p.73 抽出テキスト
ショック・心不全の原因となる.本症に伴うMRには,前述の左室流出路狭窄に伴う場合と,僧帽弁のテザリングが原因の場合がある.やはり対処法が異なるため,その鑑別は重要である.突然のショックや無脈性電気活動(pulseless electrical activity)となった場合には心破裂も鑑別にあがる.心エコー法で心膜液貯留の有無を確認する.たこつぼ症候群では,2~8%に心内血栓を合併し,全身塞栓症の 原因となりうる415, 416).壁運動異常を認める部位,特に心尖部では心内血栓の有無を観察する.本症の典型例である左室心尖部が無収縮となる症例では,左室内血栓が形成されやすくなるため,経時的な経胸壁心エコー法による評価が必要である. 1 適応 高血圧は,年齢や左室収縮機能障害の有無を問わず,心不全の重要な危険因子である417).高血圧に対する適切な治療は,心不全の発症リスクを減少させる417, 418).さらに,心不全患者においては,収縮期血圧,拡張期血圧ならびに脈圧が高値の症例では,生命予後の悪化が示されていることからも,適切な血圧管理が重要である419).特にHFpEFの最も高頻度な併存疾患は高血圧であり420),高血圧を合併する割合はHFrEFに比べて高いことも示されている421).高血圧性心疾患は,左室に対する長期的圧負荷への代償的適応として発症し,無症状で経過することも多い.高血圧性心疾患では左室肥大がみられることが多く,その程度は心血管疾患の独立した危険因子と考えられているため417, 422, 423),心エコー法で正確に評価することが重要である.さらに,症状のない軽症高血圧,白衣高血圧や早朝高血圧例でも左室肥大が存在する場合があり,スクリーニングが必要である424-426).また,高血圧性心疾患では,左室収縮機能は長期にわたって維持されるが,左室拡張機能は比較的早期に障害される427, 428).左室拡張機能の障害は,左室肥大や心筋の線維化に関連して生じるため,心エコー法による左室肥大評価に際して左室拡張機能の評価も行うことが重要である.特に心電図で左室肥大所見を認める高血圧症例では,左室肥大の評価目的で心エコー法の適応となる.心電図で左室肥大を簡便 に評価する方法は,Sokolow-Lyon voltage criteria(SV1 +RV5 or V6≧35 mm,またはRV5 or V6>26 mm)とCornell voltage criteria(男性:RaVL +SV3>28 mm,女性:RaVL+SV3>20 mm)がある.初診であっても確実に高血圧と診断される例では初診時に心エコー法を施行する.あるいは経過観察中にも高血圧が持続する場合には,心エコー法を施行して病態の評価を行う.高血圧症における経胸壁心エコー法の推奨とエビデンスレベルを表53に示す. 2 判読 心室中隔や左室後壁の拡張末期壁厚,あるいは左室心筋重量,左室拡張末期径の計測に基づいた左室形態,左室機能評価が判読のポイントである.まず断層心エコー法によって左室壁全体を観察する際,壁肥厚が全周に及ぶものであるか,あるいは局在するのかに注意する.局在する壁肥厚を認める場合には,肥大型心筋症も考慮する.また,高血圧性の左室肥大では,一般的に左室壁厚が15 mmを超えないとされている352).壁厚が15 mmを超える左室肥大を呈する高血圧症例は,他の左室肥大を呈する心筋症(肥大型心筋症や心アミロイドーシスなど)の合併も考慮して,他の検査法も用いながら鑑別することが必要である.高血圧に伴う左室肥大は,一般に求心性肥大を 第13章 高血圧性心疾患