用である. d. 左室内血栓

心筋梗塞後に形成される左室内血栓は塞栓症の危険因子である459-461).左室内血栓は心尖部の心室瘤内に多く認められ,血栓形成のリスクが高い症例における血栓の検出は重要である.また,血栓の部位,血栓の形状,可動性の有無によって塞栓リスクが異なるため,血栓の性状につい

ても評価を行う必要がある477, 478).しかし,心エコー法では心臓MRIに比べて左室内血栓の検出感度が低いため,血栓の存在を否定することは慎重でなければならない462).

2 慢性冠動脈疾患(慢性虚血性心疾 患)

2.1 適応

安静時心エコー法は,陳旧性心筋梗塞および慢性狭心症などの慢性冠動脈疾患が疑われる患者に対する初回検査の場合,またフォローアップ中に胸痛や心不全症状の新規出現/増悪,心電図変化などを認めた場合の心機能の評価に推奨される177, 487, 488).冠動脈疾患は多くの合併症を引き起こすため,予後予測やリスク評価のために,収縮機能障害,拡張機能障害,弁膜症,心筋/心膜疾患,左室内血栓の有無について,心エコー法による評価が有用である489).安静時心エコー法の推奨とエビデンスレベルを表58に示す121).

冠動脈疾患では,安静時心エコー法で局所壁運動異常などの異常所見を認めない場合も多いため490),禁忌がなければ虚血誘発に伴う一過性の変化を捕えることが重要である.負荷心エコー法は,特に心電図の虚血診断が困難な症例(左脚ブロック,心室ペーシング,WPW症候群,

表58 安静時心エコー法の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベルMinds

推奨グレードMinds

エビデンス

分類

冠動脈疾患が疑われる患者に対する初回検査としての局所壁運動異常の検索,LVEF 測定によるリスク層別化,左室拡張能の評価を行う. I B B IVa異常Q 波,心不全症状,重篤な心室不整脈または診断されていない心雑音を有する冠動脈疾患患者におけるドプラ法を含めた左室収縮機能,拡張能,心筋/ 心膜異常の評価を行う. I B B IVaフォローアップ中に心不全症状が新たに出現した/ 増悪した場合や,病歴や心電図から心筋梗塞を生じたことが疑われる場合にLVEF や局所壁運動の評価を行う. I C B IVa

高血圧や糖尿病患者で,心電図異常を示す場合に心臓の構造/ 機能評価を考慮してもよい. IIb C C1 IVa正常心電図で心筋梗塞の既往がなく,心不全症状や重篤な心室不整脈を有さず,心疾患を示唆する症状がない患者におけるルーチンの心機能評価は推奨されない. III No benefi t C C2 VI臨床症状が変化しないか,治療の変更が予定されない,または心血管イベントの生じるリスクの低い患者における繰り返しの心機能評価は推奨されない. III No benefi t C C2 VI (日本循環器学会.2018 121)より)