p.76 抽出テキスト
るエコーフリースペースは心膜液貯留で,外側に位置するときは胸水と判断する.脂肪はエコー輝度が心膜液より高く,心周期に伴う移動があるため,鑑別は比較的容易である.心膜液が少量の場合は,まず左室後壁の後面に貯留していることを左側臥位で観察する.心膜液の増加に伴い全周性にエコーフリースペースが認められるようになる433).また,右房が心内で最も低圧であるため,右房周囲にも少量から認められる433).開心術後では,局所的な血腫により特定の心腔のみが圧迫されてタンポナーデに至ることもあり,経胸壁心エコー法では診断が困難な場合もある.このようなときは経食道心エコー法が有用である432).心膜液貯留は,拡張末期で計測し,心膜液が貯留した心膜腔幅が10 mm未満であれば少量,10~20 mmが中等量,20 mmを超えると多量と判断する431, 434, 439).心膜液が収縮期のみにみられた場合は,有意な心膜液貯留なし,あるいはごく少量と判断する432).中等量以上の貯留では全周性となり,心臓は振り子様運動を呈する. 心タンポナーデ評価の心エコー法判読ポイントとして, 11回拍出量低下および吸気時のさらなる低下,2下大静脈の拡大(>21 mm)と呼吸性変動の低下(<50%),3 左室内腔狭小化と吸気時の心室中隔の左室側への偏位, 4拡張末期~収縮早期の右房虚脱および拡張早期~中期の右室虚脱,5左室(呼気時25~30%以上の増大)および右室(吸気時の50~60%以上の増大)流入血流速波形の呼吸性変動等を確認する432, 439-446).Mモード心エコー法は,心腔虚脱のタイミング・持続時間および呼吸性変動を確認するための優れた方法である.呼吸性変動の観察は自然呼吸下で行う. 収縮性心膜炎では,心膜の線維性肥厚や癒着による心臓の拡張障害をきたす.心エコー法では,1両心房の拡大と心室の狭小化,2下大静脈の拡大と呼吸性変動の低下, 3心室中隔の拡張早期での左室側への小さな動き(dip), 4左室後壁の拡張期平坦化,5両心室流入血流速波形での拡張早期波(E波)の急峻な増高,E波DcTの短縮と心房波(A波)の減高(偽正常化現象),6吸気開始直後からの左室流入血流速波形の減少(25~40%)と右室流入血流速度波形の増大(50~60%)が認められる431, 432, 444, 447).拘束型心筋症との鑑別が重要で,収縮性心膜炎では僧帽弁輪中隔側最大移動速度e’が >8 cm/秒と保たれる.僧帽弁輪側壁側よりも中隔側のe’が高くなる僧帽弁輪逆転現象がみられる場合には,収縮性心膜炎の可能性が高く,肝静脈の呼気時拡張末期逆行血流速度/前進血流速度≧0.8であれば,収縮性心膜炎であることはほぼ確実とされる193, 448).収縮性心膜炎では心膜癒着により,左室自由壁のストレイン値が中隔壁と比較し低下することも知られている449). 左側心膜欠損症では,心膜そのものを心エコー法で描出することはできないが,後壁側心筋の過剰運動,心室中隔の奇異性収縮,体位変換による左室形態の変化などが診断の参考となる. 表56 収縮性心膜炎における経胸壁心エコー法(TTE)の 推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 収縮性心膜炎が疑われた場合にTTE を行う. I C滲出性収縮性心膜炎が疑われた症例に対する心膜液ドレナージ後の経過観察としてTTE を行う. I C収縮性心膜炎に対する治療経過観察としてTTE を行う. I C