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p.78 抽出テキスト

量化するWMSIが合併症や予後の推定に有用である474-477). WMSIは各セグメントの壁運動を正常=1,低収縮=2,無収縮=3,収縮期壁菲薄化あるいは伸展=4とスコア化し, 16セグメントの平均値として算出する.

基本的に壁運動異常は灌流障害が生じた冠動脈領域に生じるが,虚血リスク領域の近傍の心室壁にまで壁運動異常が認められることもあり,心筋虚血領域や心筋梗塞範囲を過大評価する可能性がある472, 478, 479).再灌流療法後に一過性に壁運動異常を認める気絶心筋(stunning)の存在は,急性期に観察される壁運動異常の領域と組織学的な心筋梗塞の範囲との乖離が生じる原因となる473, 480-482).

近年,スペックルトラッキング法による定量的な左室局所壁運動評価が臨床応用されている.スペックルトラッキング法によって,急性心筋虚血時,駆出期以降に左室壁の収縮が認められるpost-systolic shorteningの出現が検出されるようになった483).また,収縮時相の遅延によって左室心筋の拡張が遅延するdiastolic stunningの概念も提唱されている196).このような壁運動異常は,壁運動の低下が認められる以前,もしくは一過性の虚血が解除された後に目視で壁運動低下が認められない状況で観察されることから,新たなACSの診断法となる可能性がある.しかし現状では,ACSの診断精度に関するエビデンスは不十分である.

1.2.2 ACS診断のためのPoint-of-care ultrasonography(POCUS)

主に急性期診療において,医療従事者が関心部位を絞ってベッドサイドでリアルタイムに診断を行う超音波検査法はPoint-of-care ultrasonography(POCUS)と呼ばれる179).

ACSの診断においては,鑑別が必要な胸痛を呈する致死性の疾患である急性大動脈解離および肺血栓塞栓症の診断に絞った心エコー法が有用である.ショックや心肺蘇生時に心血管疾患を評価するためのPOCUSのプロトコールにはFoCUSがある484).特に致死的な胸痛疾患の診断に絞ったFoCUSプロトコールとしてEASY screeningが提唱されている468).すなわち,1心膜液(Effusion),2大動

脈(Aorta),3心室の大きさ(Size)と形(Shape),そして4左室壁運動(asynergY)を評価する(図18) 468).

1.3 急性心筋梗塞発症後の評価

1.3.1 心形態および心機能の評価

a. 左室リモデリングの評価

急性心筋梗塞後の左室容積およびLVEFの評価は,治療法の選択や予後の推定に有用である250, 463-467, 485, 486).これらの評価にはdisc summation法による計測が必要である. b. 血行動態の評価

急性心筋梗塞後のドプラ法による左室拡張機能の評価は,左室リモデリングの進行や予後の推測に有用である250, 465-467).

1.3.2 合併症の評価

急性心筋梗塞発症後には迅速な対応が求められる合併症を生じることがあり,心エコー法はその診断に有用である453-462). a. 左室自由壁破裂

左室自由壁破裂は,oozing型とblow-out型に分けられる.oozing型では心膜液貯留が診断の手がかりとなる.治療方針の決定に心タンポナーデの評価と心膜液量の経時的な評価が必要である.oozing型の鑑別診断には心膜障害による心膜液貯留があげられる.急性心筋梗塞に起因する心膜炎は急性期からみられることがある.亜急性期以降に生じるとDressler症候群と呼ばれる.その他,ステント留置,抗凝固療法などによる医原性の心膜障害も心膜液貯留の原因となる453).blow-out型は,発症直後に血行動態が破綻し心停止に陥ることが多い.心膜腔内に血腫が存在することが診断の手がかりとなる.鑑別診断としては大動脈解離による心膜液貯留があり,いずれも重篤な病態である.

図18 EASY screening によるFoCUS プロトコール1:心タンポナーデ原因疾患の鑑別として心膜炎,ACSによる心室壁破裂,デバイス等による心筋穿孔を考慮する. 2:傍胸骨長軸像および上位肋間アプローチで,フラップ,三日月形大動脈壁肥厚,大動脈拡張を認める場合に異常ありとする.

E 心膜液貯留1

大動脈解離の疑い

ありA 大動脈異常2

ありS 心室の大きさと形

肺塞栓の疑いACSの疑い

Y 左室壁運動異常

あり右室径/左室径の比が0.9超,短軸断面で左室形態がD shape