p.71 抽出テキスト
房・右室・右房の3室が拡大するほか(three chamber enlargement),心不全例では肺うっ血像,胸水貯留などが認められる.特異的心電図所見はないが,左房負荷を示すP波の異常,上室性期外収縮,心房細動などのほか,軽度左室肥大所見,非特異的ST-T変化が認められる.拘束型心筋症における経胸壁心エコー法の推奨とエビデンスレベルを表51に示す. 4.2 判読 (第3章 3. 左室拡張機能の評価を参照) パルスドプラ法を用いた左室流入血流速波形では,左室充満障害による左室拡張末期圧や左房圧の上昇を反映し,拡張早期波(E)の増高,Eと心房収縮期波(A)のピーク流速比の増大(E/A>2),E波のDcTの短縮(<160ミリ秒),等容弛緩時間(isovolumic relaxation time)の短縮(<70 ミリ秒)が観察される(拘束型パターン) 393, 394).パルスドプラ法による肺静脈血流速波形は,左室拡張末期圧や左房圧が上昇すると収縮期波(S)と拡張期波(D)の比は低下し(S/D<1),心房収縮期波(A)の振幅は増高し持続時間は延長する.肺静脈血流速波形A波の持続時間が左室流入血流速波形A波の持続時間より30ミリ秒以上長いと左室拡張末期圧の有意な上昇を示唆する. 組織ドプラ法を用いると,拘束型心筋症では左室拡張機能障害によって僧帽弁輪中隔側の拡張早期移動速度(e’)が低下する(<7 cm/秒).また,QRS波のR波のピーク時 相からE波開始時までの時間とe’開始時までの時間の差(TE-e’)は拘束型心筋症で延長する.左室流入血流速波形のE波と組織ドプラ法でのe’から得られる比(E/e’)は左室充満圧を反映し,E/e’(中隔側,側壁側の平均)の増加(> 14)は左房圧上昇を示唆する.また,LAVIの増加が顕著である(>50 mL/m 2) 193).ただし,拘束型心筋症の診断に心エコー法は極めて有用な手段であるが,最終的診断には心臓カテーテル検査所見を含む総合的な判断が必要である. 拘束型心筋症に類似した病態は収縮性心膜炎でも認められるが,両疾患では治療法が異なるため,その鑑別は臨床上重要である395-397).収縮性心膜炎では心室中隔は両心室の挙動の差(心室間相互依存性)が増幅して表現されやすいため,心室中隔は吸気時に左室側に偏位し,呼気時に逆に右室側に偏位する(septal bounce)が,拘束型心筋症ではその変動はみられない.収縮性心膜炎では左室流入血流速波形のE波は吸気時と比べ呼気時で増加し,右室流入血流速波形のE波は吸気時と比べ呼気時で減少するのに対し,拘束型心筋症では呼吸性変動が小さい.また,収縮性心膜炎では肝静脈血流速波形の拡張期逆流波は呼気時に増大するが,拘束型心筋症では吸気時に増大する.組織ドプラ法を用いると,収縮性心膜炎では左室充満圧上昇の有無にかかわらず僧帽弁輪中隔側の拡張早期最大移動速度(e’)が維持あるいは増加する(annulus paradoxus)のに対し,拘束型心筋症では左室拡張機能障害のために低値を示す.また,収縮性心膜炎では中隔側e’は左室側壁側e’に比し高値を示す(annulus reversus)のに対し,拘束型心筋症では中隔側e’は左室側壁側e’に比し低値を示す398). スペックルトラッキング法を用いたストレイン解析を用いると,収縮性心膜炎では左室の円周方向ストレイン,捻れ(torsion),解け(untwisting)が低下し,長軸方向のストレインが比較的保持されるのに対し,拘束型心筋症では長軸方向のストレインが低下し,左室の回転(rotation)は比較的保持されるとの報告がある399).拘束型心筋症では硬い心筋性状と線維化により左室基部における長軸方向のストレインは低下し,病期が進行すると左室中部,心尖部においても長軸方向ストレインが低下する226). 表51 拘束型心筋症における経胸壁心エコー法(TTE) の推 奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 拘束型心筋症が疑われる患者において, TTE により左室収縮機能評価を行う. I B拘束型心筋症が疑われる患者において, TTE によりLAVI の計測を行う. I B拘束型心筋症が疑われる患者において, TTE により僧帽弁口流入血流速波形計測(E 波, A 波, E 波DcT)を行う. I B拘束型心筋症が疑われる患者において, TTE により拡張早期僧帽弁輪移動速度計測(e’)およびE/e’ の計測を行う. I B拘束型心筋症が疑われる患者において, TTE による肺静脈血流速波形の計測(S波, D 波, D 波DcT)を考慮する. IIa C拘束型心筋症が疑われる患者において, TTE スペックルトラッキング法を用いたストレイン解析を考慮してもよい. IIb C